「ペダルポイント」の中でも特にトップノートにペダルポイントを使う「ソプラノペダルポイント」を紹介しましょう。
- ソプラノペダルポイントとベースペダルポイントの違い
- 4分打ちのペダルポイント
- 白玉によるペダルポイント
- ピアノのアルペジオによるペダルポイント
- ペダルポイントをあきらめる
- ペダルポイントに使いやすい音
- まとめ
ソプラノペダルポイントとベースペダルポイントの違い
「ソプラノペダルポイント」とは逆に、低音部にペダルポイントを使うものは「ベースペダルポイント」といいます。
ベースペダルポイントの記事はこちら↓
「ベースペダルポイント」はそんなに難しいことは考えず、ベースをトニックやドミナントにすればよかったのですが、「ソプラノペダルポイント」は少しコードやテンションの知識が必要になります。
簡単に言うと「ペダルポイント」を使いたい場所のコード全てに共通する音を見つけるということです。
言葉ではなかなかわかりづらいので、さっそくサンプルを使って説明していきましょう。
4分打ちのペダルポイント
まずはこんなサンプルです。
いわゆる【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ(イチロクニゴ)】といわれるコード進行です。
これをたとえばこんなボイシングにしてみます。
トップノートを「ミ」にしてみました。
コードネームにテンションが入っていますが、こちらの譜面を見てください。
「ミ」の音がそれぞれのコードにたいしてどういう音になっているかという説明です。
「C△7」にたいしては【3rd】、「Am7」にたいしては【5th】なのでなにも問題はないのですが、「Dm7」にたいして「ミ」の音は【9th】というテンションになります。
今回はソプラノペダルを優先したいので、ここは「Dm9」に変えてしまいます。
「G7」にたいしては【13th】となるのでここもコードネームを変えてしまっています。
ここではついでに【9th】も入れてみましたが、これはペダルポイントとは関係ありません。
さて、このままではただコードのトップノートをそろえただけでペダルポイントっぽい感じには聞こえないと思うので、少し「ミ」の音を強調してみましょう。
コードはそのままで、トップノートをシンセの4分打ちで強調してみました。
これでかなり「ソプラノペダルポイント」っぽい感じが出たと思います。
このように他の楽器でペダルポイントを鳴らす場合は、必ずしもピアノのトップノートを揃える必要はありません。
このように、ペダルポイントに使う音を内声に入れるようなボイシングにしても全く問題ありません。
このサンプルではシンセの4分打ちにしましたが、アレンジ的には他にもいろいろ考えられるので、他のサンプルでいろいろと紹介していきたいと思います。
先ほどのコード進行ですが、他にもペダルポイントにできる音はいくつかあります。
たとえば「レ」の音です。
これは理論的に説明するとこうなります。
「C△7」にたいして【9th】になるので、コードネームも「C△9」にしました。
「Am7」では【11th】になってしまいますが、マイナー7thコードは【11th】をテンションとして使えるのでOKです。
「Dm7」と「G7」に関してはコードトーンなので何も問題ありませんね。
先ほどのようにペダルポイントを強調してみます。
「ミ」をペダルポイントにしたときとはまた違って、これもこれでいいと思います。
それではちょっと注意が必要なパターンです。
「ド」の音をペダルポイントにしたパターンです。
「C△7」「Am7」「Dm7」にたいしてはコードトーンなのでなんの問題もありません。
問題は「G7」です。
「ド」の音は「G7」にたいして【4th】または【11th】の音になります。
これは「G7」にたいして使ってはいけない音、ようするにAvoidNoteということになります。
これを使いたいとなるとコードを「sus4」に変えなければいけません。
たとえば「C△7」のところで「レ」の音をペダルポイントにする場合は、コードは「C△7」のままただ「レ」を使うことができます。
全体的に見れば「C△9」の響きになりますが、ピアノなどが弾くコードは「C△7」のままでも大丈夫です。
しかし「G7」のところに「ド」の音を使いたい場合は「G7」のままでは使えません。
このようにコードも「G7sus4」にする必要があります。
そのようにしたサンプルを聴いてみましょう。
まあ悪くはないですが、せっかくコードが「C△7」なのにRootの「ド」をペダルポイントにするのはあまりよくないかもしれませんね。
白玉によるペダルポイント
では次のサンプルです。
このようなコード進行にしてみました。
このコード進行でペダルトーンにできる音もいくつか考えられます。
ここではペダルポイントを「ミ」にしてみましょう。
「ミ」はトニックマイナーである「Am」の【5th】の音になります。
今回はストリングスの白玉にしてみました。
これならコードを変えることなく使えます。
「G」にたいしては【13th】、「F」にたいしては【△7】、「Dm7」にたいしては【9th】になりますが、ピアノのコードを変えなくてもぶつかっているようには聞こえないと思います。
なぜならどのコードにたいしても「ミ」の音はAvoidNoteではないからです。
それでも気になる人はコードに「ミ」の音を入れてあげるのもまたいい方法です。
ちょっと話はそれますが、このコード進行で最初の4小節を使って、同じようにトニックマイナーの【5th】の音をペダルポイントにした有名な曲にこんなのもありますね。
