今回は「ペダルポイント」という手法について紹介したいと思います。
- ペダルポイントとは?
- メジャーキーでのトニックペダルポイント
- マイナーキーでのトニックペダルポイント
- メジャーキーでのドミナントペダルポイント
- マイナーキーでのドミナントペダルポイント
- ドミナントペダルをエンディングに使う
- ペダルポイントにおけるメロディー
- まとめ
ペダルポイントとは?
「ペダルポイント」は「ペダルノート」や「ペダルトーン」と呼ばれることもあります。
バロック音楽の時代から使用され、ポップスやロックなどでもよく使われています。
簡単に説明すると、コードが変わっても一つの音をずっと鳴らし続ける手法のことです。
たとえばこんな感じのものです。
これと似た手法で「クリシェ」というものがありますが、簡単に言ってしまえば逆の手法なのです。
「ベースラインクリシェ」は同じコードが続くときにベースを動かすものですが、「ペダルポイント」はコードが変わっているのに同じ音を鳴らし続けるものです。
これらをマスターするとコード進行のバリエーションが増え、単純なコード進行もあっと言う間にかっこよくおしゃれになるのでぜひ覚えてみてください。
「ペダルポイント」は大きく分けると「ベースペダルポイント」と「ソプラノペダルポイント」になります。
文字通り、「ベースペダル」はベースラインがずっと同じ音で、「ソプラノペダル」はハーモニーのトップノートが同じ音になります。
言葉ではわかりにくいのでさっそくサンプルで説明していきましょう。
今回は【Part1】ということで「ベースペダルポイント」だけを紹介します。
【Part2】で「ソプラノペダルポイント」を紹介したいと思います。
メジャーキーでのトニックペダルポイント
ではこれを見て下さい。
(譜面はあくまでもコードのボイシングを示しているだけでサンプルではいろんなリズムを刻んでいます。)
トニック、サブドミナント、ドミナントの3つだけを使ったとても単純なコード進行です。
キーは「C(ハ長調)」です。
これに「ペダルポイント」を使ってみます。
ベースをずっと「C」にしてみました。
「キーC」でのトニックを「ペダルポイント」にしたということで、これはベースペダルの中でも特に「トニックペダルポイント」と呼ばれます。
元の単純なコード進行からかなり雰囲気が変わりました。
このように「ペダルポイント」の上でトニック、サブドミナント、ドミナントだけを使ったこのような曲もあります。
有名な曲のイントロです。
これはコード進行というよりはベースが「C」を弾いてる上でいろいろコードを動かしてみたという感じではありますが、「ペダルポイント」の雰囲気はよく伝わるのではないでしょうか。
最後は【F△7-Gsus4】と進行していますので、もちろんここは「ペダルポイント」ではありません。
ではもう一つ違うサンプルを見てみましょう。
元はこんな進行です。
これは1小節ずつ転調しているような進行ですが、「C」に始まり「C」に終わるので、全体的に見たら「キーはC」ということでいいでしょう。
これも「トニックペダル」を使ってみます。
どうですか?
人それぞれの感じ方ではありますが、かっこよくおしゃれになった気がします。
このように「ベースペダル」を使うときに上に乗せるコードは、単純なトライアドのほうがその雰囲気というかコンセプトみたいなものが伝わります。
少なくとも上に乗せるコードではルートを弾いていないと「ペダルポイント」らしさが伝わりません。
テンションコードはルートを省略しなければ弾けないことが多いので、やめておいたほうがいいでしょう。
「7thコード」なら使えなくはありません。
しかしトライアドに比べて「ペダルポイント」の雰囲気は少し薄まるような気がします。
ではもっといろんなトライアドを使ってみましょう。
4小節めは「Em/C」とありますがこれは「C△7」と全く同じ構成音です。
ふつうは「Em/C」などという表記はしませんが、わかりやすくするために今回はこうしてみました。
いろんなトライアドを使っていますが、違和感なく自然に聞こえると思います。
マイナーキーでのトニックペダルポイント
次はマイナーキーでの「トニックペダルポイント」を紹介します。
まずはよく聞くこんなコード進行でやってみましょう。
ナチュラルマイナーに基づいた進行です。
キーは「Am(イ短調)」ということになります。
ルートが【ラ-ソ-ファ-ソ-ラ】と下がって上がるごく単純なものです。
これを「キーAm」のトニックである「A」の音を「ペダルポイント」として使ってみます。
ハードロックなどにありそうな進行ですね。
より重厚な感じになってかっこいいと思います。
では次はちょっと転調しているコード進行です。
「B」と「B♭」というコードが出てきていますが、これは「キーAm」の中にはないコードなので、転調ということができます。
これにまた「A」の「トニックペダル」を使ってみます。
転調していても「ラ」がずっと鳴っていることに不自然さは感じないと思います。
