
「天才たちのワンフレーズ」シリーズ、今回は珍しくジャズプレイヤーではなくポップスシンガーのBilly Joelです。
いつものようなアドリブフレーズではなく、歌の合間のFill Inといった感じのフレーズです。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。

これは有名な『New York State of Mind』をソロで弾き語りしているときのフレーズです。
Popsではありますが、非常にJazzっぽくもあり、Bluesっぽくもある名曲です。
この部分はルバートなので、譜割はちょっと無理矢理な感じにはなっています。
今回はこの中から、3小節めのフレーズについて紹介したいと思います。
いわゆる駆け上がりのフレーズなのですが、音使いが少し変わっていたので今回はこのフレーズを選んでみました。
フレーズ分析

コードは音使いから一応「D9」と表記しましたが、「D7」と解釈してもいいでしょう。
もちろん「D7(9,13)」でもOKです。
この曲は「Key=C」なので、「D7」は「 Ⅱ7 」のセカンダリードミナントということになりますが、このフレーズは「 Ⅴ 」にも使えます。
例えば「D7」の駆け上がりというと、こんな感じのフレーズが一般的だと思います。


1つめは「D」のトライアド、2つめは「D7」のアルペジオになっています。
ところが今回のフレーズは、度数で見るとこのようになっています。

1拍めは左手の低いところで【Root】を弾いたあと、「3-6-7-2」である「#ファ-シ-ド-ミ」と弾いています。
【6th】と【2nd】が入っているのが、よくある駆け上がりフレーズとは少し変わっています。
【2nd】と書きましたが、もちろん【9th】と解釈しても問題ありません。
そして2拍めは「3-5-2-5-6」の「#ファ-ラ-ミ-ラ-シ」と弾きます。

この「3-5」は駆け上がりではごく普通に使われる音ですが、そのあとの「2-5-6」である「ミ-ラ-シ」が駆け上がりではあまり使わない音の並びになっています。
今回は特にここを覚えましょう。
この「ミ-ラ-シ」は「Esus4」の構成音です。
「Esus4/D7」という「sus4」をアッパーストラクチャーに使ったようなサウンドになっています。
元のコードの全音上の「sus4」を使うと覚えておくのもいいでしょう。
※「アッパーストラクチャーsus4」について解説した記事があるので、興味のあるかたはこちらを参考にしてください。

3拍めは2拍めのフレーズをオクターブ上げただけです。
最後は【2nd】ようするに【9th】の「ミ」で終わっているのもおしゃれなところです。
最後の4つの音を見ても「Esus4」になっています。

かなり速いのでこのような表記でもよさそうです。

スケールでいうとMixolydian、またはLydian7thということになります。
このフレーズには【11th】も【#11th】も入っていないので、どちらか特定はできません。
弾き方
このフレーズはかなり速い駆け上がりなので、片手で弾くことは不可能です。
Billy Joelも両手を使って弾いています。

このように左手と右手を使えばかなり楽に弾けるはずです。
記譜上は16分音符にしてありますが、それほどシビアに考える必要はありません。
自分の弾ける1番速いテンポで弾けば間違いないでしょう。
※このように聞くと難しいけど弾いてみるとそれほどでもない・・・といったフレーズを「はったりテクニック」という記事でいくつか紹介していますので、興味のあるかたは参考にしてみてください。
まとめ
今回のフレーズを簡単にまとめてみましょう。
「G7」でやってみましょう。

まず左手で【Root】の「ソ」を弾きます。
次に右手で「3-6-7-2」である「シ-ミ-ファ-ラ」と弾きます。
次に左手で「3-5」の「シ-レ」と弾き、すぐに右手で「2-5-6」である「ラ-レ-ミ」と弾きます。
この「ラ-レ-ミ 」は元のコード「G7」の全音上の「sus4」である「Asus4」の構成音です。
そして先ほどの「3-5-2-5-6」である「シ-レ-ラ-レ-ミ」をオクターブ上げて繰り返し、最後は【9th(2nd)】の「ラ」で終わります。
応用例
今回のフレーズはルバートでしたが、インテンポでも使えます。

「G7」で今回紹介した「3-5-2-5-6」から左手の音を1音増やして「3-5-7-2-5-6」にしてみました。
インテンポなら、5連符よりは6連符のほうがリズムは取りやすいでしょう。
ここまでで駆け上がりでの使い方はよくわかったと思います。
では同じ音の並びを、駆け上がり以外に使ってみましょう。
ポイントは全音上の「sus4」を使うところです。

これも「G7」で全音上の「sus4」である「Asus4」の構成音を使ってみました。
これは前述の「アッパーストラクチャーsus4」の動画で紹介したような使い方です。
さいごに
というわけで今回はBilly Joelのワンフレーズを紹介しました。
Popsで、しかもルバートでのワンフレーズでしたが、Jazzにもじゅうぶん使えるフレーズです。
ドミナント7thコードでの駆け上がりにひと工夫したいときに、ぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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