今回はメロディーにたいするハーモナイズの【Part2】です。
【Part1】で紹介できなかった「クロマチックアプローチ」と「スケールアプローチ」を解説します。
今回もできるだけ簡単にそれっぽいサウンドが出せるようになることを目指しましょう。
クロマチックアプローチ
ではまず「クロマチックアプローチ」です。
まずこのようなメロディーを見てください。
これも「ソ」は「C」の構成音なので、今までと同じように「C6」でハーモナイズします。
では「#ファ」をハーモナイズしましょう。
まず今までと同じようにドミナントである「G7」を考えてみます。
しかし「#ファ」は「G7」にたいして【△7】の音です。
ということは「G7」ではハーモナイズできないということになります。
このようなときに「クロマチックアプローチ」でハーモナイズします。
ただ半音下から平行に動いているだけなので簡単です。
平行に動いているので、当然全ての音が半音で解決しているということになります。
これもとてもスムーズに解決してるように聞こえます。
これをメロディーのハーモナイズとして使うとこのようになります。
これもコードネームはただの「C」と書くだけで大丈夫です。
もう一つ見てください。
これも「ド」は「C」の【Root】ですから「C6」でハーモナイズします。
そしてこの「♭レ」のハーモナイズを考えます。
まず「G7」を考えてみましょう。
「G7」にたいして「♭レ」は【#11】です。
優先順位が1番の「オルタードドミナントアプローチ」を試してみましょう。
「G7(♭9,#11)」にしてみました。
これでももちろんいいのですが「♭レ」の場合は「クロマチックアプローチ」にすることのほうが多いようです。
どちらも間違いではないので好きな方を使って大丈夫です。
では違うコードで見てみましょう。
元のコードは「Dm」です。
「ラ」は「Dm」のコードトーンなので「ラ」がトップノートになるように「Dm」でハーモナイズすればいいのですが、アプローチコードは4声にしたいので「Dm7」でハーモナイズします。
そして「#ソ」をハーモナイズしましょう。
これも優先順位からまず「オルタードドミナントアプローチ」を考えます。
「Dm7」のドミナントは「A7」です。
しかしメロデーの「#ソ」は「A7」にたいして【△7】の音になるので「A7」でハーモナイズすることはできません。
ということは「オルタードドミナントアプローチ」も「ディミニッシュアプローチ」も「ドミナントアプローチ」もできません。
そうなると次に考えるのは「クロマチックアプローチ」です。
というわけで「C#m7」で「クロマチックアプローチ」しました。
全ての声部が平行に半音で進行するのでとても自然ですね。
スケールアプローチ
では最後に「スケールアプローチ」を解説しましょう。
これまでのアプローチがJazzっぽいのにたいして「スケールアプローチ」はPopに聞こえると思います。
「スケールアプローチ」は、アプローチする音が元のコードに対応するダイアトニックスケールの中にある音でなければなりません。
例えば「Key=C」の曲で「C」というコードがついたところは「トニック」ということなので「アイオニアン」を使います。
構成音の「ド」「ミ」「ソ」は当然「C」というコードでハーモナイズします。
残りの「レ」「ファ」「ラ」「シ」をハーモナイズするときに、スケールトーンだけを使ったコードでハーモナイズすることを「スケールアプローチ」といいます。
元のコードを省くとダイアトニックコードはこの6つになります。
この中で「Bm(♭5)」は「C」にたいするトライトーンである「シ」と「ファ」を含むので除外します。
なぜならトライトーンがあると「ドミナントアプローチ」になってしまうからです。
いまは「スケールアプローチ」をしたいので「ドミナントアプローチ」は避けます。
次に考えるのはアプローチコードのファンクションが元のコード「C」にたいしてどうなっているかです。
元のコードがトニックの場合、アプローチコードはサブドミナントにします。
元のコードがサブドミナントの場合、アプローチコードはトニックにします。
元のコードがドミナントの場合、アプローチコードはトニックまたはサブドミナントにします。
具体的に見てみましょう。
ダイアトニックコードはこのようなファンクションになっています。
3声でも4声でもファンクションは変わりません。
「SD」などと2つ書いてあるものは、1つめに書いてある「S」の機能のほうが強いと考えてください。
そうするとコードが「C」のときのメロディーをハーモナイズするなら、サブドミナントである「Dm」または「F」が望ましいということがわかります。