「ベースペダルポイント」はかなり柔軟性が高く、かなり無茶な進行をしてもそれなりに聞こえてしまうという便利なものです。
キーとはまったく関係ないコードが次々と現れてきます。
歌ものには使えなさそうですが間奏などにはいいかもしれません。
メジャーキーでのドミナントペダルポイント
さて、ここまではメジャーキーとマイナーキーにおいての「トニックペダルポイント」を紹介したわけですが、次は「ドミナントペダルポイント」というものを見ていきましょう。
これは文字通りでそのキーのドミナントの音を「ペダルポイント」として使用するものです。
ではまた例を見ていきましょう。
まずはこんなものです。
これもコードが3つだけの簡単な進行です。
これに「ドミナントペダル」を使用してみます。
ちょっと独特な緊張感がありますね。
「ドミナントペダル」はトニック、もしくはトニックの代理コードなどに解決するのがふつうなので、ここでは最後は「C」で終わっています。
「ドミナントペダル」はジャズのイントロや頭のトニックに戻るときなどにもよく使われます。
ちょっと古いジャズのようなサンプルを作ってみました。
ジャズは何コーラスも繰り返しながらアドリブをやるのですが、曲の頭に戻るときにこのような「ドミナントペダル」をよく使います。
本来なら2段目の3小節で「C」に解決して終わる曲なのですが、繰り返すために「ドミナントペダル」を付け足しています。
ではまた違うサンプルで見てみましょう。
これは「キーがC」の【Ⅱ-Ⅴ】である【Dm7-G7】と、その「Dm」のセカンダリードミナントにあたる「A7」を【Ⅴ】とするマイナー系の【Ⅱ-Ⅴ】である【Em7♭5-A7】をつなげたものです。
これを「ドミナントペダル」にしてみましょう。
「C△7」に解決するまえに少し盛り上がる感じがあってかっこいいと思います。
トニックで始まる曲のイントロにもすごく合います。
ジャズっぽい曲にちょっと簡単なイントロをつけてみました。
これは「ドミナントペダル」を2小節続けて曲に入るという設定で作りましたが、4小節にしても8小節にしてもかまいません。
ジャズでは即興でイントロをつけたりするのですが、そういうときに「ドミナントペダル」はあまり難しいことは考えずに使えるので便利です。
マイナーキーでのドミナントペダルポイント
ではマイナーキーの「ドミナントペダル」を見てみましょう。
よくある進行です。
これを「ドミナントペダル」にしてみます。
これも「Am」に解決して終わってみました。
よくあるコード進行がちょっと変わった感じになって面白いですね。
では次です。
これは「E7」にたいするセカンダリードミナントの「B」を使った進行です。
これを「ドミナントペダル」にしてみます。
これも最後は「Am」に解決しました。
「Am/E」のままだと何回でも繰り返せるので、間奏などにはいいかもしれません。
ドミナントペダルをエンディングに使う
エンディングなどにも使うことがあります。
トニックに終わると見せかけて「ドミナントペダル」にして、何小節か引き延ばすことができます。
こんなサンプルを作ってみました。
キーは「Gm」です。
かなり長くなってしまいましたが、だんだん盛り上がっていく感じが出てるのではないでしょうか。
普通にあっさり終わるのもいいですが、こうするとエンディングでもうひと盛り上がりできるのでライブなどではいい手法だと思います。
3小節めから4小節めは、本来このように「D7」から「Gm」に進行するべきところを「Gm/D」にしています。
「D」は「キーGm」にたいするドミナントなので終止感がまったくなく、このままでは終われません。
そしてそこから「D」の「ペダルポイント」を使います。
これも【D7-Gm】というドミナントモーションが本来の進行ですが、「D」を「ペダルポイント」とすることで独特な緊張感を生んでいます。
そして、4段目めで普通のコード進行に戻ったときに緊張が緩和されるのがわかると思います。
聴いてる人たちがもう終わると思ったところで意表をついて終わらず、そしてさらに引き延ばすという、エンディングで盛り上げるにはいい手法です。
ペダルポイントにおけるメロディー
さて、ここまではコードを主に紹介してきましたが、メロディーを作るときはどうすればよいのでしょうか。
結論から言うと「ペダルポイント」はまったく気にせず、上のコードだけで作れば問題ありません。
これを全く同じコード、同じメロディーのまま「トニックペダル」を使ってみます。
まったく問題ないのがわかると思います。
これはメジャーでもマイナーでも、また「トニックペダル」でも「ドミナントペダル」でも同じことです。
逆に言うとメロディーとコードがちゃんとある曲でも、後から自由に「ペダルポイント」にしてもよいということです。
まとめ
というわけで、今回はコード進行にひとひねり加える「ペダルポイント」を紹介しました。
ぜひオリジナル曲や既存の曲を演奏したりアレンジする場合に使ってみてください。
ここぞというところに使うとかなりセンス良く聞こえると思います。
今回の解説動画はこちら↓