
「天才たちのエンディング」シリーズ、今回はBill Evansのエンディングです。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
今までになく難しいのですが、応用できるところはたくさんあります。

これは『Come Rain Or Come Shine』という曲のエンディングです。
今回はこのフレーズをそのまま覚えるというよりも、コード進行やスケールなどを理解して応用することを目指しましょう。
フレーズ分析
分析する前にまずこれを見てください。

この2段めまではエンディングではなくまだテーマ部分です。
3段めからエンディングに入っていきます。

この上の譜面が一般的なテーマとコードで、下がBill Evansがリハーモナイズしたものです。
5小節めで「Dm」に解決して終わる曲なのですが、その前の4小節もかなりリハーモナイズしてあります。
そして5小節めの「Dm」からBill Evansのかっこいエンディングが始まります。
今回はテーマ部分のリハーモナイズは除きこの5小節めからを解説したいと思います。
では、このエンディングがどのようになっているのか詳しく見ていきましょう。
今回はとにかくややこしいので、少しずつにします。

ふつうに「Dm7」に進行してそのまま終わるのかと思いきや、そのあとすぐ「Am7(♭5)-D7」という「 Ⅱ-Ⅴ 」から「Gm7」に進行し、それをまた「 Ⅱ 」と考え、「Gm7-C7」という「 Ⅱ-Ⅴ 」から「F7」に進行し、そこからドミナントモーションで「B♭△7」に解決しています。
ここはいきなりテンポが速くなったように感じます。
ダブルタイム、いわゆる倍テンで記譜してもよかったのですが、2小節だけだったのでそのまま記譜しました。
ハーフタイム&ダブルタイムについてはこちらの記事を参考にしてください。
では次の小節です。

ここでまた「Dm7」に解決するための「 Ⅱ-Ⅴ 」である「Em7(♭5)-A7」でのフレーズが出てきます。
「Em7(♭5)」では「Gm7」や「Dm7」のようなアルペジオを弾いたりしていますが、左手が動いていないのでコードネームとして記譜する必要はないでしょう。

「Em7(♭5)」では、スケールとしては「E Locrian」です。
Locrianには含まれない「#ド」が出てきますが、「レ」にたいするクロマチックアプローチと解釈するのが自然でしょう。
「A7」は【13th】が出てこないので特定できませんが、オルタードスケールかコンディミでしょう。
では次のフレーズです。

先ほどの「A7」から「Dm」に解決するのかと思えば、またそれを裏切って「A♭7」に解決しています。

ドミナントが半音下のコードに解決するのは、裏コードを使ったドミナントモーションです。
本来「A♭7」に解決するドミナントは「E♭7」ですが、その裏コードである「A7」も「A♭7」に解決できます。
ここはとても速いフレーズなので、弾くのはかなり難しいと思います。
左手が白玉なのが救いですね。
一見ややこしそうではありますが、使われているスケールは1つです。

このホールトーンスケールだけが使われています。
スケール練習のようなメカニカルなフレーズですが、前後の流れから見ると、ここでこれはかなり意表を突きますね。
では次の小節を見てみましょう。

先ほどの「A♭7」からまた半音下の「G7」に進行しています。
これも裏コードを使ったドミナントモーションです。

大まかに見ると、クロマチックアプローチをともなって「Dm」や「Am」っぽいフレーズが使われています。
しかし左手の「ソ」の音がペダルでずっと鳴っていますし、ベースのフレーズなども聴くと、ここは「G7」という解釈でいいと思います。

とても速くて弾きづらいフレーズですが、この「L」と書いてあるところを左手で弾くとかなり楽になるので、試してみてください。
このような弾き方についてたこれらの記事を参考にしてください。
そして最後の小節です。

左手は「F△7」を弾いてはいますが、ベースを聴くと、ここも「G」を【Root】と考えるべきでしょう。
「F△7/G」でもよかったのですが、もっとシンプルに「G7sus4」としました。
最初の「ラ-ソ」と最後のコードを除けば、全て完全4度で積んだ2音になっています。

ここの譜面もまた難しそうですが、この囲った部分はオクターブ違うだけで全く同じ音なので、譜面の見た目よりは簡単です。

最後のコードはベースが「ソ」を弾いているので、コードネームをつけるなら「G9sus4」です。
「Dm」で終わるのが当たり前の曲を、このようなコードで終わるというのは面白いですね。
上の3つがPerfect 4th Buildになっているのがまたおしゃれです。
まとめ
今回のフレーズは、音符を1つ1つ全て覚える必要はありません。
ちょっとした音使いやコード進行だけを自分の曲などに取り入れるのがよいでしょう。
応用するためのポイントを簡単にまとめてみます。

