今回は【モードPart3】ということで「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」を解説していきたいと思います。
【Part1】と同じく、まずコード進行などの分析に使用する方法、そして後半はモード的なメロディーを作る方法について紹介しましょう。
それぞれの特徴
「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」の3つとも「m7コード」で使うモードです。
まず「Key=C」のダイアトニックコードとそのモードを見てください。
ダイアトニックコードの中にあらわれる「m7」は「Ⅱ」の「Dm7」、「Ⅲ」の「Em7」、「Ⅵ」の「Am7」の3つがあります。
そのキーにおいて「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅵ」は必ず「m7」になります。
そしてそれぞれのモードがこれです。
「Key=C」ならば「Dm7」には「Dドリアン」、「Em7」には「Eフリジアン」、「Am7」には「Aエオリアン」がそれぞれ対応します。
言い方を変えると「Ⅱ」には「ドリアン」、「Ⅲ」には「フリジアン」、「Ⅵ」には「エオリアン」ということです。
ちなみに「エオリアン」は「ナチュラルマイナースケール」と全く同じです。
たとえば「Key=F」ならこうなります。
しかしこれではただそのキーの「メジャースケール」を並び替えただけにしか見えません。
それぞれの特徴も見えにくいでしょう。
そこでルートを統一して見てみましょう。
全てルートを「C」にしてみました。
もちろんコードはすべて「Cm7」です。
「Cドリアン」ということは「Cm7」が「Ⅱ」であるいうことなので「Ⅰ」は「B♭」、ようするに「Key=B♭」ということになります。
「Cフリジアン」は「Cm7」が「Ⅲ」なのですから「Ⅰ」は「A♭」なので「Key=A♭」、「Cエオリアン」は「Cm7」が「Ⅵ」なので「Ⅰ」は「E♭」、「Key=E♭」ということです。
モードの特性音
それぞれのモードの違いをわかりやすくするために、調号ではなく臨時記号で書いてみます。
こうすると違いがよくわかります。
この3つのモードの違いは、2番めの「レ」と6番めの「ラ」だけです。
「Cフリジアン」だけが「♭レ」になり、「Cドリアン」だけが「♮ラ」になっています。
2番めと6番めを弾かなければそのモードっぽさは出ません。
というわけでこれらが特性音ということになります。
「ドリアン」の特性音は6番めの音
「フリジアン」の特性音は2番めの音
「エオリアン」の特性音は6番めの音
特性音はメロディーに使うとそのモードっぽさが出ます。
しかしその特性音がアボイドノートである場合もあります。
「ドリアン」の特性音である6番めの音は【6th】または【13th】の音なので、コードに入れることができます。
しかし「フリジアン」の特性音である2番めの音は【♭9th】、「エオリアン」の特性音である6番めの音は【♭13th】です。
【♭9th】も【♭13th】も「m7コード」にテンションとして使うことはできません。
ようするにアボイドノートです。
これらはコードに入れることはできませんが、メロディーに使うことはできます。
しかしあまり長い音価で使うとぶつかっているように聞こえてしまいます。
曲の分析やアドリブで使うモードを考えたりするときは、それほど特性音を気にする必要はありません。
曲の中で出てくる「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅵ」の「m7」にわざわざモードっぽさを出そうと考えることはないでしょう。
後半で説明しますが、いわゆる「モードを使った作曲」などのときには特性音がとても重要になってきます。
コード進行における分析
では具体的なコード進行で見てみます。
まずはこれを見てください。
いわゆる【イチ-ロク-ニ-ゴ】と言われるコード進行です。
このサンプルでは「Ⅴ」のあと「Ⅰ」に解決して終わっています。
これは全て「Key=C」の中のコードなので、分析も簡単です。
今回は「m7コード」に使うモードの話なので「m7」だけに注目します。
2小節めの「Am7」は「Ⅵ」のコードなので「エオリアン」、3小節めの「Dm7」は「Ⅱ」のコードなので「ドリアン」です。
【Dm7-G7】は「Key=C」の【Ⅱ-Ⅴ】ですが、一時的転調で他のキーの【Ⅱ-Ⅴ】が出てきたときも「Ⅱ」は「ドリアン」と覚えておきましょう。
例えばこのような進行です。
3〜4小節めの【F#m7-B7】は「Key=E」の【Ⅱ-Ⅴ】です。
ということはここでの「F#m7」は「ドリアン」を使うことになります。
今回のモードとは関係ないのですが、5小節めからちょっと変わったコード進行になっています。
これは「△7コード」のままトニックに向かって半音ずつ下りてきているだけです。
さて、【Ⅱ-Ⅴ】の「Ⅱ」には「ドリアン」を使うと説明しました。
しかし、このような場合は少し考えなければいけません。
2小節めの【Em7-A7】は「Key=D」の【Ⅱ-Ⅴ】です。
しかし「Em7」は「Key=C」の「Ⅲ」でもあり、この【Ⅱ-Ⅴ】から解決するコードも「Key=C」の「Ⅱ」である「Dm7」です。
このような場合の「Em7」は「Key=C」の「Ⅲ」と考え、「フリジアン」を使うのが一般的です。
しかし、この上の段のように【Em7-A7】が「D△7」に解決する場合は、「Eドリアン」でも「Eフリジアン」でもかまいません。
「Em7」から転調感を出したいなら「Key=D」である「Eドリアン」、「A7」から転調感を出したいなら「Em7」はまだ「Key=C」のままの「Eフリジアン」を使います。
しかし下の段のように調号がある場合は、「Em7」から「Key=D」に転調するということなので、「Eドリアン」しか選べません。
ではまた先ほどの譜面に戻ります。
