- はじめに
- ペンタトニックスケールとは
- メジャースケールに含まれるペンタトニック
- 「Ⅱ」のm7に使えるペンタトニック
- 「Ⅲ」のm7に使えるペンタトニック
- 「Ⅵ」のm7に使えるペンタトニック
- コード進行の中で使う
- まとめ
はじめに
今回はペンタトニックの一歩進んだ使い方を紹介したいと思います。
ペンタトニックだけでも使い方によっていろんなテイストを出すことができます。
これを聞いてみてください。
上段↓
下段↓
どちらもペンタトニックだけを使っていますがかなり雰囲気が違います。
ふたつめのほうがちょっとおしゃれに聞こえませんか?
このような使い方を解説していきたいと思います。
「C△7」には「Cメジャーペンタトニック」、「Am7」には「Aマイナーペンタトニック」というだけではなく一歩進んだ使い方を紹介します。
コードによっていろいろな使い方があるので、【△7編】【m7編】【7編】と分けて解説しましょう。
今回はその【m7編】です。
ペンタトニックスケールとは
ではあらためてペンタトニックスケールについて説明します。
ペンタトニックスケールとは、音を5つ使ったスケールです。
音を5つ使えばペンタトニックと呼ぶので、いろいろな組み合わせが可能になります。
代表的なのはこのあたりでしょうか。
どれもよく聴くものだと思います。
陰旋法をあまりペンタトニックとは言いませんが、音が5つあることには変わりありません。
この中で特によく使われるものが「メジャーペンタトニック」と「マイナーペンタトニック」です。
ちょっとこれを見てください。
これはCメジャーペントニックを2オクターブにわたって並べたものです。
これを「ラ」の音から見ると「Aマイナーペンタトニック」になっています。
メロディーを作ったりアドリブをする場合は、別に【Root】から弾くと決まっているわけではありませんから「Cメジャーペントニック」でも「Aマイナーペントニック」でも同じです。
そこで説明が「Cメジャーペンタトニックスケール」または「Aマイナーペンタトニックスケール」などとややこしくならないように、この講座では「メジャーペンタトニック」に統一します。
この先、「ペンタトニック」といえば「メジャーペンタトニックスケール」のことだと思ってください。
ペンタトニックスケールはこちらでも詳しく解説しています↓
メジャースケールに含まれるペンタトニック
ではさっそく「マイナー7thコード」に使えるペンタトニックを見ていきましょう。
今回もキーは「C」で見ていきます。
1つのキーの中に「マイナー7thコード」は3つあります。
「Ⅱ」の「Dm7」と「Ⅲ」の「Em7」と「Ⅵ」の「Am7」です。
そしてどのコードも、使うスケールは当然「Cメジャースケール」です。
まずその「Cメジャースケール」にどのようなペンタトニックが含まれているのか見てみましょう。
簡単に言ってしまえば、5つの音すべてが白鍵であるペンタトニックを探せばいいということになります。
このようにペンタトニックが3つあることがわかります。
「Ⅱ」のm7に使えるペンタトニック
ではまず「Ⅱ」の「Dm7」にたいして、この3つのペンタトニックがそれぞれどのような音になっているのか見ていきましょう。
キーが「C」の中の「Dm7」なので、使うスケールは「C△7」と同じく「Cメジャースケール」ですが、理論的に言うと「Cメジャースケール」を「D」から並び替えた「Dドリアンスケール」ということになります。
しかしいまは気にする必要はないでしょう。
もちろん含まれるペンタトニックも「Cメジャースケール」に含まれるものと同じです。
「シ」の音は【6th】でもあるのですが、「Dm7」という「7thが入ったコード」にたいしてなので【13th】とします。
3つのペンタトニックに共通して含まれているのは、「Dm7」にたいしての【5th】と【11th】です。
それぞれちょっと雰囲気を見てみましょう。
まずは「Cペンタトニック」です。
「Dm7」にたいしての【7th】や【9th】、【11th】が含まれていて、コードを決定づける【3rd】が含まれないので、浮遊感がありテンション感が強いサウンドになっています。
