はじめに
「テンションリゾルブ」とは、テンションがコードトーンに進行する動きのことです。
テンションは「緊張」という意味があり、リゾルブは「解決」という意味です。
メロディーがテンションノートだと緊張状態になりますが、それがコードトーンに解決することにより緊張が緩和され、開放感を生み出します。
ただ単に「緊張からの解決」という意味だと「ドミナントモーション」なども含まれますが、今回は「テンション」という単語は「テンションノート」ということで解説していきたいと思います。
メロディーを作るときやアドリブをするときなどに使うと、初心者でも簡単におしゃれで魅力的なフレーズが作れるので、ぜひ参考にしてみてください。
メロディーを作る
では具体的に見ていきましょう。
例えば「C」というコードがあったときに、どのようなメロディーが思い付くでしょう。
「C」というコードが鳴っているときまず思い付くのは、このように「メロディーがコードトーンから始まるもの」ではないでしょうか。
これが一番自然で安定しています。
しかし、こればかりではテンション感が全くなく、少々つまらなく感じることもあるでしょう。
もちろんコードトーンから入るのが悪いわけではありませんが、少し工夫してみましょう。
たとえばこのような感じです。
コードは「C△7」にしてみました。
一つめは【9th】から、二つめは【13th(6th)】から入っています。
コードトーンから入るメロディーと比べると、最初に緊張感があり、そしてそのテンションノートがコードトーンに解決したときに、それが緩和されます。
ダイアトニックコードにおけるテンション
では改めて「Key=C」のダイアトニックコードにおけるテンションを見てみましょう。
「G7」は「Key=C」以外の音である「オルタードテンション」が使えるので、数も多くなっています。
これらの音からメロディーが入るようにすると、少しおしゃれなフレーズが簡単に作れるようになります。
テンションがコードトーンに解決するといいましたが、こちらのように離れたコードトーンに飛んでしまうのは、あまり自然には聞こえません。
やはりいったん隣の音に進行するほうが、テンション感もありながら自然に解決する感じに聞こえると思います。
【9th】から入るのであれば、同じコードトーンでも【5th】ではなく隣の音である【Root】か【3rd】に進行するのがよいということです。
もちろんこのように、アドリブなどで「わざとテンションを解決させない」というのもとてもかっこいいのですが、歌メロとしてはちょっと難しいかもしれません。
では、元々テンションの入っているコードの場合はどうでしょうか。
コードに元々【9th】が入ってるので、メロディーが【9th】から入ってもこれまでほどのテンション感はありません。
それでも【Root】【3rd】【5th】などから入るよりは、少し洗練された感じはします。
2つめのフレーズは、コードには入ってない【11th】からのフレーズなので、【9th】から入るよりテンション感は強めです。
実際に使ってみる
では実際に簡単なメロディーを作ってみましょう。
まずこちらを見てください。
【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ】のコード進行でのメロディーです。
これは、小節の最初の音が全部コードトーンになっています。
ではこちらも見てください。
これは先ほどの例と違って、どの小節もテンションから入っています。
かなりおしゃれなサウンドになったのではないでしょうか。
あらためて、小節の最初の音がコードにたいしてどのような音なのか見てみましょう。
まず最初の例です。
「C△7」と「Am7」は【Root】から入っています。
【Root】から入るとコード感が強く出ます。
良く言えば「安定」していますが、悪く言えば「当たり前」とか「どっぷり」といった感じでしょうか。
「Dm7」は【5th】から、「G7」は【3rd】から入っています。
どちらも【Root】からほどではないですが、かなり安定しています。
そのぶん「緊張→緩和」といった動きはありません。
下の譜面では1小節めと3小節めは【9th】から【3rd】、2小節めは【9th】から【Root】、4小節めは【13th】から【5th】への動きとなっています。
小節の最初の音で緊張を与え、次の音で緩和されているのがよくわかると思います。
番外編
ここからは今回の趣旨とは少し外れた「番外編」です。
テンションからコードトーンへの動きを「テンションリゾルブ」と説明しましたが、単に「緊張→緩和」ということだけでいえば、このようなこともできます。
どの小節もコードトーン以外の音から入ってはいますが、どの音もテンションではありません。
1小節めは【4th】から【3rd】、2、3小節めは【♭5th】から【♮5th】、4小節めは【♭3rd】から【♮3rd】という動きになっています。
1小節めなどは【Csus4-C】というコードにしてもよいのですが、あえて「C」のままアボイドノートである【4th】を使うことにより、強い緊張感を与えています。
2、3、4小節めは「ブルーノート」という解釈でもいいですし、「クロマチックアプローチ」という解釈でもいいのですが、これもかなり緊張感があります。
特に2小節め、4小節めのように、コードトーン以外の音が4分音符のように長めの音価だと、より強い緊張が生まれます。
【4th】や「ブルーノート」以外にも、「アボイドノートから入る」ということもできます。
この例では「マイナーコード」にたいしてはアボイドノートである【♭13th】や【♭9th】から入っています。
ここではあえてテンションで表しましたが、これも単なるクロマチックアプローチと考えると簡単です。
テンションなのかアボイドノートなのかということは考えず、ただ単に半音上または半音下からコードトーンに解決すればいいだけです。
それがたまたまテンションだったり、アボイドノートだったりするわけです。
アボイドノートから入ると「緊張→緩和」がかなり強く感じられると思います。
アボイドノートはコードに入れてはいけないというだけで、メロディーに使うぶんには全く問題ありません。
フレーズの途中で出てくるより、コードが変わったときの最初の音として使うほうが強い緊張感が得られるので、コードトーンに解決したときの開放感も強くなります。
有名曲で見てみる
やはり少し面白みに欠けるメロディーになってしまう気がしますが、いかがでしょうか。
まとめ
テンションリゾルブをまとめてみましょう。
【9th】は【Root】か【3rd】に解決する。
【11th】は【3rd】か【5th】に解決する。
【#11th】は【3rd】か【5th】に解決する。
【13th】は【5th】か【7th】に解決する。
【♭9th】は【Root】に解決する。
【#9th】は【3rd】に解決する。
【♭13th】は【5th】か【7th】に解決する。
ということです。
簡単に譜面にしてみました。
これはKey=Cのダイアトニックコードを使った「テンションリゾルブ」の一例です。
簡単に言ってしまえば、「テンションリゾルブ」とはテンションが上下どちらかの隣のコードトーンに解決するということです。
ただし、【♭9th】はすぐ上のコードトーンは【3rd】なのですが、1音半の間隔があるため「テンションリゾルブ」という感じはしません。
【#9th】からすぐ下のコードトーンも1音半の間隔になってしまいます。
さいごに
「テンションリゾルブ」を意識して使えると、メロディー作りの幅が広がります。
もちろんコードトーンから入るメロディーや、コードトーンだけでできたメロディーが悪いわけではありません。
「緊張・緩和・安定を自在にあやつることができる」ということが大事なのです。
ぜひマスターして作曲やアドリブなどに使ってみてください。
今回の解説動画はこちら↓