3小節めの【Dm7-D♭7】という進行があります。
これは【Dm7-G7】という【Ⅱ-Ⅴ】の「Ⅴ」である「G7」を裏コードの「♭Ⅱ7」である「D♭7」にしたものです。
このように裏コードを使った場合も元は【Ⅱ-Ⅴ】なので、ここでの「Dm7」も「Dドリアン」を使います。
では次のサンプルを見てみましょう。
「Am7」は「Key=C」の「Ⅵ」なので、「Aエオリアン」を使います。
「Fm7」は「Key=C」の中には出てこないコードです。
これは「サブドミナントマイナー」です。
【Part1】でも説明しましたが、ここでも簡単に説明しましょう。
「サブドミナントマイナー」というのは、マイナーキーのサブドミナントからの借用です。
元のキーが「C」なら同主調である「Cm」のサブドミナントである「Fm7」が「サブドミナントマイナー」です。
「Key=Cm」は「Key=E♭」と調号が同じ平行調です。
「Fm7」は「Key=E♭」の「Ⅱ」のコードなので、「ドリアン」を使うというわけです。
サブドミナントマイナーは「ドリアン」と覚えてしまいましょう。
モード的なメロディーを作る
では、コード進行の分析などに使うのとはまた違うモード的なメロディーを作ってみましょう。
「エオリアン」は「ナチュラルマイナースケール」と全く同じなのでここでは省きます。
興味のある方はマイナースケールの記事をご覧下さい↓
ドリアン
まずは「ドリアン」からです。
「ドリアン」はモードの中でも特によく使われると言っていいでしょう。
Jazzなどでは「ドリアン」だけで作られている曲も多数あります。
Jazz以外にもこんな曲でも使われたりしています。
では今回は「Dドリアン」でやってみましょう。
特性音は【6th】である「シ」の音です。
モード的なメロディーを作る場合は、この特性音を多めに使わなければそのモードっぽい雰囲気は出ません。
「Dエオリアン」と比べてみましょう。
「Dドリアン」と「Dエオリアン」の違いは、6番めの音が「シ」なのか「♭シ」なのかというだけです。
ですから「シ」を積極的に使ったほうがいかにも「Dドリアン」といった雰囲気になります。
コードは当然「Dm7」ですが、「ドリアン」にはアボイドノートがないため、モードの中のどの音をどういう風に積んでも外れることはありません。
たとえばこんな感じです。
「Dドリアン」の中の音を自由に積んでいます。
もちろんルートは「D」でなければなりませんが、上に積む音はモード内の音ならなんでもかまいません。
これをリズムに合わせて順番に弾いてみます。
3度で積んだり4度で積んだり「クラスターボイシング」にしたり、といろいろやってみましたが、どれもおかしくはないはずです。
ではいまのバッキングに「ドリアン」で簡単なアドリブをしてみます。
特性音の「シ」の音がいかにも「ドリアン」といった感じを出していますね。
フリジアン
ではつぎは「フリジアン」です。
「Eフリジアン」でやってみましょう。
特性音は2番めの音で、【Root】から見ると【♭9th】の音です。
ちょっとスパニッシュっぽい響きもありますね。
「エオリアン」と比べてみましょう。
違いは2番めの音だけです。
「フリジアン」では「♭9」、「エオリアン」では「♮9」になります。
この音を弾かなければ「エオリアン」なのか「フリジアン」なのか区別がつきません。
しかし「フリジアン」の特性音である【♭9th】は「m7コード」においてはアボイドノートです。
「m7コード」に「♭9」というテンションを入れることはできません。
入れるとこんな風になってしまいます。
かなりぶつかって聞こえるのがわかると思います。
フレーズにおいてもあまり長く延ばすとぶつかって聞こえてしまいます。
しかし使わなければ「フリジアン」っぽさも出ないので難しいところです。
6番めの音もルートから見ると【♭13th】なのでアボイドノートです。
使えるテンションは【11th】だけということになります。
しかしこのように「E」を「ベースペダルポイント」にすると、アボイドである「ファ」を入れることもできます。
「F/E」というコードはとても「フリジアン」っぽい響きですね。
「G/E」は構成音からいうと「Em7」なのですが、上にのるコードの【Em-F-G】という動きを強調するため、あえて「G/E」と書いてあります。
ではそんな感じのピアノバッキングにメロディーを乗せてみましょう。
「Eフリジアン」の特性音である「ファ」を多用することにより、いかにも「フリジアン」といったサウンドになっていると思います。
では違いを見るためにこのサンプルを「Eエオリアン」にしてみましょう。
「フリジアン」のときに「ファ」だったところを全部「#ファ」にしました。
コードはいろいろ変えていますが、「エオリアン」の中のテンションである【9th】と【11th】をところどころ加えただけです。
せっかくなので「ドリアン」にもしてみました。
「フリジアン」と比べると「ファ」と「ド」が「#ファ」「#ド」になっています。
もちろんバッキングのコードも「ファ」や「ド」は使っていません。
このように同じフレーズを使ってモードを変えると、それぞれサウンドの違いがよくわかるのでいろいろ試してみるといいでしょう。
まとめ
1.「Ⅱ」には「ドリアン」、「Ⅲ」は「フリジアン」、「Ⅵ」は「エオリアン」を使う。
2.「ドリアン」の特性音は【6th】、「フリジアン」は【♭2nd】(♭9th)、「エオリアン」は【♭6th】(♭13th)である。
3.「サブドミナントマイナー」には「ドリアン」を使う。
というわけで今回はダイアトニックコードに使うモードである「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」について説明しました。
特に「ドリアン」などはモード的な曲にもよく使われるので、いろいろ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