「ひとつだけ覚えるアドリブフレーズ」Ⅱ-ⅤのPart12です。
今回はBill Evansのフレーズを紹介しましょう。
はじめに
このようなフレーズです。
Bill Evansはこのフレーズを「Key=B♭」の曲の中で、【Ⅳ】である「E♭△7」に解決する【Ⅱ-Ⅴ】として使っています。
しかし「Key=E♭」の【Ⅱ-Ⅴ】として使っても全く問題ないので、わかりやすく調号は「Key=E♭」で書いてあります。
説明するには少し音域が高いので、1オクターブ下げましょう。
そして今回も理解しやすいように「Key= C」で説明していきましょう。
コードは「Dm7-G7- C△7」ということになります。
フレーズの分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
まずは1小節めです。
この「Dm7」は「Key=C」の【Ⅱ】ですから「Dドリアン」を使います。
それぞれの音がコードにたいしてどのような音になっているのか見てみます。
まず【3rd】の「ファ」から入って「ファ-ラ-ド-ミ」と「Dm9」をアルペジオのように上行します。
そして「♭ミ-レ-ド」と下行します。
この「♭ミ」はクロマチックアプローチなので、テンションという解釈はしません。
そして2小節めの最初の音である「シ」に向かってさらに半音下がります。
では2小節めです。
このフレーズはスケールが特定できません。
一応ここでは「ミクソリディアン」ということにしておきます。
では1音ずつ分析してみましょう。
臨時記号が多くて一見難しそうですが、とても簡単なフレーズです。
【3rd】の「シ」から入り、クロマチックで「レ」まで上がったら、また半音で「#ソ」まで下がるだけです。
そしてさらにそこから3小節めの最初の音である「ソ」に向かって半音下がります。
ようするに半音階だけで作られたフレーズです。
これは本来クロマチックスケールと言うしかありません。
しかしそれではちょっと説明にならないので、先程は「ミクソリディアン」と言いました。
別に「オルタードスケール」や「コンディミ」と解釈してもかまいません。
このフレーズはBill Evansの手クセのようで、いろんなところで使われています。
では3小節めです。
これもとてもシンプルなフレーズです。
これは「アイオニアン」、ようするに「メジャースケール」です。
では1音ずつ分析してみます。
まず3小節めは【5th】の「ソ」から入って【5-3-1-6】と下行、そして【△7-9th】を和音で弾いて【Root】に解決して終わりです。
この和音は別に【9th】だけにしてもかまわないと思います。
このようにそれぞれの小節は半音でつながっていることを覚えておけば、弾くのもより楽になるでしょう。
他のキーで見てみよう
では他のキーでもすぐ弾けるようにするため、いくつかのキーで見てみましょう。
これは「Key=G」の【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】です。
1小節めは【3rd】の「ド」から「Am7」のコードトーンを【3-5-7-9】と【9th】の「シ」まで上行したあと、半音で「シ-♭シ-ラ」と下行し、【7th】の「ソ」で終わります。
2小節めは【3rd】の「#ファ」から入り、ずっと半音で【5th】の「ラ」まで上がって、また半音で3小節めの最初の音である「レ」まで半音で下がります。
3小節めで「G△7」のコードトーンを【5-3-1-6】と下行し、【△7th-9th】を同時に弾き、【Root】で終わります。
ではもう一つ見てみましょう。
これは「Key=F」のフレーズです。
1小節めは【3rd】の「♭シ」から「Gm7」のコードトーンを【3-5-7-9】と【9th】の「ラ」まで上行したあと、半音で「ラ-♭ラ-ソ」と下行し、【7th】の「ファ」で終わります。
2小節めは【3rd】の「ミ」から入り、ずっと半音で【5th】の「ソ」まで上がって、また半音で3小節めの最初の音である「ド」まで半音で下がります。
3小節めで「F△7」のコードトーンを【5-3-1-6】と下行し、【△7th-9th】を同時に弾き、【Root】で終わります。
覚えるための練習法
全てのキーで覚えるのはなかなか大変なので【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】を連続させ練習してみましょう。
【D-G-C-F・・・】と時計回りに「5度下」に進んでいくのですが、これを【Dm7-G7-C△7】にして、そこから解決した【Ⅰ】である「C△7」からルートは同じマイナーコードである「Cm7」を弾き、それを新たな【Ⅱ】と考え【Cm7-F7-B♭△7】という 【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】を作りつなげていきます。
サークルオブ5thを【Dm7-G7】から始まり1周するパターンと、【Gm7- C7】から始まり1周するパターンの2種類で、12個全ての【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】が出てきます。
3小節単位だとつながりが悪いので【Ⅰ】を2小節として4小節単位にしましょう。
4小節めにはフレーズがないので、次の準備をしやすいと思います。
オルタードスケールの記譜法はいろいろ考えられるのですが、今回はあえて半音上のマイナーコードを想定した記譜をしてあります。
※カラオケ音源とMIDIデータを貼っておきますので、ご自由にダウンロードしてお使いください。
それではつなげて弾いてみましょう。
まずは「Dm7」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
次は「Gm7」から始まるパターンです。
カラオケ音源↓
MIDIデータ↓
バリエーション
慣れてきたら音やリズムを変えてみましょう。
1小節めも2小節めもクロマチックな動きを増やしました。
ボサノバのリズムにしてみました。
1小節めから2小節めにかけて、16分音符のクロマチックな動きを作りました。
2小節めの最後の2つの音から3小節めのアタマにかけては「ディレイドリゾルブ」です。
さいごに
というわけで今回は、Bill Evansが弾いた【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】フレーズを紹介しました。
クロマチックスケールがうまく使われていて、とてもおしゃれだと思います。
そのクロマチックを使った2小節めは、実際に弾いてみると実はそれほど難しくないので、ぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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