では次は「Fペンタトニック」です。
これは呼び方を変えれば「Dマイナーペントニック」なので、いかにも「Dm」といったサウンドになります。
ロック、ブルースっぽくも聞こえますし、和風にも聞こえるような感じがします。
では「Gペンタトニック」を見てみましょう。
これも【3rd】と【7th】が含まれていません。
そして【9th】【11th】【13th】と使えるテンションが全て含まれています。
「Cペンタトニック」のときよりさらにテンション感が強いサウンドになります。
「Ⅲ」のm7に使えるペンタトニック
では次は「Ⅲ」である「Em7」に使えるペンタトニックを見てみましょう。
これも使う音は「Cメジャースケール」と同じですが、理論的に言うと「Cメジャースケール」を「E」から並び替えた「Eフリジアンスケール」ということになります。
含まれるペンタトニックも先ほどの「Dm7」のときと同じです。
「Cペンタトニック」には「Em7」にたいしてのアボイドノートである【♭13th】が含まれています。
そして「Fペンタトニック」には同じくアボイドノートである【♭9th】【♭13th】が含まれます。
「Gペンタトニック」は言い替えれば「Eマイナーペントニック」なので、アボイドノートが含まれず1番使いやすいでしょう。
ではこれも雰囲気を見てみましょう。
まずは「Cペンタトニック」です。
やはり【♭13th】である「ド」の音が気になります。
1小節に8分音符で1つ「ド」が入るだけでも違和感がありますね。
これは使い方に問題があるからです。
これを見て下さい。
このような使い方ならアプロチノートとしてそんなに違和感はないのですが
このようにアボイドの「ド」の音が隣の「シ」ではなく「ラ」から「ド」と動いたり、逆に「ド」から「ラ」に動いたりすると違和感が出てくるのがわかると思います。
しかしCペンタトニックには「シ」の音がないのでどうしてもこのようになってしまいます。
次は「Fペンタトニック」です。
これは先ほどの【♭13th】に加え【♭9th】も入るので、かなりぶつかっているように聞こえると思います。
あまり実用的ではありません。
では「Gペンタトニック」はどうでしょう。
これはやはり1番ぴったりきていると思います。
アボイドノートが含まれていないので、どの音を多く長く使っても大丈夫です。
使いやすくはありますが、テンション感はあまり感じられません。
しかし「Ⅲ」にはこれしかないと言ってよいでしょう。
「Ⅵ」のm7に使えるペンタトニック
では次は「Ⅵ」である「Am7」に使えるペンタトニックを見てみましょう。
これも使う音は「Cメジャースケール」と同じですが、理論的に言うと「Cメジャースケール」を「A」から並び替えた「Aエオリアンスケール」ということになります。
ちなみに「Key=C」と「Key=Am」は平行調(調号が同じである長調と短調の関係)です。
そして「Aエオリアン」は「Aナチュラルマイナースケール」と同じです。
ようするに「Key=C」の「Ⅵ」の「Am7」は「Key=Am」の「Ⅰ」と考えることもできます。
ではそれぞれの音を見てみましょう。
「Cペンタトニック」は言い替えれば「Aマイナーペンタトニック」なので1番使いやすいでしょう。
「Fペンタトニック」はアボイドノートの【♭13th】が入っているので注意が必要です。
「Gペンタトニック」はアボイドノートはありませんが【3rd】もありません。
そして【9th】【11th】が入っています。
ではそれぞれ雰囲気を見てみましょう。
まずは「Cペンタトニック」です。
これは当然1番合います。
ちょっと当たり前すぎる感じがするかもしれません。
「Key=Am」でのロック系ギターソロなどにもよく使われますし、和風な曲にもよく使われます。
次は「Fペンタトニック」です。
これも【♭13th】である「ファ」の音が少し気になりますね。
短い音価で少なめに使ってはいるのですが、それでも少し違和感があると思います。
これも「Em7」のところで説明したのと同じ理由です。
