「天才たちのエンディング」シリーズ、今回はOscar Petersonのフレーズを紹介します。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
これは『Cheek To Cheek』という曲でのエンディングです。
今回はフレーズというよりもコードの流れがとても参考になると思います。
4小節めの左手は、Oscar Petersonのようにかなり手が大きくないと弾けないでしょう。
しかしこのシリーズの趣旨としてはコピーが目的ではないので、この通りでなくてもいいと思います。
フレーズ分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
この曲は「Key=A♭」ですから、基本的にはこのように【Ⅱ-Ⅴ- Ⅰ 】で終わるのが普通でしょう。
しかし今回のフレーズはこのような進行になっています。
03の音と譜面
【Ⅴ】からすぐ【 Ⅰ 】には解決せずに【♭Ⅱ△7-♭Ⅴ7】と進行してから【 Ⅰ 】に解決します。
ではまず1、2小節めの【Ⅱ-Ⅴ】だけを見てみましょう。
左手は基本的なコードや「ルートと5th」などしか弾いていないため、今回は右手だけを解説します。
「B♭m7」の【5th】から入り、半音下がってまた戻ります。
「♮ミ」 は調性外の音ですが、これはただのクロマチックアプローチと解釈します。
次に【3rd】から入り、半音下がって戻ります。
そして2小節めの1、2拍も「B♭m7」です。
【Root】を弾いたあと【5th-7th】と弾きます。
そのあとの「ド」は「E♭9」の【13th】と解釈するほうがいいでしょう。
そして「E♭」の【Root-3rd】と弾いたあとの「♭ラ」は、次の「A△7」の【△7th】と解釈するとよいでしょう。
では3〜5小節めを見てみましょう。
この3小節は全てコードになっています。
「A△7」のトップノートの「#ソ」が元のキーのトニックである「♭ラ」と同じなので、メロディーは素直に解決していると言えるでしょう。
しかしコードが【♭Ⅱ△7】なので、少し変わったサウンドになっています。
この「A△7」には「Aリディアン」を使います。
トニックの代わりにいったん【♭Ⅱ△7】に解決するというのは、わりとよく使われる手法です。
しかし今回のサンプルは、そこから【♭Ⅴ7】である「D9(#11,13)」に進行します。
これはスケールでいうと「リディアン7thスケール」ということになります。
ちょっとややこしいボイシングになっていますが、右手は「C△7(#5)」を弾くと考えると簡単かもしれません。
積み方は少し変わりますが、ハーモニー的には「E/D7」というふうに、「アッパーストラクチャートライアド」を使ったものと考えるのもいいでしょう。
キーを変えてみる
では他のキーでも使えるように違うキーで見てみましょう。
これは「Key=C」です。
まず【Ⅱ】である「Dm7」の【5th】から半音下を弾き、また【5th】に戻ります。
それと全く同じ形で【3rd】からも下がって戻ります。
「G7」では【13th-Root-3rd】と弾き、「Key=C」のトニックである「ド」を弾いたあと、そのまま「ド」をトップノートにして【♭Ⅱ△7】である「D♭△7」を弾きます。
そして次は「G♭9(#11,13)」を弾きます。
これは「A♭/G♭7」を考えると楽だと思います。
そして【 Ⅰ 】に解決して終わりです。
まとめ
今回のフレーズのポイントは【Ⅱ-Ⅴ】ではなく、その次の小節からの【♭Ⅱ△7-♭Ⅴ7】と進行してから【 Ⅰ 】に解決するというところです。
2小節めの3拍めから【Ⅴ】になっていますが、別に2小節めのアタマから【Ⅴ】にしてもかまいません。
テンション、ボイシングもそれほど気にすることはないと思います。
これは「Key=E♭」です。
【 Ⅱ-Ⅴ 】のあと【♭Ⅱ△7-♭Ⅴ7- Ⅰ】と進行します。
【♭Ⅴ7】を今回のサンプルと同じようにするなら、このような「アッパーストラクチャートライアド」を使うのが簡単です。
「分母のコードの全音上のトライアドを積む」と考えましょう。
応用例
では応用例を見てみましょう。
「Key=C」です。
【Ⅱ-Ⅴ】は単音のフレーズにしました。
そしてそこからの【♭Ⅱ△7-♭Ⅴ7】は2拍ずつにしてみました。
【♭Ⅱ△7-♭Ⅴ7】のところも単音のフレーズにしてみました。
スケールは「Eリディアン」と「Aリディアン7th」です。
さいごに
というわけで今回は、Oscar Petersonのエンディングを紹介しました。
素直にトニックに解決するのではなく、回り道をしながら解決するというフレーズでした。
コードの動きだけならすぐに応用できると思いますので、ぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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