「ひとつだけ覚えるアドリブフレーズ」今回は「Ⅱ-Ⅴ」の【Part8】です。
はじめに
このようなフレーズをマスターしましょう。
Jazzのアドリブなどでよく聞かれるフレーズです。
今回はマイナーキーにおける【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】です。
マイナーキーの場合【Ⅱ】は「m7(♭5)」にします。
今回は「Key=Am」で説明していきましょう。
フレーズの分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
まずは1小節めです。
この「Bm7(♭5)」は「Key=Am」の【Ⅱ】でもあり、「Key=C」の【Ⅶ】でもあるので、使うスケールは「Bロクリアン」です。
それぞれの音がコードにたいしてどのような音になっているのか見てみます。
【♭5th】から入って、ロクリアンスケールを「5-4-3」と下行するのですが、「4」と「3」の間に音が1つ入っています。
なぜ「x」と表記したかというと、この音はコードトーンやテンションではなく、単にクロマチックアプローチだからです。
「4」と「3」を半音でつないだということです。
そして次に「3」から【Root】に下行しますが、ここにもクロマチックアプローチがあります。
そしてさらにクロマチックアプローチで【7th】まで下行します。
ようするに、「ド」から「ラ」まではずっと半音で下行するということです。
そして最後に【♭6】の「ソ」で終わります。
最後の音を【♭13】と表記しなかったのは、これもテンションというより、次の音へのクロマチックアプローチと考えるほうが自然だからです。
では2小節めから3小節めです。
このフレーズは「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」と考えるのがいいでしょう。
コードにテンションを入れたい場合、【♭9th】【#9th】【♭13th】などのオルタードテンションを入れることになります。
このフレーズも、スケールにたいしてそれぞれどのような音になっているのか分析してみます。
【3rd】から入って、次に「5-7-♭9」と上行します。
これは「Bdim7」の構成音になっています。
次に「Root-5-7」と弾きます。
そしてそのあとに「#ド」がありますが、これも【13th】とは考えず、次の小節の「ド」の音への「レ-#ド-ド」というクロマチックアプローチと考える方が自然です。
この「#ド」が「Key=Am」においてはかなり外れて聞こえる音なので、一瞬ハっとさせる効果があって面白いと思います。
というわけで今回はクロマチックアプローチが多いフレーズになっています。
スケールに含まれない音を使ったクロマチックアプローチをまとめてみました。
ほかにも半音の動きをしている部分はあります。
たとえば、1小節め最後の「ソ」から次の小節の最初の音である「#ソ」なども半音の動きではありますが、どちらもスケールに含まれる音なので、わざわざクロマチックアプローチとは言いません。
1小節めの「ド」から「シ」や、2小節めの「ファ」から「ミ」なども同じです。
他のキーで見てみよう
では他のキーでもすぐ弾けるようにするため、いくつかのキーで見てみましょう。
これは「Key=Cm」の【 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 】です。
【5th】の「♭ラ」から入って「4-♭4-3」である「ソ-♭ソ-ファ」とクロマチックで下行します。
次は「Dロクリアンスケール」の【Ⅱ】である「♭ミ」から「ド」までクロマチックで下行します。
そこから全音で【♭6】の「♭シ」まで下行したら、半音上がって「G7」の【3rd】である「シ」に進行します。
次は「シ-レ-ファ-♭ラ」と弾きますが、これは「Ddim7」の構成音になっています。
そして「G7」の「Root-5-7」と弾いたら「♮ミ」から次の小節の「Cm」の【3rd】である「♭ミ」にクロマチックアプローチします。
ではもう一つ見てみましょう。
これは「Key=Em」のフレーズです。
【5th】の「ド」から入って、「4-♭4-3」である「シ-♭シ-ラ」とクロマチックで下行します。
次は「F#ロクリアンスケール」の【Ⅱ】である「ソ」から「ミ」までクロマチックで下行します。
そこから全音で【♭6】の「レ」まで下行したら、半音上がって「B7」の【3rd】である「#レ」に進行します。
次は「#レ-#ファ-ラ-ド」と弾きますが、これは「F#dim7」の構成音になっています。
そして「B7」の「Root-5-7」と弾いたら「#ソ」から次の小節の「Em」の【3rd】である「ソ」にクロマチックアプローチします。
覚えるための練習法
全てのキーで覚えるのはなかなか大変なので【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】を連続させ練習してみましょう。
【D-G-C-F・・・】と時計回りに「5度下」に進んでいくのですが、これを【Dm7(♭5)-G7-Cm】という【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】と考え、その【Ⅰ】である「Cm」の【5th】を半音下げて「Cm7(♭5)」にして、それを新たな【Ⅱ】と考え、【Cm7(♭5)-F7-B♭m】という新たな【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】を作り、つなげていきます。
3小節単位だとつながりが悪いので、【Ⅰ】を2小節として4小節単位にしましょう。
3小節めは音が1つしかなく、さらに4小節めにはフレーズがないので、次の準備をしやすいと思います。
サークルオブ5thを【Dm7(♭5)-G7】から始まり1周するパターンと【Gm7(♭5)-C7】から始まり1周するパターンの2種類で12個全ての【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】が出てきます。
調号で書くと4小節おきにキーが変わって読みにくいので、臨時記号で書いてあります。
※カラオケ音源とMIDIデータを貼っておきますので、ご自由にダウンロードしてお使いください。
それではつなげて弾いてみましょう。
EX.1
まずは「Dm7(♭5)」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
EX.2
次は「Gm7(♭5)」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
バリエーション
慣れてきたらこのようにリズムを変えてみても面白いと思います。
音は全く同じでリズムだけを変えてあります。
1小節めは同じようにクロマチックで下行するようなフレーズですが、元のフレーズのように「ソ」まで下がらず「ラ」まで下りて、次の小節の「#ソ」に半音で進行させています。
2小節めの3、4拍めから3小節めにかけては、「ミ」からただ半音で下行しているだけです。
これも同じようにクロマチックな動きが多いフレーズです。
16分音符を使って変化をつけました。
2小節めから3小節めにかけては、元のフレーズのオクターブ上の【レ-#ド-ド】というクロマチック下行で終わっています。
さいごに
というわけで今回もマイナーキーでよく使われる【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】フレーズを紹介してみました。
クロマチックで3音弾くと必ずアボイドノートが含まれてくるので、それが面白い効果を生み出します。
今回のフレーズも楽器は問いませんので、ぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