(注意)
上記の4声のダイアトニックコード一覧では「Ⅰ」が「C△7」になっていますが、トライアドである「C」というコードをハーモナイズするときには「C△7」ではなく「C6」でハーモナイズすることがほとんどです。
この先の例でもコードが「C」のところは「C6」という4声でハーモナイズします。
では例を見てみましょう。
たとえばこのような場合です。
これも「ミ」と「ソ」は「C」のコードトーンですから、「C6」でハーモナイズします。
そして「ファ」と「ラ」を「スケールアプローチ」でハーモナイズしてみましょう。
「C」はトニックですから、サブドミナントでハーモナイズします。
4声なら「F△7」か「Dm7」になります。
「Dm7」でハーモナイズするとこんな感じです。
「F△7」でハーモナイズするとこうなります。
どちらも間違いではありません。
では各声部の動きを比べてみましょう。
まずメロディーが【ファ-ミ】と動いてるものです。
各コードのトップノートの動き、上から2番めのノートの動き、というふうにバラバラに書いてあります。
【Dm7-C6】と【F△7-C6】をそれぞれ比べてみると、違いは上から2番めの音が【レ-ド】と動くか【ミ-ド】と動くかだけです。
これはやはり3度で動くより2度で動くほうがスムーズです。
メロディーが【ラ-ソ】と動いている場合はどうでしょう。
同じように上から3番めの声部が【レ-ド】と動くか【ミ-ド】と動くかの違いだけです。
というわけで「F△7」より「Dm7」でハーモナイズするほうがよりスムーズということになります。
最初に「スケールアプローチ」はPopだと言いましたが、ここで違うアプローチと比べてみましょう。
同じコードで同じメロディーですが、1小節めは「スケールアプローチ」、2小節めは「ディミニッシュアプローチ」です。
もう一つ比べてみましょう。
これは2小節めが「ドミナントアプローチ」です。
「スケールアプローチ」のほうがPopで「ディミニッシュアプローチ」や「ドミナントアプローチ」のほうがJazzっぽいような気がしませんか?
これも好みでどちらを選んでもかまいません。
ではもう少し長いメロディーを「スケールアプローチ」のみでハーモナイズしてみましょう。
「Key=C」でメロディーは「Cメジャースケール」だけで作られているので「スケールアプローチ」が可能ということはわかります。
そしてそれぞれのコードのファンクションに注意してハーモナイズしていきます。
たとえばこのようなハーモナイズができます。
元のコードは便宜上、五線の下に書きましたが【C-Am-F-G-C】です。
この中でコードトーンは元のコードでハーモナイズするだけなので、なにも考えることはありません。
それ以外の音のハーモナイズを見てみましょう。
「C」はトニックなので、サブドミナントである「Dm7」でハーモナイズしました。
「Am」もトニックなので、サブドミナントである「Dm7」でハーモナイズしました。
「F」はサブドミナントなので、トニックである「C6」と「Em7」でハーモナイズしました。
「G」はドミナントなので、トニックの「C6」とサブドミナントである「Dm7」でハーモナイズしました。
譜面に書くときはもちろんアプローチコードのコードネームは書きませんから、このような譜面になります。
ただし一つだけ例外があります。
これを見てください。
この譜面のようにコードがトニックの「C」でメロディーが「シ」の場合です。
トニック上でコードトーン以外のメロディーを「スケールアプローチ」する場合は、サブドミナントでアプローチすると説明しました。
しかし「シ」の音はサブドミナントではハーモナイズできません。
このようなときはトニックの「C△7」や「Em7」でアプローチするか、ドミナントコードによる「ドミナントアプローチ」にするのがよいでしょう。
いろいろなコードでアプローチしてみました。
最後は「ディミニッシュアプローチ」ですが、結局これが1番きれいな気がしますがどうでしょう。
ハーモナイズ例
「♭レ」は「オルタードドミナントアプローチ」もできますが「クロマチックアプローチ」のほうがおすすめです。
まとめ
では今回の2種類のアプローチを簡単にまとめましょう。
1.メロディーが元のコードにたいするドミナントの【△7】【#11】にあたる場合は「クロマチックアプローチ」を行う。
2.メロディーが元のコードのスケール上の音なら「スケールアプローチ」が可能になる。
3.元のコードがトニックの場合はサブドミナントでアプローチする。
4.元のコードがサブドミナントの場合はトニックでアプローチする。
5.元のコードがドミナントの場合はトニックまたはサブドミナントでアプローチする。