今回は「Perfect 4th Build」というものを紹介しましょう。
ダイアトニックコードのような「3度堆積」のコードとはまた違った面白いハーモニーが得られます。
たとえばこのようなピアノのボイシングがそうです。
このようにJazzやFusionなどによく使われますが、歌もののポップスなどにもじゅうぶん使えます。
「Perfect 4th Build」とは?
「Perfect 4th Build」、これは「完全4度堆積」という意味です。
完全4度とは?
ではまず「完全4度」というものを説明しましょう。
この図を見て下さい。
これは時計回りに見ると順番に「完全4度上」に音が並んでいます。
「C」の完全4度上は「F」、「F」の完全4度上は「♭B」、「E」の完全4度上は「A」ということです。
この「Circle Of 5th」をある程度でも覚えておけば「完全4度」はすぐ見つけられます。
(ちなみに完全4度上というのは完全5度下と同じ音になります)
スケールで見る「完全4度」
では次はスケールで完全4度を見てみます。
この譜面を見てください。
メジャースケールの【ルート】と【4番目の音】との間隔が「完全4度(Perfect 4th)」です。
それより半音狭い間隔が「減4度(Diminished 4th)」、
半音広い間隔が「増4度(Augmented 4th)」ということになります。
ここで気をつけたいのは、度数というのは譜面上の音符の位置によるということです。
次の譜面を見て下さい。
「減4度」と「長3度」は音にすれば全く同じなのです。
「ド」から見ると譜面上で「♭ファ」とあれば「減4度」、「ミ」とあれば「長3度」ということになります。
ようするに「ド」からみれば「ファ」に「#」がつこうが「♭」がつこうが、それは「4度」、「ミ」に「#」がつこうが「♭」がつこうがそれは「3度」なのです。
度数は「#」や「♭」は関係なく、ただ単に音符を数えればいいだけです。
「ド」と「ファ」なら「ド-レ-ミ-ファ」と数えて「4度」、「ド」と「ソ」なら「ド-レ-ミ-ファ-ソ」と数えて「5度」です。
そこから「長・短・完全・増・減」のどれなのかを見つければいいということになります。
「Perfect 4th Build」を作ってみよう
ではそれらをふまえた上で「Perfect 4th Build」を説明していきましょう。
今回は「減4度」や「増4度」はのぞいて「完全4度」で積んだものだけを紹介します。
まず「完全4度音程」で音を順番に並べてみましょう。
これで12個全ての音が出てきます。
これは先ほどの「Circle Of 5th」を「C」から時計回りに順番に弾いたものとも言えます。
(便宜上「♭レ」から「#ファ」は「増3度」で書いてあります)
どこかで聴いたような並びですね。
こんな音色にするとよけい聞き覚えがある感じではないですか?
先ほどの順番に並べて譜面から6つを鳴らしてみました。
そしてこれを縦に積んだものが「Perfect 4th Build」です。
「完全4度音程」を保っていれば音をいくつ積んでもいいのです。
その中から今回はよく使われる3つ積んだものを説明していきたいと思います。
先ほどの順番に並べたものの任意の音から順番に3つを積めばいいだけですね。
12の各音から「完全4度」で3つ積むのですから、当然12種類できます。
これはコードネームでは正確に表すことはできません。
コードネームでは構成音を表すことはできますが、その積み方までは指定できないのです。
例えばこれを見てください。
音だけみれば「ド」が【Root】、「ファ」が【4th】、「♭シ」が【7th】なので「C7sus4」ということはできます。
しかしこのように転回させてしまったら「完全4度堆積」がくずれてしまいます。
「Perfect 4th Build」の独特なサウンドが失われてしまうのです。
ですからプレイヤーに弾いてもらうには、コードネームではなく音符で指定するほうがよいでしょう。
コードネームの上で使ってみよう
さてこれだけではどう使っていいのかさっぱりわかりませんね。
ここからは「普通のコードネームの上で使う方法」を説明していきましょう。
今回もわかりやすくするために「キーはC」で説明していきたいと思います。
「キーがC」ということは全て白鍵である必要があります。
先ほどの12個並べたものから「白鍵だけでできているもの」を取りだしてみましょう。
この5つが白鍵だけでできています。
それぞれどんなコードのときに使えるのか見ていきましょう。
そのためにはまず「Perfect 4th Build」の3つの音がそれぞれのダイアトニックコードに対してどういう音になっているかを調べることです。
そして3つの音すべてがそのコードの構成音またはテンションとして扱えるなら使っていいということです。
どのコードに使える?
