わちゃぴの音楽教室

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編曲 #21【コードを2階建てに!】アッパーストラクチャートライアド【Part3:ドミナント7thコードに使う】

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アッパーストラクチャートライアドの【Part3】ということで、今回はドミナント7thコードに使えるものを紹介していきたいと思います。

 

 

はじめに

今回も「Key=C」で見ていきます。

「Key=C」のドミナントは「G7」になります。

というわけで「G7」に乗せる「アッパーストラクチャートライアド」を見つけていきましょう。

 

ドミナント7thコードは使えるテンションの数が多いので、そのぶん「アッパーストラクチャートライアド」の種類も多くなります。

 

 「△7」で使えるテンションは【9th】【#11th(Ⅳに限る)】【13th】↓

 

 

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「m7」では【9th】【11th】【13th】↓

 

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でした。

 

しかし、ドミナント7thコードでは

【♭9th】【9th】【#9th】【#11th】【♭13th】【13th】

 

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これだけのテンションが使えます。

この6つのテンションが少なくとも1つ含まれていて、AvoidNoteが含まれないものをこの24個のトライアドの中から見つけていきましょう。↓

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ドミナント7thコードのAvoidNoteは【4th(11th)】【△7th】の二つです。

 

この中からAvoidNoteである【4th】の「ド」と、【△7th】の「#ファ」が含まれないトライアドを選び出します。↓

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この11個が条件に当てはまるトライアドです。

 

AvoidNoteはないですが、「Cメジャースケール」にはない音、ようするに「オルタードテンション」がたくさん含まれています。

ということは、そのようなトライアドを使ったときは「Cメジャースケール」は使えないということです。

それはそのつど説明していきましょう。

 

では、これら11個のトライアドがそれぞれ「G7」にたいしてどのようなテンションになっているのかひとつずつ見ていきます。

 

D♭を乗せる

まずは「D♭」を乗せてみましょう。

 

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「D♭7」だと「G7」の裏コードなのですが、今回はトライアドを使いたいので「D♭7」ではなく「D♭」になっています。

なので、トライトーンが共通であるという裏コードの条件は満たしていませんが、見つけ方としては、分母のコードの裏コードを乗せてそれをトライアドにするというのも簡単でいいかもしれません。

 

「G7」のテンションとしては【♭9th】と【#11th】が含まれます。

これに対応するスケールはこれです。

 

 

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「オルタードスケール」と「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」です。

「D♭/G7」という「アッパーストラクチャートライアド」を使ったときにメロディーを作ったりアドリブをする場合は、このどちらかのスケールにするのがよいでしょう。

 

E♭を乗せる

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「E♭」の構成音は「G7」にたいして【#9th】と【♭13th】が含まれています。

対応するスケールは「オルタードスケール」です。

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【#9th】は「マイナー3rd」の音と同じなので、しっかり【3rd】の「シ」の音を左手で鳴らさないと【#9th】のサウンドにはならないので注意しましょう。

 

Eを乗せる

 

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これは【♭9th】と【13th】が入ってくるので、スケールは「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」です。

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Aを乗せる

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【9th】【#11th】【13th】が入ってきます。

トライアドの3つの音全てがテンションということになります。

これは「オルタードスケール」でも「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」でもありません。

 

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この「リディアン7thスケール」が「A/G7」に対応するスケールです。

せっかくなのでこの「リディアン7thスケール」について少し説明しましょう。

 

リディアン7thスケール

名前でも想像できる通りこれは「リディアンスケール」が変化したものです。

「リディアンスケール」は「Ⅳ」のメジャー7thコードに使われるスケールです。

「Key=C」だと「F△7」に使われます。

 

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そしてこのリディアンの7番目の音を半音下げたものが「リディアン7th」です。

 

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7番目の音が【△7th】ではなくただの【7th】の音に変化しています。