もちろん使ってはいけないわけではありませんが注意は必要です。
では「Gペンタトニック」はどうでしょう。
これはアボイドノートが含まれません。
そして【9th】と【11th】がありながら【3rd】が含まれないので、テンション感が強めです。
使い方によってはかなりおしゃれなサウンドが出せます。
コード進行の中で使う
では、m7が3つとも出てくるコード進行の上でペンタトニックを使ってみましょう。
「Key=C」というよりは「Key=Am」という感じですが、どちらでも使えるペンタトニックは同じです。
まず1小節めの「Dm7」では「Cペンタトニック」を使っています。
【Root】も【3rd】も弾いてないのでテンション感が強めです。
2小節めの「Em7」は「Gペンタトニック」です。
「Ⅲ」である「Em7」には「Gペンタトニック」しか使えないので、そのあとにいくつか出てくる「Em7」は全て「Gペンタトニック」です。
そして3、4小節続けて「Am7」ですが、3小節めは「Cペンタトニック」、4小節めは「Gペンタトニック」にしてみました。
スケールでいうと「Aエオリアン」が2小節続くことになるのですが、それを1小節ずつ違う種類のペンタトニックを使うと、変化がついて面白いと思います。
5、6小節めは1、2小節めと同じで、「Cペンタトニック」「Gペンタトニック」を使いました。
続く「Am7」は2小節とも「Gペンタトニック」です。
「F△7」では「Gペンタトニック」、「G7」では「D♭ペンタトニック」を使っています。
(「D♭ペンタトニック」については【ドミナント7th編】で説明しますのでここでは省略します。)
そして「C△7」では「Gペンタトニック」を使いました。
そしてまた【F△7-G7-C△7】という進行が繰り返されますが、ここでは「F△7」に「Cペンタトニック」を使っています。
「G7」と「C△7」は先ほど同じように「D♭ペンタトニック」「Gペンタトニック」です。
13小節めの【Dm7-Em7】は【Cペンタトニック-Gペンタトニック】で、続く「Am7」は前の小節の4拍目16分ウラから「Cペンタトニック」です。
といってもここは2音しか弾いていないので、ペンタトニックらしさはありませんね。
そして次の【Dm7-Em7】もそれぞれ【Cペンタトニック-Gペンタトニック】で、最後の「Am」は「Gペンタトニック」にしました。
ペンタトニックの独特なサウンドが伝わったでしょうか。
「Cメジャースケール」からペンタトニックを選びだすことでコードを決定づける音が欠けていたり元のコードとは違うコードが同時に鳴っているように聞こえるので、独特なサウンドが得られます。
今回のサンプルでは大げさにペンタトニックだけを使いましたが、1小節めはふつうのスケール、2小節めはペンタトニックというようにミックスして使えばもっと幅は広がります。
まとめ
それでは簡単にまとめてみましょう。
1.「Ⅱ」のm7には【3rd】からのペンタトニック、【7th】からのペンタトニック、【11th】からのペンタトニックが使える。
2.「Ⅲ」のm7には【3rd】からのペンタトニックが使える。
3.「Ⅵ」のm7には【3rd】からのペンタトニック、【7th】からのペンタトニックが使える。
【3rd】からのペンタトニックは【Root】からのマイナーペントニックと同じなので、どのm7にも使えます。
テンション感はあまりないですが、アドリブなどには最も使いやすいとは思います。
浮遊感やテンション感が欲しい場合は【7th】からのペンタトニックが使いやすくおすすめです。
アボイドノートを含むペンタトニックは使わないほうが無難です。
ただでさえ5つしか音のないペンタトニックからアボイドを避けるとさらに音が少なくなり、3つや4つの音になってしまいます。
それではせっかくのペンタトニックらしいサウンドが出ないのであまり意味があるとは言えません。
というわけで今回は「マイナー7thコードに使えるペンタトニックスケール」を紹介しました。
ぜひアドリブや作曲などに使ってみてください。
今回の解説動画はこちら↓