今回は「テトラコルド」について紹介しましょう。
これは作曲や編曲にただちに役に立つといったものではありませんが、知識として持っておくのもいいのではないのでしょうか。
はじめに
テトラコルドは「テトラコード」とも呼ばれます。
テトラは「4つ」、コルドは「弦」といった意味なので、つなげると「4つの弦」ということになります。
簡単に言うとテトラコルドとは、完全4度の音程を4つの音で区切ったスケールの部品のようなものです。
古代ギリシアでは、大きく分けるとこのような3つのテトラコルドがありました。
「♭」が反対向きのものは微分音です。
ようするに半音の半分である1/4音分、音程を下げるという意味です。
ピアノでは1/4音は出せませんし、平均律での音楽が一般的な現代ではほぼ使われません。
そして1番上の「全音2つ半音1つ」が含まれたものが主流となっていきます。
これがダイアトニックスケールの元となりました。
現代では、テトラコルドといえばこの「全音2つ半音1つ」が含まれたものを指すことがほとんどです。
この古い3つのテトラコルドは深く研究するとかなり難しくなってしまうので、ここでは「全音2つ半音1つ」が含まれたものをメインに簡単に説明します。
では改めて見ていきましょう。
この完全4度の「ド」と「ファ」の間に音を2つ入れます。
基本的には全音の間隔が2つ、半音の間隔が1つ含まれます。
完全4度というのは半音5つぶんの間隔です。
その中に3つ間隔を作るということですので、半音の間隔を2つ入れるともう1つは半音3つぶん、ようするに1音半の間隔になってしまいます。
特に、この下段のように半音が2つ連続するようなものは、現代では少し特殊なテトラコルドといえるでしょう。
メジャースケールの分析
これがもっとも基本的なテトラコルドです。
この組み合わせで「ソ」から並べてみましょう。
この2つを全音間隔でつなげたものがメジャースケールなのです。
言い方を変えると、メジャースケールとは同じテトラコルド2つでできているということです。
同じテトラコルドをさらに前後に足してみましょう。
このように「Fメジャースケール」の後半のテトラコルドは「Cメジャースケール」の前半のテトラコルドと共通であり
「Cメジャースケール」の後半のテトラコルドは「Gメジャースケール」の前半のテトラコルドと共通になります。
この【全音-全音-半音】が最も基本的なテトラコルドなのですが、必ずしもこの並びでなくてはならないというわけではありません。
では「Cメジャースケール」を「レ」の音から並び替えてみましょう。
ようするに「Dドリアンスケール」ということになります。
【全音-半音-全音】というテトラコルドが全音間隔で2つつながっていることがわかります。
モードの分析
では他のモードがどのようなテトラコルドでできているのか見てみましょう。
次はわかりやすくルートを「C」に統一してみます。
「アイオニアン」「ドリアン」「フリジアン」は、全く同じテトラコルドの組み合わせになっていますが、他の4つは違うテトラコルドの組み合わせになります。
「リディアン」の前半は「ド」から「#ファ」となります。
これは完全4度ではなく増4度なので、厳密にはテトラコルドとは言えません。
しかし説明が煩雑になってしまうので、ここでは一応「テトラコルド」と呼んでおきます。
「ロクリアン」の後半も「♭ソ」から「ド」という増4度になっています。
この増4度のテトラコルドは、全音が3つつながったものになっています。
そしてこの2つのテトラコルドが使用されるときは、テトラコルド同士が半音で接続されます。
では7つのモードに使われたテトラコルドをまとめてみましょう。
便宜上「A」「B」「C」「D」と呼びます。
そして同じように「ソ」からも並べてみます。
そしてこれらがどのように組み合わされているのか改めて見てみましょう。
【A-A】や【B-B】など、前半と後半が同じものと、【A-B】や【B-C】などと前半と後半が違うものがあります。
マイナースケールの分析
ではモードではないものも見てみましょう。
「ハーモニックマイナー」と「メロディックマイナー」です。
どちらも前半は同じです。
「ハーモニックマイナー」の後半は半音が2つあり、さらに1音半の間隔もあるので、これも少し特殊なテトラコルドとなります。
一応これを「E」と呼ぶことにしましょう。
まとめるとこうなります。
これをマイナースケールに当てはめてみるとこうなります。
「A」や「B」など、モードに出てきたものと同じものが使われているのがわかります。
小泉理論
ではここからはテトラコルドではないのですが、面白い理論を紹介しましょう。
小泉文夫先生という方が提唱したいわゆる「小泉理論」と呼ばれているものです。
これは、日本で昔から使われていたペンタトニックを、テトラコルドのような部品を2つ並べて分析したものです。
この部品は完全4度の中に音を1つ入れたものです。
ようするに音が3つしかないので「4つ」という意味を持つ「テトラ」という言葉は使えません。
そして完全4度の中に2つの間隔しかないので、全音と半音だけというわけにはいきません。
具体的に見てみましょう。
「A」は半音1つと全音2つぶん
「B」は全音1つと1音半
「C」は1音半と全音1つ
「D」は全音2つぶんと半音1つ
の間隔でできています。
この4種類の並びを「ソ」からも作ってみましょう。
そして【AとA】、【BとB】など同じ組み合わせのものを"全音"でつなげてみます。
どれもよく聴く音階だと思います。
「C」を使った「民謡音階」は、マイナーペンタトニックと同じものです。
さいごに
今回は「テトルコルド」というものを紹介しました。
作曲や編曲、アドリブなどにすぐ使えるようなものではないですが、こんな考え方もあると知っておくのはいいことだと思います。
今回紹介しなかったいろんなスケールも分析してみると面白いかもしれません。
今回の解説動画はこちら↓