
今回はBarry HarrisのMethodで使われるクロマチックスケールを紹介しましょう。
一般的なクロマチックスケールとは少し違って、Barry Harrisならではの工夫が盛り込まれています。
スケールトーンだけのアドリブに少しの緊張感を与え、センスよく聞かせることができるようになるのでぜひ最後までご覧下さい。
スケールの基本的な作り方
ではまず作り方を解説しましょう。
普通のクロマチックスケールはどの音から始めても同じですが、Barry Harrisのクロマチックスケールは元のスケールによって変わってきます。

まずこの「Cメジャースケール」で作ってみましょう。
そしてそれぞれのスケールトーンの間に1音を加えます。
もちろん「ミとファ」「シとド」はもともと半音なので、音を加えることはできません。

そうするとこのようになります。
いわゆる一般的なクロマチックスケールです。
これを8分音符で弾いてみましょう。

このようになります。
では強拍の音を見てください。

1小節めの4拍めからスケール外の音が強拍になってしまいます。
これでは「Key=C」のどのダイアトニックコード上で弾いても綺麗に響きません。
こうなってしまうのは「ミとファ」「シとド」の間に音がないからです。
これでは「ファ」が必ず弱拍になり、次の「#ファ」が強拍になります。
そうすると、その後から全部ずれてしまうというわけです。
これを解消するため、Barry Harrisはこんな方法を提唱しています。

「ミとファ」の間に「ファ」の全音上の「ソ」を
そして「シとド」の間にも「ド」の全音上の「レ」を入れるという方法です。
度数で言うと「 ⅢとⅣ 」の間に「 Ⅴ 」を
そして「 ⅦとⅠ 」の間に「 Ⅱ 」を入れるということになります。
そうするとこのようなスケールになります。

強拍の音を見てみましょう。

強拍の音が「Cメジャースケール」になりました。

これは強拍を「C6」の構成音にするというBebopスケールの考え方と似ています。
※Bebopスケールに関してはこちらの記事を参照してください。
「強拍をノンコードトーンやスケール外の音にしない」というのがBarry Harris Methodの基本的な考え方です。
もちろん基本というだけで、それ以外が禁則というわけではありません。
そして音を新たに加えるこのクロマチックスケールも1つの提案というだけで、普通のクロマチックスケールより優れているというわけではありません。
提案しているBarry Harrisでさえ普通のクロマチックスケールも使いますし、強拍にノンコードトーンがくることも多くあります。

ちなみに下行のときも同じ音を加えます。
実際はBebopスケールと同じで下行に使われるほうが多いかもしれません。
ダイアトニックコードに応用する
こうして作られたBarry Harrisのクロマチックスケールは、Cのダイトニックコード全てに共通です。
例えばこちらを見てください。

「Key=C」の「Dm7」ではDorianを使いますが、「D Dorian」は「Cメジャースケール」を並び替えたものなので当然同じところ、ようするに「ミとファ」「シとド」に半音があります。
なので先ほどと同じ「ソ」と「レ」を加えます。
そうしてできたクロマチックスケールを見てください。
Dorianの構成音は全て強拍にあります。
ではもう1つ見てみましょう。

「Key=C」のドミナントである「G7」の場合です。
スケールはMixolydianです。
当然これも「ミとファ」「シとド」に半音があるので、「ソ」と「レ」を加えます。
そうするとMixolydianの構成音は全て強拍になりました。
キーを変えてみましょう。
「Key=E♭」のトニックである「E♭△7」で見てみます。

スケールは「E♭ Ionian」です。
ようするにメジャースケールですから、最初に見た「Cメジャースケール」と同じで「 ⅢとⅣ 」そして「 ⅦとⅠ 」の間に半音があります。
そこで同じように「 ⅢとⅣ 」の間に「 Ⅴ 」を、そして「 ⅦとⅠ 」の間に「 Ⅱ 」を入れるとこのようになります。
加えた2音の効果
この新たに入れた2つの音が実はとてもいい効果を発揮します。

このようにスケールをただなぞるだけでも、上行の幅が変わったり下行が入ったりしているのがわかると思います。
全て半音ずつ上行しているのですが、「ミからソ」と「シからレ」だけは、いきなり短三度上行します。
そして「ソからファ」「レからド」は下行します。
これがちょうどいい変化を与えてくれるので、ただスケールを弾くだけでもフレーズっぽくなるというわけです。

