【モードPart2】ということで、今回はIonian(アイオニアン)とLydian(リディアン)を紹介しましょう。
モードの使い方は極端に言ってしまえば2種類です。
1つはいろんな曲の中に使われているコードに対するスケールの分析や、あるコード進行においてアドリブのときに使うスケールを分析するときに使うというものです。
たぶん現代ではこの使い方がメインになると思います。
そしてもう1つはモードから曲を作るというものです。
これは普通のポップスなどではあまり見かけませんが、単なる長調や短調とは違う雰囲気のメロディーを作ることができます。
コード進行からメロディーを作るのとは全く違う方法になります。
ではまず分析に使うという観点から「アイオニアン」と「リディアン」を見ていきましょう。
コード進行の分析
「アイオニアン」も「リディアン」も△7コードに使用するモードです。
「Key=C」のダイアトニックコードを見てみましょう。
△7コードは「Ⅰ」の「C△7」と「Ⅳ」の「F△7」のふたつです。
そして「Ⅰ」に使われるのが「アイオニアン」、「Ⅳ」に使われるのが「リディアン」です。
言い方を変えるとトニックには「アイオニアン」、サブドミナントには「リディアン」を使うということです。
ではルートを同じにして比べてみましょう。
「Cアイオニアン」と「Cリディアン」です。
これを見るとわかるように、「アイオニアン」と「リディアン」の違いは【4th】か【#11th】かということです。
モードには特性音というものがあり、その音がそのモードらしさを出します。
「アイオニアン」も「リディアン」も特性音は【4th】の音です。
【4th】以外の音は全て共通なので、これを弾かなければそのモードっぽさは出ないということです。
ただこの特性音は使ったほうがいいとか悪いとかいうことではありません。
最初からモードを使ってメロディーを作る場合には特性音は使ったほうがそれっぽいでしょうし、普通のコード進行での作曲やアドリブに使う場合は全く意識する必要はありません。
それではキーを見てみましょう。
「Cリディアン」ということは「C」が「Ⅳ」ということですから、「Ⅰ」は「G」、ようするに「Key=G」ということになります。
調号を使うとこのようになります。
同じ「C△7」でも「Ⅰ」なのか「Ⅳ」なのか、言い方を変えれば「Key=C」の中の「C△7」なのか「Key=G」の中の「C△7」なのかを見極めなければなりません。
たとえばこんなコード進行を見てください。
調号から「Key=D」ということがわかります。
「Key=D」のダイアトニックコードはこのようになります。
「G△7」は「Ⅳ」で、「D△7」は「Ⅰ」ということがわかります。
ということでモードはこうなります。
転調していなければこのようにアイオニアンかリディアンか分析するのは簡単です。
難しいのはそのキー以外の「△7」が出てきた場合です。
たとえばこのようなコード進行です。
「Key=C」なので「C△7」はトニックです。
ということはモードは「アイオニアン」です。
「Dm7」は「Ⅱ」なので「ドリアン」、「G7」は「Ⅴ」なので「ミクソリディアン」です。
問題は「B♭△7」と「A♭△7」です。
「アイオニアン」か「リディアン」どちらなのでしょう。
まず「B♭アイオニアン」と「B♭リディアン」を比べてみましょう。
違いは「♭ミ」なのか「♮ミ」なのかということです。
前後のコードはどちらも「C△7」でありモードは「Cアイオニアン」なので、この場合は「B♭リディアン」のほうがより音の変化が少ないことがわかると思います。
「Cアイオニアン」に含まれる「ミ」は「♭」ではなく「♮」だからです。
といわけでここの「B♭△7」には「B♭リディアン」を使うのです。
では「A♭△7」はどうでしょう。
前のコードは「Dm7」で後のコードは「G7」です。
どちらも「Key=C」です。
これを見るとわかるようにやはり「A♭リディアン」のほうが「A♭アイオニアン」より「Key=C」に近いことがわかります。
というわけで「A♭△7」でも「A♭リディアン」を使うほうが自然です。
ではそれでちょっとしたアドリブをやってみましょう。
