今回は「ロクリアン#2」というスケールを紹介したいと思います。
この「Dm7(♭5)」のところで使っているスケールが「ロクリアン#2」です。
あまり頻繁に使うようなスケールではありませんが、うまくハマればとてもかっこいいサウンドになるのでぜひマスターしてみてください。
スケールのなりたち
このスケールはメロディックマイナー上にあらわれます。
Aメロディックマイナー上のダイアトニックコードはこのようになります。
それぞれのスケールを見てみましょう。
あまり見かけないスケールが並んでいます。
この中でよく使われるのは「リディアン#5スケール」、「リディアン7thスケール」、「オルタードスケール」でしょうか。
「リディアン#5スケール」「リディアン7thスケール」の記事はこちら↓
そして「Ⅵ」の「m7(♭5)」に対応するスケールが「ロクリアン#2」です。
別名「オルタード・ドリアン」ともいわれますが「ドリアン」というと「m7」といったイメージが強いので、「m7(♭5)」に使う「ロクリアン」という名前を使ったほうがピンとくるのではないでしょうか。
さて、「Key=Am」では「Ⅵ」は「F#m7(♭5)」なので「F#ロクリアン#2」を使うことになります。
ちょっとここで「ロクリアン」と比べてみましょう。
スケール名からもわかるように「ロクリアン」の2番目の音を半音上げたものが「ロクリアン#2」です。
「m7(♭5)」はメジャーキーの「Ⅶ」の位置にもあらわれます。
「Key=C」だとⅦは「Bm7(♭5)」です。
そして「Ⅶ」のコードに対応するスケールが「ロクリアン」でした。
これも並べてみてみましょう。
さっきと同じように2番目の音が違うだけです。
スケールの分析
ではわかりやすく「C」をルートにして、それぞれコードに対してどのような音になっているのか見てみましょう。
どちらも「m7(♭5)」に使うスケールなので【Root】【3rd】【♭5th】【7th】のコードトーンは当然同じです。
そして「m7(♭5)」に使えるテンションは【11th】と【♭13th】でした。
ロクリアン上にある【♭9th】はアボイドノートなのでテンションとして使うことはできません。
しかし「ロクリアン#2」では【♭9th】ではなくナチュラルの【9th】になります。
これが今回のポイントです。
簡単に言うと「ロクリアン#2」というスケールは「m7(♭5)」に【9th】を入れたいときに使うのです。
コードに【9th】を入れるというだけではなく、「m7(♭5)」上のアドリブなどに【9th】を使いたいときも「ロクリアン#2」を使うということになります。
「メロディックマイナー上のⅥのコードに使う」などと難しいことを考える必要はありません。
それは知識として知っていればいいことで実践では考えなくて大丈夫です。
コード進行でみる
「m7(♭5)」というと一番代表的な使い方はマイナーコードに解決する【Ⅱ-Ⅴ】の「Ⅱ」に使うというものです。
たとえば「Cm」に解決する【Ⅱ-Ⅴ】ならこうなります。
これに【9th】を入れてみましょう。
ちょっと外れたような妙な感じに聞こえますね。
これは「Dm7(♭5)」の【9th】である「ミ」の音が、解決先の「Cm9」にたいして【メジャー3rd】であり、もっとも合わない音だからです。
アウトっぽい感じを狙うならこれでも大丈夫です。
トップを【9th】にするのが気になるのなら内声に入れてしまってもかまいません。
トップノートを【9th】にするより落ち着いた感じになります。
このようなボイシングもおすすめです。
「Dm7(♭5)」に【9th】の「ミ」と【11th】の「ソ」を付加したコードです。
「Dロクリアン#2」に基づいたボイシングということになります。
【9th】も【11th】もスケールの中にありますね。
おしゃれなサウンドでかっこいいと思います。
さて、ここまでマイナーコードに解決する【Ⅱ-Ⅴ】で見てきましたが、メジャーコードに解決する【Ⅱ-Ⅴ】にもかっこよく使えます。
この「C△7」に解決する【Ⅱ-Ⅴ】の「Ⅱ」を「m7(♭5)」に変えてみましょう。
