「天才たちのワンフレーズ」シリーズ、今回はPat Methenyのフレーズを紹介します。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
これは『Here To Stay』という曲のアドリブです。
16分音符がハネるリズムになっています。
今回解説したいのは4小節めのフレーズです。
「Am7」が長く続きますが、テーマ部分は「ドリアンスケール」で演奏されています。
このアドリブ部分にはドリアンの特性音である「#ファ」が含まれていませんが、調号は「Aドリアン」に合わせて「Key=G」にしてあります。
フレーズ分析
このようなフレーズです。
少しスケールアウトしてまた自然にインに戻ってくるようなフレーズです。
それぞれ「Am7」にたいしてどのような音になっているのか見てみましょう。
「R」はルート、「x」はコードトーンでもテンションでもない音です。
1拍めから2拍めにかけてはほぼコードトーンです。
「シ」はルートから順番に上行しているので「2」と書きましたが、【9th】と解釈してもいいでしょう。
「#レ」は半音で【5th】の「ミ」に進行します。
クロマチックアプローチではあるのですが、【♭5th】のブルーノートと解釈するのもいいと思います。
面白いのは3拍めから4拍めにかけてです。
3拍めの「ド」 から「#ラ」、そして最後の「ラ」から「ソ」は全音ですが、それ以外は全て半音のフレーズです。
これを分解して細かく見てみましょう。
この譜面のそれぞれの段の最後の音を「ターゲットノート」といいます。
ターゲットノートとは目標となる音のことです。
これを自分で決めて、その音に向かっていろんな方法でフレーズを作ります。
最初は「ド」というターゲットノートに向かって「#ラ」から半音2つを続ける「ダブルクロマチックアプローチ」を使っています。
そして次はその「ド」から「ディレイドリゾルブ」を使って「シ」に向かいます。
ディレイドリゾルブにはいろいろあるのですが、ここではターゲットノートの半音上、半音下の音で挟んでから進行する方法を使っています。
※ディレイドリゾルブに関してはこちらでくわしく解説しています↓
次は「シ」の音から「ラ」まで「ダブルクロマチックアプローチ」で下行しています。
そして「ラ」から全音下行して「ソ」を弾いて終わりです。
もしくはこのように「ターゲットノートの半音上や下をいったりきたりしながら向かう」というこのフレーズを、形で丸覚えしてしまうほうが簡単かもしれません。
手クセのようにしてしまえば、いつでも使えて便利だと思います。
ターゲットノートが「レ」ならこのようになります。
ターゲットノートが「ソ」ならこうです。
まとめ
いろんな方法で分析してきましたが、これもわかりやすいと思うのでこれをまとめとします。
まずターゲットノートを決めます。
ここでは「ド」です。
そしてその音に半音下からクロマチックアプローチ、さらに半音上下からディレイドリゾルブでアプローチします。
応用例
「Key=Cm」における【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】のフレーズです。
今回のフレーズを「Cm7」の1拍めから使っています。
半音上や下に動きながらターゲットノートの「♭ミ」に向かっています。
「♮ミ」がかなりアウト感を出しています。
「Key=Gm」のボサっぽいフレーズです。
2小節めの「D7」では【7th】の「ド」に向けて、4小節めの「Gm6」では【6th】の「ミ」に向けて今回のフレーズをそのまま使っています。
さいごに
というわけで今回はPat Methenyの『Here To Stay』でのワンフレーズを紹介しました。
スケールアウトというほどではない絶妙なアウト感が醸し出せて、便利なフレーズだと思います。
歌メロなどに使うにはちょっと難しいと思いますが、ぜひアドリブに使ってみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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