「ひとつだけ覚えるアドリブフレーズ」Ⅱ-ⅤのPart16です。
今回はKenny Barronのフレーズを紹介しましょう。
はじめに
このようなフレーズです。
音使いのセンスが素晴らしく、とてもかっこいいと思います。
これは「Key=Dm」の【 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 】です。
マイナーキーなので【 Ⅱ 】が「m7(♭5)」になっています。
3小節めのアタマの音は「レ」と「ミ」が同時に鳴っていますが、たぶん単なるミストーンだと思われます。
4小節めのフレーズを見てみると、ここは「ミ」と弾きたかったのではないかと推測します。
ということで解説は「ミ」の単音とします。
わかりやすく「Key=Am」に移調して見てみましょう。
このようになります。
フレーズの分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
まずは1小節めです。
この「Bm7(♭5)」は「Key=Am」の【 Ⅱ 】ですから、一般的には「Bロクリアン」を使うのですが、このフレーズではロクリアンの中にはない【9th】が使われています。
とうことで、ここでのスケールはロクリアンではなく「ロクリアン#2」ということになります。
※ロクリアン#2についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
では、それぞれの音がコードにたいしてどのような音になっているのか見てみます。
まず【11th】の「ミ」から入って、Bロクリアン#2を「11-9-7-11」と下がり、またオクターブ上の【11th】を弾きます。
これは「Aのトライアド」になっています。
元のコード「Bm7(♭5)」の【Root】である「B」の全音下の「A」のトライアドです。
「ロクリアン#2を使う場合は全音下のトライアドが使える」と覚えておくとよいでしょう。
オクターブ上の【11th】を弾いたあと【3rd】の「レ」を弾きます。
そのあとオクターブで「ソ」を弾きますが、これは次のコードである「E7」の【#9th】がシンコペーションしているものと解釈するほうがわかりやすいでしょう。
では、それをふまえて2小節めを見てみましょう。
1小節めの4拍めウラから【#9th】がオクターブで延びています。
そのあと【♭9th-#9th】と弾きます。
スケールは「オルタードスケール」と解釈するのがいいと思います。
そのあと装飾音を使い【Root-7th】と弾きます。
最後の「ド」は「E7」から見ると【♭13th】ということになりますが、これもフレーズから見ると次の小節の「Am」の【3rd】が少し早めに出てきたと考えるほうがいいと思います。
では、3小節めから4小節めを見てみましょう。
このフレーズはほぼ「Am6」から作られていると言ってよいでしょう。
【9th】から入り「Am6」の「9-6-5-3」と下行し、そのまままた「9-1-6」と下行します。
4小節めの1拍めから3拍めまでは、3小節めと全く同じフレーズをオクターブ下げて弾きます。
そして4拍めは「ソ-ミ」と弾いて終わります。
この「Am」はトニックです。
トニックマイナーに【6th】を使う場合は、通常ジャズマイナー(メロディックマイナー上行)を使うことになります。
しかし、4小節め4拍めに出てくる「ソ」はジャズマイナーに含まれる【△7th】とは違って【7th】です。
【6th】と【7th】が含まれるマイナースケールは「Dorian」ということになります。
しかしトニックマイナーに「Dorian」を使うことはありません。
少し強引ですが、3小節めと4小節めの1、2拍めは「ジャズマイナー」、4小節めの3、4拍めは「ナチュラルマイナー」と解釈するのがいいのではないでしょうか。
他のキーで見てみよう
では他のキーでもすぐ弾けるようにするため、違うキーで見てみましょう。
これは「Key=Gm」です。
「Am7(♭5)」はまず【11th】の「レ」から入って、Aロクリアン#2を「11-9-7-11」と下がり、またオクターブ上の【11th】を弾きます。
これは「G」のトライアドの分散です。
そのあと【3rd】の「ド」を弾きます。
次に「D7」の【#9th】である「ファ」をオクターブで弾いたあと、【♭9th-#9th】と弾きます。
そのあと装飾音を使い【Root-7th】と弾きます。
そして次の「Gm」の【3rd】である「♭シ」に解決します。
3小節めは「Gm」の【9th】から入り「9-6-5-3」と下行、そこからさらに「9-1-6」と下行します。
4小節めの1拍めから3拍めまでは、3小節めと同じ「9-6-5-3-9-1」をオクターブ下げて弾きます。
4拍めは【7th-5th】である「ファ-レ」と弾いて終わりです。
覚えるための練習法
全てのキーで覚えるのはなかなか大変なので【 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 】を連続させ練習してみましょう。
【D-G-C-F・・・】と5度下に進んでいきますが、これを【Dm7(♭5)-G7-Cm7】にして、そこから解決した【 Ⅰ 】である「Cm7」からルートは同じ「m7(♭5)コード」である「Cm7(♭5)」を弾き、それを新たな【 Ⅱ 】と考え、【Cm7(♭5)-F7-B♭m7】という【 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 】を作りつなげていきます。
今回のフレーズのままでは続けにくいので、最後の2つの音を省き、ルートを延ばして終わりましょう。
ちなみに左手はKenny Barronが弾いたこのようなフレーズで入れてあります。
余裕がある方はぜひ弾いてみてください。
サークルオブ5thを【Dm7(♭5)-G7】から始まり1周するパターンと、【Gm7(♭5)-C7】から始まり1周するパターンの2種類で12個全ての【 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 】が出てきます。
それではつなげて弾いてみましょう。
EX.1
まずは「Dm7(♭5)」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
EX.2
次は「Gm7(♭5)」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
バリエーション
慣れてきたら音やリズムを変えてみましょう。
バリエーション1
今回のフレーズとほぼ同じ音使いですが、ボサノバにしてみました。
「Bm7(♭5)」では「A」のトライアドを使っています。
「E7」での「#レ」はクロマチックアプローチなので【△7th】とは解釈しません。
「Am6」ではジャズマイナーを使っています。
バリエーション2
ではもう1つ作ってみましょう。
これも今回のフレーズとほぼ同じ音使いですが、並びを少し変えました。
スケールはそれぞれ「ロクリアン#2」「オルタード」「ジャズマイナー」です。
さいごに
というわけで今回はKenny Barronが弾いたマイナーキーでの Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ フレーズを紹介しました。
ロクリアン#2がとてもいい味を出していておしゃれだと思います。
トニックでの【6th】の使い方もとても参考になると思います。
ぜひ自分のアドリブに取り入れて みてください。
今回の解説動画はこちら↓
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