今回はハーモナイズ【Part3】ということで【Part1】と【Part2】で紹介してきた5つのアプローチを改めてまとめてみたいと思います。
はじめに
【Part1】【Part2】で紹介したアプローチは
「オルタードドミナントアプローチ」
「ディミニッシュアプローチ」
「ドミナントアプローチ」
「クロマチックアプローチ」
「スケールアプローチ」
という5つがありました。
もう一度簡単に見てみましょう。
それぞれのアプローチ
1.オルタードドミナントアプローチ
元のコードのドミナントに「オルタードテンション」を加えたコードでハーモナイズします。
この場合は元のコードが「C」なのでそのドミナントである「G7」でハーモナイズします。
メロディーがアプローチコードの【♭9】【#9】【♭13】である場合に使います。
メロディーが【♭9】【#9】の場合は【♭13】を、【♭13】の場合は【♭9】または【#9】を付加するといいサウンドになります。
2.ディミニッシュアプローチ
元のコードのドミナントに【♭9】を加えたコードでハーモナイズします。
アプローチコードのルートを省くとディミニッシュの形になることから「ディミニッシュアプローチ」と呼ばれます。
メロディーがアプローチコードの【5】【7】の場合に使います。
3.ドミナントアプローチ
元のコードのドミナントに「ナチュラルテンション」を加えたコードでハーモナイズします。
メロディーがアプローチコードの【♮9】の場合に使います。
【♭13】を付加するとよりよいサウンドになります。
4.クロマチックアプローチ
元のコードのクォリティそのままで半音上または半音下のコードでハーモナイズします。
メロディーがアプローチコードの【△7】【#11】の場合に使います。
5.スケールアプローチ
元のコードのKeyの「ダイアトニックコード」でハーモナイズします。
メロディーが元のKeyのスケール上にある音の場合のみ使えます。
もっともPopに聞こえます。
ハーモナイズ例1
では長めのサンプルでいろいろなハーモナイズを使ってみます。
このようなメロディーでやってみましょう。
まずコードトーンを先にハーモナイズします。
「Am」は「Am6」に、「Dm」は「Dm7」、「C」は「C6」でハーモナイズしました。
「F△7」のメロディーが「ファ」のところは「F△7」でハーモナイズするとトップノートが「ファ」と「ミ」で【短二度】でぶつかってしまいます。
トップノートが半音でぶつかるのはサウンド的によくないので、ここだけ「F6」にしてあります。
そしてコードトーン以外をハーモナイズしていきましょう。
1小節めは「Am」なのでコードトーン以外はドミナントの「E7」でハーモナイズします。
「#ソ」「シ」は「E7」の【3rd】【5th】なので「ディミニッシュアプローチ」です。
2小節めの「ミ」はドミナントである「A7」の【5th】なので「ディミニッシュアプローチ」をしました。
3小節めはコードトーンではない「ド」がコードトーンに解決しないまま「#ド」に進行してから「レ」に解決しています。
とりあえず「ド」は後回しにして「#ド」を先にハーモナイズしましょう。
「#ド」も「G7」のドミナントである「D7」でハーモナイズしたいところですが、「#ド」は「D7」にたいして【△7】なので「D7」でハーモナイズすることはできません。
この場合は「クロマチックアプローチ」を行うのですが【ド-#ド-レ】と続いているので「クロマチックアプローチ」を2つ続けてやってみました。
このように「クロマチックアプローチ」を2つ連続して行うことを「ダブルクロマチックアプローチ」と呼びます。
「ミ」は「D7」にたいして【9th】なので【♭13】を足して「ドミナントアプローチ」とします。
4小節めも「ドミナントアプローチ」や「ディミニッシュアプローチ」を行うことができるのですが、あえて「スケールアプローチ」にしてみました。
「C」はトニックなので、サブドミナントである「Dm7」でハーモナイズしました。
5小節めの「Dm」でのコードトーン以外の音はドミナントである「A7」でハーモナイズします。
「ミ」と「#ド」ですが、これも【5th】【3rd】なので「ディミニッシュアプローチ」です。
6小節めの「Am」のところの「#レ」は「E7」にたいする【△7】なので、ここも「クロマチックアプローチ」です。
「シ」は「E7」の【5th】なので「ディミニッシュアプローチ」です。
7小節めは「F△7」と「G7」が2拍ずつになっています。
「レ」は「F△7」のドミナントである「C7」の【9th】なので「ドミナントアプローチ」です。
「G7」での「♭ミ」はドミナントである「D7」の【♭9th】なので「オルタードドミナントアプローチ」です。
最後の「C△9」での「♭ラ」は「G7」の【♭9th】なのでこれも「オルタードドミナントアプローチ」です。
ではこれにベースとドラムを足してみましょう。
弾くのはかなり難しいとは思いますが、ジャジーでなかなかいいサウンドなのではないでしょうか。
