今回は「△7(#5)」というコードとそれに対応するスケールを紹介したいと思います。
そんなに頻繁に出てくるようなコードではないのですが、だからこそ人とはちょっと違ったお洒落なサウンドが出せます。
ぜひこの機会にマスターしてみてはいかがでしょう。
はじめに
「△7(#5)」は文字通り、「△7」の【5th】の音が半音上がったものです。
ルートを「C」にして見てみましょう。
ちょっと不思議なサウンドですね。
これだけではどう使うのかさっぱりわからないと思うので、順番に説明していきましょう。
△7(#5)のなりたち
このコードは「メロディックマイナースケール」(ジャズマイナースケール)と「ハーモニックマイナースケール」上に出てきます。
キーを「Am」にして見てみましょう。
どちらのスケールにも「Ⅲ」の位置に「C△7(#5)」があります。
厳密に「メロディックマイナースケール」のみ、「ハーモニックマイナースケール」のみで曲を作るなら「C△7」ではなく「C△7(#5)」でなくてはいけません。
しかし実際は「C△7」を使うことのほうが多いでしょう。
これはずっと1つのスケールを使っているわけではなく「ナチュラルマイナースケール」を使ったり、もしくは一時的に同主調であるメジャーキー(元がKey=AmであればKey=C)に転調していることが非常に多いからです。
コード進行の中でみる△7(#5)
ではこんなコード進行を見てください。
3〜4小節めは「Key=C」とも言えますし「Aナチュラルマイナースケール」とも言えます。
しかしこの4小節めの「C△7」を「ナチュラルマイナー」には出てこない「C△7(#5)」に変えてかまいません。
このサンプルは簡単なメロディーをつけていますが、「C△7」のところでは【5th】の音を使っていないので「C△7」でも「C△7(#5)」でもメロディーとぶつかることはありません。
好みではありますがちょっとおしゃれなサウンドになってるような気がしませんか。
この譜面では4声のボイシングで書いてありますが、ルートを左手にして右手を3声にすると【C△7(#5)-F△9】という進行がとても綺麗に響く理由がわかります。
「F△9」を「F△7」にして【C△7(#5)-F△7】という進行で見てみましょう。
右手の3声が「E」と「Am」になっています。
【E-Am】というのはドミナントモーションなのでとても自然な進行です。
ルートの【C-F】も単音なのでドミナントモーションとは言いませんが、5度下がる動きなのでとても自然です。
というわけで【C△7(#5)-F△7】のほうが【C△7-F△7】よりもむしろ自然な進行のようにも感じます。
△7(#5)に対応するスケール
では「△7(#5)」に対応するスケールを考えてみましょう。
「△7(#5)」は「メロディックマイナースケール」と「ハーモニックマイナースケール」上に表れるので、それぞれ1つずつ見ていきます。
ではまず「Aメロディックマイナースケール」をもう一度見て下さい。
「△7(#5)」は「メロディックマイナー」のダイアトニックコードの「Ⅲ」の位置に出てきます。
「Aメロディックマイナー」上の「Ⅲ」は「C△7(#5)」です。
そこで「C」の音をルートにして並び替えてみましょう。
これは「リディアン#5スケール」とか「リディアン・オーギュメント・スケール」などと呼ばれるものです。
こうして「リディアン」と並べてみると違いがわかりやすいと思います。
この例だと「Cリディアン#5スケール」と「Cリディアンスケール」なので【5th】である「ソ」の音が変わってきます。
「Cリディアンスケール」の【5th】である「ソ」の音が半音上がって「#ソ」になったものが「Cリディアン#5スケール」というわけです。
その他の音は全て同じです。
では「△7(#5)」が出てくるもう1つのスケールである「ハーモニックマイナースケール」も見てみましょう。
「Aハーモニックマイナースケール」です。
これも「Ⅲ」の位置に「C△7(#5)」があります。
これを「C」から並び替えてみましょう。
これは「アイオニアン#5スケール」または「アイオニアン・オーギュメント・スケール」などと呼ばれています。
これも「アイオニアン」と比べてみましょう。
これも違いは【5th】の音だけです。
「Cアイオニアンスケール」の【5th】である「ソ」が半音上がって「#ソ」になったのが「Cアイオニアン#5スケール」です。
フレーズでの使用例
では実際にこれらのスケールを使ってみましょう。
まずは「Cリディアン#5スケール」です。
「Dm9」は「Dドリアン」
「G7(♭9.♭13)」には「Gオルタード」
「C△7(#5)」には「Cリディアン#5」
「F△7」には「Fリディアン」
「Bm7(♭5)」には「Bロクリアン」
「E7(♭9.♭13)」には「Eハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」
を使用しています。
6小節めの最後の音である「シ」からコードは「Am9」になっています。
「Am9」は理論的にいうと「Aエオリアン」ですが、ここではブルーノートを使ったフレーズになっています。
8小節めは【6th】の「#ファ」がコードに使われているので、スケールでいえば「Aメロディックマイナー」(Aジャズマイナー)ということになります。
コードも「Am6.9」ということになります。
2小節めはフレーズこそ「ファ」も「ソ」も入ってはいませんが、コードは「G7」なのでルートは「ソ」ですし【7th】にあたる「ファ」の音も入っています。
そして3小節めでいきなり「ファ」にも「ソ」にもシャープがつきます。
4小節めはメロディーにもコードにも「ソ」はありませんが、ルートはまたナチュラルの「ファ」に戻ります。
ようするに1小節おきに「ファ」と「ソ」がシャープになったりナチュラルになったりするのですが、違和感はそれほどないと思います。
では次は「アイオニアン#5」にしてみましょう。
「C△7(#5)」以外はコードもメロディーも先ほどのサンプルとまったく同じです。
3小節めは先ほど「Cリディアン#5」を使っていたところを「Cアイオニアン#5」にしてあります。
2つを並べて見ると違いがよくわかります。
違いは「ファ」がシャープするかしないかというところだけです。
前後の小節は「ファ」がナチュラルなので「アイオニアン#5」のほうが自然に聞こえるかもしれません。
これは好みになりますので「Cリディアン#5」でも「Cアイオニアン#5」でも好きなほうを使って大丈夫です。
まとめ
1.「△7(#5)」は「メロディックマイナースケール」(ジャズマイナースケール)上と「ハーモニックマイナースケール」上のどちらにもそれぞれ「Ⅲ」の位置に表れる。
2.「△7(#5)」に対応するスケールは「リディアン#5スケール」、または「アイオニアン#5スケール」である。
というわけで今回はちょっとマニアックなコード、「△7(#5)」とそれに対応するスケールを紹介しました。
「メロディックマイナー」「ハーモニックマイナー」に表れるコードではありますが、それだけにこだわらず「△7コード」を「△7(#5)」にしてみると面白い結果が得られるかもしれません。
ぜひいろいろ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