「天才たちのワンフレーズ」シリーズ、今回はDavid Kikoskiのフレーズを紹介します。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
これは『Some Other Blues』という曲でのアドリブソロです。
この曲は12小節からなる典型的な「F」のブルースです。
このフレーズは7〜10小節めで弾かれています。
この4小節のフレーズの中から、今回は1〜2小節めだけを解説したいと思います。
フレーズ分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
これはようするに「ブルースのトニックでのフレーズ」ということになります。
かなりアウトしているのがわかると思います。
臨時記号がいっぱいあって見るからにややこしそうな感じです。
ブルースのトニックではこのように、「ミクソリディアン」や「メジャーペンタトニック」、「マイナーペンタトニック」、マイナーペントニックに【♭5】を加えた「ブルーノートスケール(ブルーススケール)」と呼ばれるものなどをミックスして使うのが一般的でしょう。
※ブルーノートスケール、ブルーススケールと呼ばれているものはいろんな考え方があり、ここで紹介したものとは違うものもあります。
しかし今回のフレーズはそれらとは全く違います。
「F7」からの度数で見るとこのようになっています。
1小節めの1、2拍めは「F7」の「3-5-7-1」と、構成音だけでできています。
3拍めからはオルタードテンションがたくさん入ってきます。
一見オルタードスケールっぽいのですが、その中に【△7】である「♮ミ」が使われています。
これはオルタードスケールには含まれませんし、「F7」では最も使ってはいけない音です。
ではどのような解釈をすればいいのでしょう。
実はこのフレーズは「Eペンタトニック」だけで作られています。
ただし最後の「#ラ」は、次の小節の最初の音である「♮ラ」へのクロマチックアプローチなので省いて考えます。
というわけで今回のフレーズはこのようになります。
コードが「F7」のときに「コードの構成音」と「Eペンタトニック」を使うということになります。
見つけ方としては、「元のコードの半音下のペンタトニックを使う」と考えれば簡単でしょう。
「Eペンタトニック」のそれぞれの音は「Eメジャースケール」の度数で表すと【1-2-3-5-6】となります。
そして、今回のフレーズの中で「Eペンタトニック」が使われているところをその度数で表記するとこのようになります。
【6th】から入り、ペンタトニックスケールを【6-1-3-5】と上行。
【2nd】を弾いたあと【5th】からオクターブ下の【5th】までペンタトニックをそのまま下行するだけです。
キーを変えてみる
ではキーを変えてみましょう。
コードは「C7」です。
1、2拍めは「C7」の構成音を【3-5-7-1】と弾きます。
そして「C」の半音下である「Bペンタトニック」を【6-1-3-5】と上行します。
【2nd】の「#ド」を弾いたあと、【5th】からオクターブ下の【5th】までペンタトニックをそのまま下行します。
コードは「A7」です。
1、2拍めは「A7」の構成音を【3-5-7-1】と弾きます。
そして「A」の半音下である「A♭ペンタトニック」を【6-1-3-5】と上行します。
【2nd】の「♭シ」を弾いたあと、【5th】からオクターブ下の【5th】までペンタトニックをそのまま下行します。
まとめ
今回はブルースのトニックにおけるフレーズです。
ポイントは「元のコードの半音下のペンタトニックを使う」ということです。
「E7」なら「E♭ペンタトニック」
「B♭7」なら「Aペンタトニック」
ということになります。
しかし、半音下のペンタトニックだけをずっと使わなければいけないというわけではありません。
今回のフレーズのように、一般的に使われるスケールと半音下のペンタトニックを交互に使い、インサイドとアウトサイドを行ったり来たりするほうがフレーズを作りやすいと思います。
応用例
では応用例を見てみましょう。
今回のフレーズと同じ「Key=F」のブルースです。
3、4小節め、そして7小節めの3拍めから8小節めにかけて「Eペンタトニック」を使いました。
今回紹介したフレーズとは違ってマイナーコードに使ってみました。
これは「Am」ワンコードのアドリブです。
2小節めと3小節めの3、4拍めに半音下のペンタトニックである「A♭ペンタトニック」を使っています。
ブルースだけでなく、このような応用もできるということです。
さいごに
というわけで今回はDavid Kikoskiのワンフレーズを紹介しました。
ブルースでのアウトフレーズでしたが、ブルースに限らず使えるのでぜひアドリブに試してみてください。
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