このように、ペダルポイントが細かいリズムを刻むものも緊迫感があってかっこいいですね。
では違う音をペダルポイントにしてみます。
「シ」の音を使ってみました。
これもすべてのコードにおいてAvoidNoteではないのですが、少々きついかもしれないのでコードでもサポートしています。
そうすると当然コードネームが変わってきます。
「Am7」にたいして「シ」は【9th】なるので「Am9」にしました。
「F△7」にたいして「シ」の音は【#11th】になりますが、このサンプルはキーが「C」と「Am」を行ったり来たりきてしている感じなので、【#11th】はテンションとして使えます。
「Dm7」にたいして「シ」の音は【6th】もしくは【13th】となります。
ここでは【6th】と解釈して【7th】の音をコードから省いて「Dm6」というコードにしてみました。
全体的にテンション感は強いですがなかなかおしゃれだと思います。
ピアノのアルペジオによるペダルポイント
次はこんなコード進行にしてみましょう。
これも「ミ」の音をペダルポイントにしようと思うのですが、「D♭7」だけちょっと難しそうです。
「D♭7」にたいして「ミ」は【3rd】の半音下の音なので【マイナー3rd】になってしまい、「D♭m7」になってしまいそうです。
しかし見方を変えると「♮ミ」は「D♭7」の【9th】である「♭ミ」の半音上なので【#9th】ともいえます。
そこでコードを「D♭7(#9)」にしてしまえば、ここでも「ミ」の音がペダルポイントとして使えるということです。
そこでこのようにしてみました。
ペダルトーンかと言われたらちょっと微妙ですが、ピアノのアルペジオでずっと「ミ」の音を使い続けてみました。
ペダルトーンの雰囲気は出ていると思います。
ペダルポイントをあきらめる
このようにコードが増えるほど共通音を探すのが難しくなってしまいますが、どうしても難しいときはそのコードのところだけペダルトーンを変えるのもありだと思います。
たとえばこんなコード進行を見てください。
このコード進行に「ミ」の「ソプラノペダルポイント」を使いたいと思った場合に、問題となるのは「B7」です。
そのほかのコードにたいしては「ミ」はコードトーンですが、「B7」にたいしては【4th】となってしまい、このままでは使えないので「B7sus4」にするしかありません。
これで大丈夫です。
しかしやはり「B7」と「B7sus4」ではサウンドがかなり違います。
「B7sus4」が使いたくない場合はこのようにすればいいと思います。
「B7」のところだけ「ミ」のペダルポイントをやめて【3rd】である「#レ」にしました。
別にペダルポイントをキープしなければいけないということはありません。
コードを変えるのがいやならそこはやめればいいだけです。
オリジナルなどに使う場合、そのへんは臨機応変にやればいいと思います。
ペダルポイントに使いやすい音
どの音をペダルポイントに使用すればいいかをまとめてみました。
まずはメジャーキーです。
そのキーのトニック(キーがCだとC△7)の【3rd】【5th】【△7th】【9th】を使うのが簡単でおすすめです。
コードと合わない気がすればそのコードにペダルポイントの音を含めるとよいでしょう。
先ほども言いましたが 、Rootはドミナントの【4th】になるので使わないほうが無難です。
そのほか【6th】である「ラ」の音も使えます。
しかしトニックを「C△7」から「C6」にするか、もしくは「C△7(13)」にしなければいけません。
いきなりトニックを変えてしまうのもどうかと思い、一覧には入れませんでした。
ではマイナーキーはどうでしょう。
そのマイナーキーのトニック(キーがAmならAm7)の【5th】【7th】【9th】【11th】が使いやすいです。
「キーがAm」においても「G7」は多く使われます。
「Am」の【3rd】である「ド」の音は、メジャーキーのときと同じく「G7」のAvoidNoteとなるのでやめておいたほうが無難でしょう。
また「Am」の【Root】である「ラ」の音は「Am」にたいするドミナント「E7」の【4th】となってしまうので、これも注意が必要です。
しかしながら必ず例外というものもあって、これらの例が当てはまらない場合もあります。
どこがぶつかっているかは自分の耳で判断するほかはないでしょう。
では途中で転調する場合はどうすれば良いでしょう。
これを見てください。
キーが「C」から「E♭」に転調する場合です。
それぞれのキーのトニックの【3rd】【5th】【△7th】【9th】を比べてみてください。
「ソ」と「レ」が共通していますね。
ということは、キーが「C」から「E♭」に転調しても「ソ」と「レ」ならペダルポイントとしてずっと使い続けることができるということです。
共通音を見つけ出し、それが使われている全てのコードにおいてAvoidNoteでなければ使えるのですが、どうしてもペダルポイントとして使いにくいキー(たとえばKey=CとKey=F#など)もあるので注意してください。
しかし、このように転調してもすぐ共通音を見つけられるようになれば、ペダルポイントに限らずいろいろな面で役立ちますので、ぜひいろんなキーでやってみるとよいでしょう。
まとめ
というわけで、今回はペダルポイントの中でトップノートに使う「ソプラノペダルポイント」というものを紹介しました。
「ベースペダルポイント」とともにコード進行に変化を与え豊かにしてくれるのでぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