今回と同じ「Key=Dm」の曲という設定です。
1段めは今回のフレーズとは関係なく、「Key=Dm」の曲はこのような「 Ⅱ-Ⅴ 」で終わることが多いので便宜上付け足しました。
そしてその「 Ⅱ-Ⅴ 」がいったん「Dm」に解決します。

度数は、このDナチュラルマイナーのダイアトニックコードを見てください。
※Dナチュラルマイナーには本来のドミナントである「A7」が含まれませんが、ハーモニックマイナーやメロディックマイナーを使うと他のコードがややこしくなってしまうのでやめておきます。
そこから「Ⅳm7」の「Gm7」に解決するための「 Ⅱ-Ⅴ 」、そして「Ⅲ△7」の「F△7」に解決するための「 Ⅱ-Ⅴ 」を連続させ、「Ⅲ7」から「Ⅵ△7」に解決します。
そしてまた「Key=Dm」の「 Ⅱ-Ⅴ 」である「Em7(♭5)-A7」が出てきます。
ここの「Em7(♭5)」では「Gm7」や「Am7」の分散、いわゆるアルペジオのようなフレーズを使います。
「A7」ではオルタードスケールを使うとよいでしょう。
そして半音下の「A♭7」に進行しますが、ここではホールトーンスケールを使うと今回のサウンドっぽくなります。
そこからさらに半音下の「G7」に進行します。
ここは「Dm7」と「Am7」っぽいアルペジオを使います。
そのとき【Root】の半音下の音、ようするに「Dm7」では「#ド」、「Am7」では「#ソ」からクロマチックアプローチするとさらにそれっぽくなります。
そして「G7sus4」では4度積みの2音でフレーズを作り、最後は【9th】からのPerfect 4th Buildである「ラ-レ-ソ」という和音で終わるとよいでしょう。
簡単に今回のフレーズをまとめましたが、これらを全て使う必要はありません。
例えば3段めの「A7」にHmp5↓を使ったり、4段めの「A♭7」をオルタードスケールにするのもありです。
「分散っぽいフレーズ」と書いてあるところも別に分散を使わなくてもいいですし、6段めのような完全4度も使わなければいけないわけでもありません。

そしてこのように2拍ずつのコードを1小節ずつにするなど、拍数や小節数、リズムなども自由に変えましょう。
Hint

1段めと3段めは同じコードなので、1段めから4段めに飛ぶのもいいでしょう。
2段めの「 Ⅱ-Ⅴ 」の連続はけっこうややこしいので、それがなくなるとかなりシンプルで応用しやすくなると思います。

コードだけを度数で表記するとこのようになります。
曲の終わりで「 Ⅱ-Ⅴ 」からトニックの「Dm」に進行することなく、いきなり「♭Ⅴ7」である「A♭7」にいくのはかなり意表をついて面白いと思います。
応用例
では違う曲に使ってみましょう。
『Autumn Leaves』でやってみます。
【Hint】で言ったように、アタマを少しカットするパターンです。

今回のBill Evansのエンディングとはいろいろ変えてありますが、なんとなく同じようなサウンドになっているのではないでしょうか。

1〜2段めまでがテーマ部分で、3段めからがエンディングです。
「D7」から本来の「Gm7」に解決することなく、半音下の「D♭7」に進行します。
「D♭7」ではホールトーンスケールを使っています。
そしてさらに半音下の「C7」に進行します。
ここでは「Gm7」と「Dm7」のアルペジオっぽいフレーズを多めに使いました。
そこから左手は「Csus4」のようなコードを弾きながら、右手はPerfect 4th Buildだけを使っています。
最後のコードも右手はPerfect 4th Buildです。
さいごに
今回はBill Evansのエンディングを紹介しました。
譜面はとても難しいのですが、応用できるところはたくさんあったと思います。
定番のエンディングに少し飽きたら、ほんの一部だけでも使ってみてください。
今回の解説動画はこちら↓
-------------------------------------------------------
鍵盤楽器がとにかくたくさん入った素晴らしい音源です!!
ブログやYouTubeで使っているRhodesの音は全てこのKeyscapeを使用しています。
|
Spectrasonics スぺクトラソニックス / Keyscape コレクターキーボード音源【お取り寄せ商品】
|