今回はいわゆる「モード」と言われているものを紹介します。
モードに関しては情報量が多いので、4回に分けて説明しましょう。
今回は【Part1】ということでモード全体の説明、【Part2】からはそれぞれのモードをひとつずつ紹介していこうと思います。
モードとは
モードは「チャーチモード」とか「グレゴリアンモード」と呼ばれることもあります。
文字通り聖歌などに用いられていたものです。
「チャーチモード」の中には7つのモードがあります。
さっそく見てみましょう。
まずは「Key=C」のダイアトニックコードを見てください。
そしてこのコードそれぞれにスケールがひとつずつ対応します。
日本ではこのようにカタカナで書くことのほうが多いでしょう。
「Ⅱ」Dorian(ドリアン)
「Ⅲ」Phrygian(フリジアン)
「Ⅳ」Lydian(リディアン)
「Ⅴ」Mixolydian(ミクソリディアン)
「Ⅵ」Aeolian(エオリアン)
「Ⅶ」Locrian(ロクリアン)
最初この7つのモードは対等に使われていたのですが、この中から「アイオニアン」と「エオリアン」、今でいうメジャースケールとマイナースケールが主に使われるようになり、長調・短調の音楽に変わっていきました。
そして他のモードはあまり使われなくなっていきます。
しかし1960年から70年代頃にかけて、ジャズやポップスなどでは長調や短調ではない響きを求めてまたモードを使う動きが出てきました。
Miles Davisなどがその代表です。
メジャースケールやマイナースケールにはない独特な雰囲気を出すのにモードはとても効果的です。
ちなみに「オルタードスケール」「コンビネーションオブディミニッシュスケール」「ホールトーンスケール」など他にもスケールは多数ありますが、これらはモードではありません。
モードで分析する
モードの雰囲気を生かした曲を作るというのとはまた別に、普通のポップスなどを分析するときにも使われます。
転調がなく、そのキーのダイアトニックコードだけでできている曲にはそんな分析は必要ないでしょう。
たとえば「Eフリジアン」も「Fリディアン」も結局「Cメジャースケール」を並び替えたものなので、ようするに「ドレミファソラシド」を使っていれば困ることはありません。
しかしそのキーにはないコードが使われ一時的転調などがある場合は、モードで分析するとどのようなスケールを使って作曲したりアドリブすればいいのかがとてもわかりやすくなります。
たとえばこれを見てください。
【Dm7-G7】という【Ⅱ-Ⅴ】からすぐ「Ⅰ」には解決せず、「D♭△7」にいってから「C」に解決するコード進行です。
「Dm7」「G7」「C」は「Key=C」の中のコードですから、それぞれ「ドリアン」「ミクソリディアン」「アイオニアン」とわかるのですが、「D♭△7」はなにを使えばいいのでしょう。
△7コードに使えるのは「アイオニアン」と「リディアン」しかないので、このどちらかということになります。
ではフレーズを入れて聞き比べてみましょう。
まずは「アイオニン」です。
次は「リディアン」にしてみましょう。
違いは「ソ」の音に「♭」がつくかつかないかだけです。
1音違うだけでかなり雰囲気が違いますね。
「リディアン」のほうがしっくりくるのがわかるでしょうか。
では次はこれを見てください。
「Key=C」ですから「F△7」は「Ⅳ」、「C△7」は「Ⅰ」です。
「Ⅳ」は「リディアン」、「Ⅰ」は「アイオニアン」を使います。
「Fm7」は「Key=C」の中には出てこない「サブドミナントマイナー」です。
m7コードに使うスケールは「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」の3つがあります。
これもフレーズを入れて聞き比べてみましょう。
まずは「ドリアン」です。
次は「フリジアン」です。
そして「エオリアン」です。
どれが合うように感じたでしょうか。
結論から言えば「サブドミナントマイナー」には「ドリアン」を使います。
「サブドミナントマイナー」というのは同主調(Key=CとKey=Cmの関係)の「サブドミナント」を借用したものです。
「Key=Cm」は「♭」が3つ付いています。
「Key=E♭」と同じですね。
「Cm」のスケールトーン7thコードを並び替えると、そのまま「E♭」のスケールトーン7thコードになります。
「Fm7」は「Ⅱ」に現れます。
「Ⅱ」に使うスケールなので、当然「ドリアン」を使うというわけです。
聞き比べるとわかると思いますが、「フリジアン」や「エオリアン」では少し違和感がありますね。
違和感がよくわからないという人も別に気にする必要はありません。
理論的に「ドリアン」を使うということを知り、そして実際に使っているうちになんとなくわかってくると思います。
【ただ単にそれしか知らずに使ってしまった「エオリアン」】と【ほんとは「ドリアン」を使うとわかっているんだけど、あえてここは「エオリアン」にしてみようと思って使う「エオリアン」】は説得力が違ってきます。
クライアントなどから「なんかちょっと変だな」と言われても、知識があればすぐに「ドリアン」に戻すことができます。
モードの覚え方
このように、そのキー以外のコードが出てきたときにどのスケールを使えばいいか即座にわかればアドリブや作曲に非常に有利です。
ぜひこの機会に覚えてしまいましょう。
あらためてもう一度見てみましょう。
「Ⅰ」だけはなぜか「アイオニアン」と言ったり「イオニアン」と言ったりします。
どちらも間違いではありません。
「ア」イオニアン
「ド」リアン
「フ」リジアン
「リ」ディアン
「ミ」クソリディアン
「エ」オリアン
「ロ」クリアン
覚え方としてよくあるのが、それぞれの頭文字をとって「アドフリミエロ」または「イドフリミエロ」と呪文のように覚えてしまうというものです。
しかし最終的には「Ⅳ」は「リディアン」、「Ⅱ」は「ドリアン」などと即座に出てくるようにしてください。
ポップスなどを分析するときにどのモードを使えばいいか迷うのは「△7」と「m7」です。
「ドミナント7th」は「ミクソリディアン」しかないですし、「m7(♭5)」は「ロクリアン」しかありません。
しかし「△7」には「アイオニアン」と「リディアン」、「m7」には「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」があるので、その中のどれなのかを特定できなければなりません。
ようするに「△7」なら「Ⅰ」なのか「Ⅳ」なのか、「m7」なら「Ⅱ」なのか「Ⅲ」なのか「Ⅵ」なのか度数がわかればいいということです。
【Part2】からそのような「分析のしかた」と「それぞれのモードの雰囲気」などを解説していきたいと思います。
まとめ
というわけで今回は「モード」をざっと見てきました。
まずは「Ⅰ」から「Ⅶ」までのダイアトニックコードに対応するモードを覚えましょう。
モードを理解するということは、最初は無意味に感じるかもしれません。
しかしもっと深い知識を得るためには必ず必要となります。
そして知っていて損することは絶対にありません。
知っている理論を使わないことは簡単ですが、知らない理論を使うことはできません。
全てを知った上で使うか使わないかを選択できることが重要なのです。
ぜひマスターしてください!
今回の解説動画はこちら↓