今回は「ハンガリアンマイナースケール」というものを紹介しましょう。
これは、文字通りハンガリーの民謡などで多く使われるスケールです。
ポップスなどにちょっと民族的なサウンドが欲しい場合には、とても便利なスケールです。
メジャーコードに使われるハンガリアンスケールもあるのですが、今回はマイナーコードに使われるものを紹介します。
はじめに
「ハンガリアンマイナースケール」とはこのようなスケールです。
このスケールは「ジプシースケール」と呼ばれることもあるのですが、他にもジプシースケールと呼ばれるスケールがいくつかあるので、これについてはまた別の動画で紹介したいと思います。
構成音の分析
ではこのスケールの構成音が、ルートにたいしてどのような音になっているのか見てみましょう。
【♭3rd】と【5th】が含まれているので、マイナーコードに使うスケールということがわかります。
この「Cハンガリアンマイナースケール」は「Cm」のときに使うスケールということです。
テンションとして使えるのは【9th】だけです。
【♭13】が入っていますが「Cm」のときに使えるテンションではないので、あえて【♭6】と表記してあります。
特徴的なのは【#11th】が含まれていることです。
これも【♭5】と言ってもいいのですが【5th】は別に含まれているため【#11】と表記しました。
そして【△7】が含まれているため「Cm7」というコードはつけられません。
4声にするなら「Cm△7」ということになります。
見つけかた
次はわかりやすく、調号のない「Key=Am」で並び替えてみましょう。
黒鍵が2つ含まれています。
では次は、この譜面を見てください。
「ハンガリアンマイナースケール」というのは「ハーモニックマイナースケール」の【4th】を半音上げたものということがわかります。
いきなり「ハンガリアンマイナー」が見つけにくいときには、まず「ハーモニックマイナー」を見つけて4番めの音を半音上げれば「ハンガリアンマイナースケール」になります。
ハンガリアンマイナースケールにおけるドミナント
「Key=Am」であればドミナントは「E7」です。
「E7」のトライトーンは「#ソ」と「レ」です。
しかし「Aハンガリアンマイナースケール」には「E7」のトライトーンである「レ」が含まれていません。
含まれているのは「レ」ではなく「#レ」です。
そうなると使えるのはトライアドの「E」か「E△7」になってしまいます。
「E7」の代わりに「E△7」を使ってもドミナントモーションにはなりませんし、かなり違和感があります。
このようにコードだけを弾いてもちょっと変な感じがします。
「ハンガリアンマイナー」をずっと使いたいのであれば、コードはトライアドの「E」にしておくのが無難でしょう。
しかし、このようにコードを「E」にしてもメロディーに「#レ」が多く使われると、これもまたちょっと違和感があります。
ドミナントを使いたいときは、このようにトライアドの「E」にしてメロディーには【△7】をあまり使わないようにするか・・・
このようにコードを「E7」にして、それに対応するスケールにしてしまうほうがいいと思います。
使用例
「ハンガリアンマイナースケール」のテイストをずっと出し続けたいなら「Am」だけで作るのが一番でしょう。
しかし、なにも1曲中ずっと「ハンガリアンマイナースケール」だけを使い続けなければいけないというわけではありません。
コードが「Am」のときは「ハンガリアンマイナースケール」を使えばいいのですが、コードが変われば違うスケールを使ってもかまいません。
これを見てください。
「Am」では「ハンガリアンマイナー」を使いましたが、「B7」ではコンディミ、「E7」では「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」を使ってみました。
このようにトニックのときにだけ「ハンガリアンマイナースケール」を使えば、じゅうぶんそれらしいサウンドは出せると思います。
ここまでポップス系での使い方を解説してきましたが、クラシックでも使われることがあります。
これはリスト作曲の「ハンガリー狂詩曲第3番」の一部です。
さいごに
今回は「ハンガリアンマイナースケール」というちょっと変わったテイストを持ったスケールを紹介しました。
ハンガリーっぽいサウンドがほしい場合や、少し異国的な感じにしたい場合などにはとても役に立ちます。
メタル系のギターソロなどにもよく使われているので、覚えておいて損はないと思います。
今回の解説動画はこちら↓