2小節めの「B♭△7」では「B♭リディアン」の特性音であるナチュラルの「ミ」の音、そして5小節めの「A♭△7」では「A♭リディアン」の特性音であるナチュアラルの「レ」の音を使っています。
いまのサンプルではどちらも「リディアン」でしたが、こんな場合もあります。
一時的転調ではなく、このように調号を使って転調している場合はどうでしょう。
先ほどは「Key=C」の中に出てきた「B♭△7」では「B♭リディアン」を使いました。
このコード進行の場合、最初のKeyは「C」ですが「B♭△7」が出てくる小節は調号が変わっています。
「♭」が2つの調号ということは「Key=B♭」です。
そうすると「B♭△7」は「Ⅰ」のトニックということになるので「アイオニアン」を使うことになります。
モード的な使い方
ここまで普通の曲の分析をしてきましたが、ここからは、はじめに言った2つの使い方の1つである「モード的発想の曲に使う方法」を紹介しましょう。
「アイオニアン」はメジャースケールと同じなので、いわゆるモード的なサウンドには聞こえません。
これまでの動画でもメジャースケールについてはいろいろ説明してきましたので、ここでは「アイオニアン」は省きます。
しかし「リディアン」は特徴的なサウンドを持っているので、メジャースケールで作るものとは違うフレーズが作れます。
何度も言いますがリディアンの特徴は【#11th】が含まれていることです。
この特性音を使わなければ「アイオニアン」か「リディアン」かを特定できません。
たとえばこんなサンプルを作ってみました。
「Cリディアン」っぽさを強く出すためには「C△7」だけで作るのが一番でしょう。
コードを変えるとそのたびにモードは変わるので「リディアン」っぽさは薄れてしまいます。
コードを変えたいのなら「C」を「ベースペダルポイント」にしておくと「リディアン」の雰囲気を出しつつ変化を与えることもできます。
たとえばこんな感じです。
上段が「メロディー」で、下段は「ピアノの右手」になっています。
コードは動いていますが「Cペダル」なので「C△7」にテンションが入ったりなくなったりしているように聞こえます。
「リディアン」にはアボイドノートがないため、どの音をコードに入れても大丈夫です。
極端な話、7つ全てを同時に弾いてもぶつかることはありません。
「C△7」に【9th】【#11th】【13th】が入ったコードになります。
部分的に使う
曲の中でモードを使う場合、何も一曲通してずっとモードで作る必要はありません。
例えばAメロは「リディアン」のみで作り、Bメロは普通のコードで作ったりするのもいいでしょう。
最初の8小節は「リディアン」のみで、9小節めから普通のコードで作ってみました。
9小節めから急に世界が変わった感じがして面白いと思います。
まとめ
今回は「アイオニアン」と「リディアン」について説明してきました。
「アイオニアン」はようするにメジャースケールなので特に変わったサウンドにはなりませんが、「リディアン」は独特のサウンドがあり使い方によってはとても面白いメロディーが作れます。
では簡単にまとめてみましょう。
1.「Ⅰ」の「△7」には「アイオニアン」、「Ⅳ」の「△7」には「リディアン」を使う。
2.「アイオニアン」と「リディアン」の違いは4番めの音が【4th】か【#11th】」である。そしてそれがそれぞれのモードの特性音となる。
3.そのキーの「Ⅰ」でも「Ⅳ」でもない「△7」が出てきて「アイオニアン」か「リディアン」か迷ったときは、基本的には元のキーと変化が少ない方のモードを選ぶ。
このコード進行の場合、「D♭△7」はもとのキーである「C」には出てこない。
「D♭アイオニアン」と「D♭リディアン」との違いは、4番めの音の「ソ」が「♮」なのか「♭」なのかである。
元のキーである「C」の「ソ」は「♮」である。
よって「♮」の「ソ」が含まれる「D♭リディアン」を選択するほうが自然である。
この3つさえマスターしておけばかなり役立つはずです。
最初のうちはモードの必要性について疑問を持つ方もたくさんいると思いますが、知っていて困ることは絶対にありません。
ぜひこの機会に覚えてみてはいかがでしょうか。
次回は「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」について解説します。
今回の解説動画はこちら↓