上段は普通のクロマチックスケール、下段はBarry Harrisのクロマチックスケールをただ下行しただけです。
スケールをただ下行しても、ちゃんとフレーズに聞こえるのがわかると思います。
変則的な作り方
全音の間に半音を入れていくというのがBarry Harrisのクロマチックスケールの基本ですが、まれにスケールトーンの間隔が1音半になるものもあります。
たとえばハーモニックマイナーなどです。

その場合はこのようにするとしっくりくるでしょう。
しかしどうしても変則的にはなってしまいます。
そもそも全てのコードをクロマチックスケールにする必要はないので、よくわからないときは使わないようにするのが無難でしょう。
実際の使い方
では実際のアドリブに取り入れてみましょう。

このように全てをクロマチックスケールにする必要はありません。
これでもかなり大げさに使っているほうです。
1小節めの4拍めの「ミ」から3小節め3拍めの「ミ」まで、今回のクロマチックスケールをただ下行しただけです。
新たに加えた2音により、ただ下行するだけではなく、1回上行することになります。
それによってフレーズの折り返しができてとてもいい感じに聞こえます。

この例では1小節めの最初の「ラ」から2小節めアタマの「レ」まで下行します。
そして3小節めアタマの「ド」から4拍めの「ソ」までもただ下行しているだけです。

この例は、1つのコードにたいして半分ほどをクロマチックスケールにしてあります。
1小節めと2小節めは1拍めから3拍めアタマまで、3小節めの3拍めから4小節めアタマまでをそれぞれ下行しています。
1小節丸ごとクロマチックスケールにするより、このように2拍程度の長さに使うことのほうが多いでしょう。
そうすると例えば2小節めの「G7」は「ファからミ」「ドからシ」の新たな音を加える部分が使われていないので、Barry Harrisのクロマチックスケールなのか普通のクロマチックスケールなのかの区別はつきません。
だからと言って実際のアドリブには何の問題もありません。
3つ例をあげましたが、クロマチックスケールを使ったところは強拍の全てがスケールトーンになっていることに注目してください。
今回は最初からずっと強拍にこだわっているわけですが、それがどのぐらいサウンドに影響があるかを少し見てみましょう。

上段は強拍にスケール以外の音が3つ使われています。
下段は強拍がすべてスケールトーンです。
あえて強拍をスケールトーン以外の音にしてしまうというのも1つの方法ではありますが、コードにたいしてどちらが自然かというと、明らかに下段のほうがしっくりくるのがわかると思います。
どちらを使うにしてもこの違いはわかっていなければなりません。
わかった上であえてハズすのは有効なテクニックです。
Jazz Musician達の使用例
ここからは、Jazz Musician達がどのように使っているのかをいくつか例をあげて見てみましょう。
今回紹介したクロマチックスケールはBarry Harrisが使っているというより、彼がBebopを教えるとき初心者でもわかりやすいアプローチとして提唱しているものです。
Barry Harris本人の演奏からも、その特徴的な部分をわかりやすく使っているフレーズがなかなか見つかりませんでした。

アドリブでは当然スケールの音全部を使うわけではないので、一部分だけではBarry Harrisのクロマチックスケールなのか普通のクロマチックスケールなのか区別はつきません。
というわけで、単にクロマチックの使い方として見ると学ぶところがたくさんあるフレーズをいくつか紹介しましょう。
Ornithology/Barry Harris

1小節め「Am7」の3拍めから「D7」のアタマの「ド」までがクロマチックスケールです。
「ド」から「シ」もクロマチックなのですが、Barry Harrisのクロマチックスケールでは間に「レ」を入れなければいけないので、ここでは含めませんでした。
このように、マイナーコードのときに【5th】からクロマチックで下行するフレーズはよく使われます。
Ornithology/Charlie Parker

これは2小節ともコードは「F」です。
1小節め3拍めの「ミ」から2小節めアタマの「ド」までがクロマチックスケールです。
メジャーコードのときに【△7th】から【5th】まで下行するのもよく使われます。
Ladybird/Barry Harris

1小節めアタマの「シ」から4拍めアタマの「ファ」までがクロマチックスケールです。
【6th】から入るというのがなかなか面白いフレーズです。
さいごに
今回はBarry Harrisのクロマチックスケールを紹介しました。
これをうまく使えると、スケールトーンだけのフレーズにおしゃれな彩りを添えることができます。
普通のクロマチックスケールを使うより簡単にそれっぽいフレーズが作りやすいので、初心者にはおすすめです。
ぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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