もともと【9th】が含まれているので【5th】の「ラ」の音を「♭ラ」にするだけです。
「Cm」に解決するときとは違って【9th】の「ミ」の音が解決先の「C△9」に含まれているのでとても自然な進行に聞こえます。
メロディーに使う
では次は【Dm7(♭5)-G7-Cm】というコード進行に「ロクリアン#2」を使ったメロディーを乗せてみましょう。
このようなコード進行だと「Ⅱm7(♭5)」には「ロクリアン」を使うのが一般的です。
これを「ロクリアン#2」にしてみましょう。
「Dm7(♭5)」のところの「♭ミ」が【9th】の「♮ミ」に変わっただけですが、かなり雰囲気が違って聞こえると思います。
これはもう好みなのでどちらを使ってもかまいません。
もう少し違うフレーズも見てみましょう。
1小節めの最後の3つの音が【ド-ミ-ソ】と「Cのトライアド」になっていますが、これなどは「ロクリアン#2」の雰囲気をとても出していると思います。
「G7」は「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」を使っています。
では次はマイナーコードではなく「C△9」に解決してみましょう。
このようなフレーズをでやってみましょう。
「Dm9」は「ドリアン」、「G7(♭9.♭13)」では「オルタード」を使っています。
この「Ⅱ」を「Ⅱm7(♭5)」にして「ロクリアン#2」を使ってみましょう。
「ロクリアン#2」ということでコードにも【9th】を付加してあります。
「ドリアン」とはずいぶん違うサウンドですが、これはこれでかっこいいと思います。
では最後に【Ⅱ-Ⅴ】をつなげたコード進行でサンプルを作ってみました。
まずコードを見てみましょう。
1、2小節めは【F#m7(♭5)-B7】というマイナーキーの【Ⅱ-Ⅴ】です。
そこから解決するべき「Em」をまた「Em7(♭5)」として新たに【Em7(♭5)-A7】という【Ⅱ-Ⅴ】を作ります。
そしてまた解決するべき「Dm」を「Dm7(♭5)」とし、また新たに【Dm7(♭5)-G7】という【Ⅱ-Ⅴ】を作り、最後は「C△9」で終わっています。
「Em7(♭5)」には「ロクリアン#2」に含まれる【9th】と【11th】を、「Dm7(♭5)」にも「ロクリアン#2」に含まれる【9th】を付加しています。
ではフレーズを見ていきましょう。
1小節めの「F#m7(♭5)」はテンションは入っていませんが、フレーズには【9th】である「#ソ」が使われているので「ロクリアン#2」ということになります。
「ロクリアン#2」は「m7(♭5)」に【9th】が入っているというのが特徴ですが、必ずしもコードに入れる必要はありません。
この1小節めのようにコードはただの「m7(♭5)」であってもフレーズに【9th】が入っていれば「ロクリアン#2」のサウンドはじゅうぶん出ます。
「B7」は「オルタードスケール」です。
「Em7(♭5)」はフレーズにも【9th】である「#ファ」と【11th】である「ラ」が使われています。
「A7」は「オルタードスケール」です。
「Dm7(♭5)」も【9th】である「ミ」と【11th】である「ソ」が使われているので、いかにも「ロクリアン#2」といったサウンドになっています。
そして「G7」が「オルタードスケール」です。
まとめ
1.「ロクリアン#2」は「m7(♭5)」に使うスケールである。
2.「ロクリアン」との違いは2番目の音が【9th】であるということ。
3.「ロクリアン#2」っぽさを出すためにはコードかフレーズのどちらか、または両方に【9th】を付加すること。
さいごに
今回はちょっとマニアックなスケールである「ロクリアン#2」を紹介しました。
今まで「m7(♭5)」を使っていたところに【9th】を加え「m9(♭5)」にしてみると、新たなサウンドが得られて面白いと思います。
コードは「m7(♭5)」のままでも「ロクリアン」の2番目の音を半音上げたフレーズを使ってみるのもかっこいいと思います。
ちょっと違和感を感じたり、好みではない場合も知識として知っておくといつか役立つかもしれません。
今回の解説動画はこちら↓