というわけで、これは「F7」に使うスケールになります。

【9th】【#11th】【13th】が含まれていてドミナント7thコードに使うスケールはこれしかありません。

というわけで「A/G7」に対応するスケールは「Gリディアン7thスケール」ということになります。

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B♭を乗せる

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テンションは【#9】だけであとは【5th】と【7th】です。

スケールは「オルタードスケール」と「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」が対応します。

「オルタードスケール」には【5th】は含まれませんが、倍音で鳴っているのでコードに【5th】が含まれていたとしても使って大丈夫です。

 

では次はマイナートライアドを乗せてみましょう。

 

C#mを乗せる

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これもトライアドの音全てがテンションなので、けっこうテンション感が強いですね。

スケールは「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」です。

 

Dmを乗せる

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これはコードでいうと「G9」です。

普通は「Gミクソリディアンスケール」を使います。

 

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【5th】【7th】【9th】という構成音なら「リディアン7th」も可能なのですが、違和感はあるでしょう。

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ちょっとサンプルで比べてみましょう。

 

(上段:ミクソリディアン)↓

(下段:リディアン7th)↓

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やはり「Key=C」のときの「Dm/G7」は「リディアン7th」より「ミクソリディアン」のほうが自然なのがわかると思います。

 

Emを乗せる

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これもテンションが【13th】だけなので選択肢は3つあります。

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どのスケールにも「Em」の構成音である【ミ-ソ-シ】が含まれています。

この中では「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」がもっともテンション感が強くなります。

 

Gmを乗せる

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Gm」を乗せていますが、サウンド的に考えてこちらのほうがよさそうだったので転回してあります。

テンションは【#9th】だけです。

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となると対応するスケールはこの2つです。

 

A♭mを乗せる

 

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これも「A♭m」を転回してあります。

理論的に「♭ド」になっていますが、これは「G7」の【3rd】の「シ」の音です。

【♭9th】と【♭13th】が同時に含まれるスケールは「オルタードスケール」と「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」があります。

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しかし「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」は本来マイナーコードに解決するときに使うのが一般的なスケールです。

今回は「Key=C」ということで「C△7」に解決することを想定した「G7」なので、「オルタードスケール」のほうが合うでしょう。

 

B♭mを乗せる

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これは【#9th】と【#11th】が含まれています。

「オルタードスケール」と「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」が使えます。

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コード進行に使う

というわけでここまでひとつずつ見てきましたが、次は実際にコード進行の中で使ってみましょう。

このような進行でやってみます。

 

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「Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ」の「Ⅵ」を「Am7」から「A7」に変えた進行です。

「A7」は「Dm7」に進行するための「セカンダリドミナント」です。

これを「アッパーストラクチャートライアド」を使ってリハーモナイズしてみます。

 

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大げさに使ったのでかなりテンションがきつめな感じですね。

譜面のコードを元に、リズムを動かしたり転回したりしていろいろ動かしています。

 

【Part1】で紹介しましたが、「G/C△7」はコード的には「C△9」のサウンドです。

3小節めの「Dm7」に使ったのは【Part2】で紹介した元のコード「Dm7」の【5th】からのマイナートライドである「Am」です。

7小節めは「G/Dm7」も加えて動きを出しました。

【Am-G】となめらかに進行していると思います。

2小節めの「B♭m/A7」はサウンド的には「A7(♭9.♭13)」です。

対応するスケールは「オルタードスケール」と「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウスケール」です。

ここでの「A7」は「Dm7」というマイナーコードに解決するドミナントなので「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウスケール」も違和感なく使えると思います。

「E♭/G7」は「G7(#9.♭13)」のサウンドです。

これも「オルタードスケール」になります。

6小節めの「F/A7」は「A7(#9.♭13)」のサウンドになり、これも「オルタードスケール」が合います。

8小節めの「D♭/G7」は「G7(♭9.#11)」のサウンドで、これには「オルタードスケール」と「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」のどちらでも使えます。

「E/G7」は「G7(♭9.13)」のサウンドなので、対応するスケールは「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」です。

