「天才たちのワンフレーズ」シリーズ、今回はChick Corea Vol.2です。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
これはVol.1に引き続き、名曲『SPAIN』でのエレピのアドリブです。
今回解説したいのはこの中の8〜9小節め、「F#7」でのフレーズです。
Chick Corea Vol.1はこちら↓
フレーズ分析
これは、ほとんどの音が「Aトライアド」の構成音になっているのがわかると思います。
1小節めの「♮ド」と「#レ」はそれぞれ半音上の音へのクロマチックアプローチです。
この「Aトライアド」が全て含まれるスケールは「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」です。
しかしスケールの音を全部使うのではなく、3つしか使わないところが独特で面白いサウンドになっています。
これが「F#7」にたいしてどのような音になっているのか見てみましょう。
✖️印はクロマチックアプローチなので、テンションとしては扱いません。
このフレーズは【5th】【7th】【#9th】でできていることがわかります。
そして「Aトライアド」には「F#7」の重要なコードトーンである【3rd】の「#ラ」の音が含まれていません。
そこが浮遊感があり、少しアウトっぽいフレーズに聞こえる理由です。
このようにスケールの音を全部使うのではなく、厳選して少ない音だけを使うほうが面白いサウンドを得られることがあります。
今回のフレーズでは【7th】が含まれてはいますが、あえてコードにたいして重要な音である【3rd】や【7th】を弾かないことにより、浮遊感が出てきたりアウトっぽく聞こえたりします。
最後に1つだけ「レ」の音が出てきますが、これは「F#7」にたいして【♭13th】の音です。
これが含まれるスケールは「オルタードスケール」か「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」ということになります。
理論的に分析するなら「ここだけスケールを変えた」というしかありませんが、この「レ」は今回のフレーズではさほど重要な音ではありません。
今回は覚えてほしいのは「F#7」で「Aトライアド」を使うということです。
ちなみに左手ではこのようなコードを弾いています。
見やすくするため1オクターブ上げて見てみましょう。
コンディミの中の【3rd】【13th】【7th】の音を弾いています。
この3つの音だけでは9th系の音が入っていないのでスケールは特定できないのですが、右手のフレーズと合わせて「コンディミ」ということがわかります。
『SPAIN』では「F#7」のときほとんどこのボイシングを弾いています。
まとめ
まとめると「F#7」のとき 「Aのトライアド」を使うということになります。
元のコードの【#9th】または【m3rd】からのトライアドを使うと覚えればいいと思います。
「A7」なら「Cトライアド」
「C7」なら「E♭トライアド」
を使うということです。
応用例
ではさっそく実際に他の曲に使ってみましょう。
まずは「Key=C」の【Ⅱ-Ⅴ】です。
「G7」のときに「B♭のトライアド」を使っています。
『SPAIN』は「Key=Bm」なので「F#7」はマイナーキーのドミナントなのですが、このサンプルはメジャーキーのドミナントに使った例です。
これは「Key=Am」のフレーズです。
「E7」のところで「Gのトライアド」を使っています。
「E7」の【3rd】である「#ソ」がないのでちょっと不思議なサウンドになっています。
さいごに
というわけで今回はChick Coreaの『SPAIN』でのワンフレーズを紹介しました。
ドミナントコードのとき、あえて【3rd】を含まないトライアドでフレージングするというテクニックでした。
ぜひいろんな曲のドミナント7thコードに使ってみてください。
Vol1、2と続けて『SPAIN』からのフレーズを紹介しましたが、この曲は美味しいフレーズの宝庫なので、ぜひ研究することをおすすめします。
今回の解説動画はこちら↓
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