これを楽器別に声部を分けることでこのようなアレンジもできます。
ハーモナイズを覚えておくとこのような管楽器のアレンジをするときにも役に立ちます。
ハーモナイズ例2
では次はこんなメロディーです。
これをまずハーモナイズしましょう。
※下段はガイドのために書いてありますが、音には入っていません。
1小節めの「Am」のコードトーンは「Am6」にしてみました。
メロディーが「シ」「レ」のところは、どちらも「ディミニッシュアプローチ」です。
2小節めもコードトーン以外の音は「ディミニッシュアプローチ」です。
「E7」での「ラ」は「ディミニッシュアプローチ」ですが「ファ」はドミナントの「B7」にたいする【#11】なので「クロマチックアプローチ」にしました。
4小節めも「ディミニッシュアプローチ」です。
さて、ここまでは今までやってきたことですが、この例ではさらに応用しましょう。
これは「Drop2」というテクニックです。
最初に作ったボイシングの「上から2番めの音を1オクターブ下げる」というものです。
Drop2の記事はこちら↓
聞き比べてみましょう。
感じ方は人それぞれですが、「Drop2」のほうが広がって落ち着いた感じなのではないでしょうか。
「クローズドボイシング」は「Drop2」より鋭い響きがするような気がします。
このように一旦「クローズドボイシング」で作ってからそのあとに自由に転回することが可能です。
ハーモナイズ例3
では次はこんなメロディーです。
これを今回はこのようにハーモナイズします。
※下段はガイドのために書いてありますが、音には入っていません。
今までと違ってメロディーのところどころをハーモナイズしています。
このようにメロディーすべてをコードにする必要はないのです。
1小節めは「オルタードドミナントアプローチ」
2小節めは「ディミニッシュアプローチ」
3小節めは「クロマチックアプローチ」
4、5小節めはコードトーンをハーモナイズしただけなので、アプローチではありません。
これをこのようにも応用できます。
これはメロディーだけを左手でも弾いています。
ようするにメロディーがオクターブで動いて、その内声にところどころコードが入るという形になります。
メロディーがより強調されて聞きやすいのではないでしょうか。
ベースとドラムを入れてみるとこんな感じです。
「George Shearing」などはこのようなスタイルが多く、このようにメロディーをオクターブで弾いて、その間にコードを入れる奏法は「シアリングスタイル」などと呼ばれます。
アプローチコード一覧
なんとなく理解できてきたでしょうか。
一度に覚えるのは大変なのでこれらの一覧表を載せておきます。
1番左に書いてあるのが「元のコード」です。
そしてその右に12個並んでいるのが「アプローチコード」です。
アプローチコードのトップノートがメロディーだと思ってください。
アプローチコードの下に書いてある文字は
「☆」はコードトーン
「C」はクロマチックアプローチ
「Di」はディミニッシュアプローチ
「A」はオルタードドミナントアプローチ
「D」はドミナントアプローチ
ということです。
たとえば元のコードが「Em7」でメロディーが「ド」の場合は、「B7(♭9,♭13)」でハーモナイズすればよいということがわかります。
もうひとつ例をあげると、元のコードが「F△7」でメロディーが「♭ソ」の場合は「G♭△7」でハーモナイズします。
しかしこれはあくまでも一例です。
簡単に使えるようにかなり簡略化してあります。
実際には一つの音にたいして、いくつかのアプローチが可能な場合もたくさんあります。
ここには書いていませんが、いろんな音で「スケールアプローチ」をすることもできます。
ぜひいろいろ探ってみてください。
さいごに
今回の講座ではなるべく簡単に使えるように厳選して紹介したので、これらが全てではありません。
優先順位も「オルタードドミナントアプローチ」が最上位と説明しましたが、全て理解した上で行うならその限りではありません。
もっと自由にいろいろ試してみてください。
ハーモナイズはとても奥が深いので、この講座で興味を持たれた方はもっと深く追求してみるのも面白いと思います。
いろいろなハーモナイズを紹介しましたが、これは初期段階の理論だと間違いだと言われることが多く含まれていたと思います。
【ド-ミ-ソ】と弾いている上に同時に【ファ-♭ラ-シ-♭ミ】を弾くなんてことは普通はありません。
アボイドノートなので同時に弾いてはダメだと言われるでしょう。
中途半端に理論を覚えると禁則ばかりですごくつまらないと思うことがあります。
しかし、ちゃんと理解すればするほどどんどん自由になっていきます。
理論に縛られないようにするには、逆に理論を深く学ぶ必要があります。
そうすると最終的には「なにをしても間違いではない」というところに行き着きます。
ぜひいろいろと研究してほしいと思います。
今回の解説動画はこちら↓