最後は「アッパーストラクチャートライアド」ではなくあえて「C△9」にしました。

 

このように、元のコードにテンションを加えるといった意味で自由に「アッパーストラクチャートライアド」にしてかまいません。

もちろん曲調やメロディーにもよりますが、選択肢として試してみるのもいいと思います。

 

フレーズに使う

ではアドリブフレーズに使ってみましょう。

バッキングのコードは「アッパーストラクチャートライアド」ではないですが、アドリブは「アッパーストラクチャートライアド」の分散的なフレーズを多用しています。

 

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4ビートのアドリブといった感じにしてみました。

これもかなり大げさに「アッパーストラクチャートライアド」を使っています。

 

2小節めの「G7」は「A♭mとD♭のトライアド」を2拍ずつ使ってみました。

スケール的に分析するなら「Gオルタードスケール」ということになります。 

3小節めの「C△7」では「Gのトライアド」を使っています。

4小節めの「F△7」も3拍めから「Gのトライアド」を使いました。

6小節めの「E7」では2拍めが「B♭のトライアド」、3・4拍めが「Cのトライアド」です。

「B♭トライアド」も「Cトライアド」も含まれているのは「Eオルタードスケール」です。

3段め2小節めの「G7」では、1・2拍めが「Aのトライアド」、3・4拍めが「A♭mのトライアド」です。

4段めの「Bm7(♭5)」では3・4拍めが「Gのトライアド」です。

同じく4段めの「E7」では「Fmのトライアド」を使っています。

これも分析するなら「Eオルタードスケール」になります。

 

これだけ「アッパーストラクチャートライアド的なフレーズ」を多用すると、かなりテンション感が強くJazzっぽいフレーズになってしまいます。

きつすぎると感じる場合はもっと少なめに使えばいいでしょう。

 

まとめ

というわけで、今回はドミナント7thコードに使える「アッパーストラクチャートライアド」を説明してきました。

かなり種類が多かったので全部一気に覚えるのは大変でしょう。

そこで見つけやすくかっこいいおすすめをいくつか厳選してまとめてみました。

 

1. 半音上のマイナートライアド

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「D7」なら「E♭m」を乗せて「E♭m/D7」に・・・

「A♭7」なら「Am」を乗せて「Am/A♭7」に・・・

 

【♭9th】と【♭13th】が入っているので「オルタードスケール」に合います。

※「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウスケール」も使えますが、これは【E♭m/D7→Gm】のようにマイナーコードに解決するときのほうが合うでしょう。

 

2. 5thの半音下からのメジャートライアド

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「E7」なら「B♭」乗せて「B♭/E7」に・・・

「F#7」なら「C」を乗せて「C/F#7」に・・・

 

裏コードをトライアドにしたものです。

たとえば「E7」の裏コードは「B♭7」ですが、それを「B♭」というトライアドにしたということです。

【♭9th】と【#11th】が含まれているので「オルタードスケール」にも「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」にも合います。

 

3. 5thの半音上のメジャートライアド

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「F7」なら「D♭」を乗せて「D♭/F7」に・・・

「A7」なら「F」を乗せて「F/A7」に・・・

 

【#9th】と【♭13th】が入っているので「オルタードスケール」に合います。

 

4. 5thの全音上のメジャートライアド

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「C7」なら「A」を乗せて「A/C7」に・・・
「E♭7」なら「C」を乗せて「C/E♭7」に・・・

 

【♭9th】と【13th】が入っているので「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」に合います。

 

さいごに

「アッパーストラクチャートライアド」とは、そのコードに使えるスケールの中からトライアドを選び出したものです。

同じスケールでもその中からいくつかの音だけを弾くことにより、全然違った雰囲気を出せることがわかったと思います。

なにもスケールの音を全部使わなければいけないわけではありません。

厳選して使うことによりとても面白い効果が得られるので、コードバッキングにもアドリブにもぜひいろいろ試してみてください!

 

今回の解説動画はこちら↓