「ひとつだけ覚えるアドリブフレーズ」Ⅱ-ⅤのPart11です。
今回はMichel Petruccianiのフレーズを紹介しましょう。
はじめに
このようなフレーズです。
「Key=Gm」における【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】です。
マイナーキーなので【Ⅱ】は「m7(♭5)」になっています。
今回も「Key=Am」で説明していきましょう。
コードは【Bm7(♭5)-E7-Am7】ということになります。
フレーズの分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
まずは1小節めです。
この「Bm7(♭5)」は「Key=Am」の【Ⅱ】でもあり、「Key=C」の【Ⅶ】でもあるので、一般的に使うスケールは「Bロクリアン」なのですが、このフレーズにはロクリアンには含まれない【9th】が含まれています。
これはスケールでいうと「ロクリアン#2」というスケールになります。
それぞれの音がコードにたいしてどのような音になっているのか見てみます。
まず【3rd】の「レ」から入って、そのまま【7th】の「ラ」までスケールを上行します。
そして【9th-11th-9th】と弾きます。
この3〜4拍めは「A」のトライアドになっています。
では2小節めです。
このフレーズは「オルタードスケール」または「コンディミ」と解釈するのがよいでしょう。
ただし「♮シ」だけは「オルタードスケール」には含まれません。
では1音ずつ分析してみましょう。
1小節めの最後の音「#ド」から半音上がって「レ」から入ります。
そのまま「オルタードスケール」を【3rd】の「#ソ」まで上がったら、【5th-#11th-3rd】と弾きます。
このあたりはちょっとややこしそうなのですが、たぶんペトルチアーニ本人はこう考えたと思われます。
3小節めの最初の音である「ラ」を解決先とし、その「ラ」を半音上下ではさんだ「ディレイドリゾルブ」という解釈です。
【#11th】などと考えなくてもこのほうが楽ですし、この曲の他の部分でもディレイドリゾルブを使ったと見られるフレーズがたくさん出てきます。
※「ディレイドリゾルブ」の記事はこちら↓
では3〜4小節めです。
このフレーズは【6th】がありませんが、ジャズマイナーと解釈しておくとよいでしょう。
では1音ずつ分析してみます。
まず3小節めは【Root】の「ラ」から入って【1-5-4-3】と下行、そしてトライアドのアルペジオで【5-3-1-5】と弾きます。
この小節はスケールの音を弾いているだけです。
4小節めは臨時記号が多くてややこしそうですが、実はそうでもありません。
「E7」の3〜4拍めでのフレーズと全く同じなのです。
ようするにこれも最初は【△7th-9th】と弾きますが、そのあとの「#ラ-#ソ」は「ラ」に解決するためのディレイドリゾルブです。
「#ラ」は【♭9th】と書かずに「x」と書いたのは、これはあくまでもディレイドリゾルブなのでテンションとは解釈しないからです。
実はこのフレーズは定番フレーズで、他のミュージシャンもたくさん使っています。
「ラ」に解決するときのフレーズとして、これを丸ごと覚えることをおすすめします。
ターゲットノートの「半音下-全音上-半音上-半音下」と弾いてから解決します。
他のキーで見てみよう
では他のキーでもすぐ弾けるようにするため、いくつかのキーで見てみましょう。
これは「Key=Em」の【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】です。
1小節めは【3rd】の「ラ」から「F#ロクリアン#2スケール」を【7th】の「ミ」まで上行したあと、【9th-11th-9th】と弾きます。
3〜4拍めは「E」トライアドです。
「元のコードの全音下のメジャートライアドを弾く」と覚えるのもいいかもしれません。
2小節めは【7th】の「ラ」から「オルタードスケール」を【#9th】まで上行します。
そのあとはターゲットノートの「ミ」に向けて「半音下-全音上-半音上-半音下」と弾きます。
3小節めで「Em7」の【1-5-4-3-5-3-1-5】と弾いたあと、4小節めは2小節めの3〜4拍めと同じフレーズを「ミ」に向けてオクターブ下げて弾きます。
そのあとはオクターブ上の【Root】を弾き、全音下の【7th】を弾いて終わりです。
ではもう一つ見てみましょう。
これは「Key=Cm」のフレーズです。
1小節めは【3rd】の「ファ」から「Dロクリアン#2スケール」を【7th】の「ド」まで上行したあと、【9th-11th-9th】と弾きます。
3〜4拍めは元のコード「Dm7(♭5)」の全音下の「Cトライアド」です。
2小節めは【7th】の「ファ」から「オルタードスケール」を【#9th】まで上行します。
そのあとはターゲットノートの「ド」に向けて「半音下-全音上-半音上-半音下」と弾きます。
3小節めで「Cm7」の【1-5-4-3-5-3-1-5】と弾いたあと、4小節めは2小節めの3〜4拍めと同じフレーズを「ド」に向けてオクターブ下げて弾きます。
そのあとはオクターブ上の【Root】を弾き、全音下の【7th】を弾いて終わりです。
覚えるための練習法
全てのキーで覚えるのはなかなか大変なので【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】を連続させ練習してみましょう。
【D-G-C-F・・・】と時計回りに「5度下」に進んでいくのですが、これを【Dm7(♭5)-G7-Cm】という【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】と考え、その【Ⅰ】である「Cm」の【5th】を半音下げて「Cm7(♭5)」にして、それを新たな【Ⅱ】と考え、【Cm7(♭5)-F7-B♭m】という新たな【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】を作り、つなげていきます。
サークルオブ5thを【Dm7(♭5)-G7】から始まり1周するパターンと、【Gm7(♭5)-C7】から始まり1周するパターンの2種類で、12個全ての 【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】が出てきます。
3小節だと中途半端なので、最後のトニックを2小節にしました。
調号で書くと4小節おきにキーが変わって読みにくいので、臨時記号で書いてあります。
元のフレーズのままだとつなげにくいので、4小節めの音を少し減らしました。
※カラオケ音源とMIDIデータを貼っておきますので、ご自由にダウンロードしてお使いください。
それではつなげて弾いてみましょう。
EX.1
まずは「Dm7(♭5)」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
EX.2
次は「Gm7(♭5)」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
バリエーション
慣れてきたらこのようにリズムを変えてみても面白いと思います。
使っている音はほぼ同じですが3連符を多用し、リズムを変えてあります。
2小節めは少し音を増やしてみました。
これも3連符を多めにしました。
3小節めはクリシェ的なラインを作ってみました。
さいごに
というわけで今回はMichel Petruccianiが実際に弾いていたマイナーキーの【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】フレーズを紹介してみました。
ディレイドリゾルブがとても効果的に使われたフレーズでした。
ぜひ自分のアドリブに取り入れてみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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