ちょっと言葉ではわかりにくいので実際にひとつずつ分析してみましょう。
ダイアトニックコードをひとつずつ見ていきます。
ではまず最初にこれを調べてみましょう。
「C△7」の場合
【9】【5】【Root】なので使えますね。
ただコードの中でももっとも大事な【3rd】と【7th】がないことは理解しておきましょう。
足りない音があるだけで「Avoid Note」があるわけではないので「C△7」やただの「C」というコードのときに使ってみるといいでしょう。
「C6」のときも使って大丈夫です。
「Dm7」の場合
【Root】【11】【7】になるので使えますね。
ただ【3rd】がないうえに【11th】を勝手に入れてしまうことになるので、「Dm7」とはちょっと違うサウンドにはなってしまいます。
「Em7」の場合
「マイナー7thコード」ではテンションとして使ってはいけない【♭13】、ようするに「Avoid Note」があるので使えません。
「F△7」の場合
【6】【9】【5】なので使えますが、コードネームでいうなら「F6(9)」ということになります。
【△7】や【3rd】がないので注意は必要です。
「G7」の場合
【5】【Root】【4】なので「G7」には使えません。
なぜなら【4th】があるからです。
【3rd】と【4th】を同時に使うことはできません。
ただし「G7sus4」になら使えます。
「Am7」の場合
【11】【7】【3】なので大丈夫ですね。
コードネームでいうと「Am11」ということになってはしまいますが、「Avoid Note」はないので使えます。
「Bm7♭5」の場合
【3】【♭13】【♭9】が入ってきます。
実はジャズなどでは「m7♭5」に【♭9】や【♭13】を入れることもあるのですが、けっこうきつめなので今回はやめておきましょう。
使えるコード一覧
というふうに「各ダイアトニックコード」にたいしてひとつずつ見ていけばどのコードにどの「Perfect 4th Build」が使えるのかわかるのですが、ひとつずつ見ていくのはみなさんも退屈でしょうから一覧でまとめたみたいと思います。
レソド(先ほどのおさらい)
ミラレ
ソドファ
ラレソ
シミラ
※ 以上の譜面の音はYouTube動画にすべて載せています↓
ここで「×」をつけて使えないとしたものは、コードにたいする「Avoid Note」を含むものです。
出てきたものだけでいうと・・・
「△7」または「7」のときの【4th】
「m7」または「m7(♭5)」のときの【♭9】【♭13】
が、含まれているものは使えないということです。
もちろん他にも「Avoid Note」はたくさんあり、たとえば「△7コード」に【#9】は使えませんし「m7コード」に【#11】は使えませんが、今回は出てきていないので除外します。
ただし「F△7」のときに【#11th】を含むものは使えます。
これまでも何度か言いましたが、「Ⅳ」の「△7コード(キーがCにおける F△7)」には【#11th】が使えるのです。
使用可能な「Perfect 4th Build」だけを抜き出すと
もっと簡潔にまとめてみます。
このような感じですね。
左に書いてあるコードネームのときは、それぞれ右に書いてある「Perfect 4th Build」を使えるということです。
白鍵だけの「Perfect 4th Build」が5種類すべて使えるのは「Dm7」と「F△7」だけですね。
それ以外のダイアトニックコードにもそれぞれ何種類か使用できる「Perfect 4th Build」があります。
しかしここで気をつけなければいけないのは「Perfect 4th Build」ではコードネームの構成音がすべて入っているわけではないということです。
ほとんどの場合はコードネームで指定されている構成音のいくつかが抜けてしまいます。
そしてコードネームで指定されていないテンションや【6th】が入ってしまったりもします。
普通のコードから「Perfect 4th Build」への置き換えが許されるかどうかはメロディーや雰囲気などを総合的に判断する必要があります。
ふつうのコードネームの上で「Perfect 4th Build」を弾いた場合どのようなコードになってしまうのかを無理矢理コードネームで表すとこのような感じになります。
使用時に注意するべきこと
どうしても正確にコードネームで表すのは難しいものがありますが、元のコードとはかなり違ったものになってしまうのはわかりますね。
たとえば「C△7」と書いてあるところに「ミ-ラ-レ」と弾くと「C6(9)」というコードになってしまいます。
これが許されるかどうかはその曲やアレンジなどによります。
メロディーが【△7】の「シ」の音を伸ばしているのに勝手にコードを「C6(9)」にするのは少し問題です。
その場合「シ」が含まれている「シ-ミ-ラ」という「Perfect 4th Build」ならいけそうですね。
さらに「Perfect 4th Build」はある種、独特で強烈なキャラクターがあります。
構成音は問題なくても曲の雰囲気をガラっと変えてしまうため、注意して使う必要があります。
まとめ
さて今回は説明だけでかなり長くなってしまったので「基礎編」ということでいったん終わります。
次回は実際にいろんなコード進行の中で使う方法を「実践編」として紹介したいと思います。
今回の解説動画はこちら↓