今回は【♭Ⅶ】というコードについて紹介してみたいと思います。
- はじめに
- ♭Ⅶが自然に聞こえるわけ
- ♭Ⅶにたいするスケール
- 実際にコード進行の中で使ってみる 1
- 実際にコード進行の中で使ってみる 2
- 実際にコード進行の中で使ってみる 3
- 実際にコード進行の中で使ってみる 4
- 応用例
- さいごに
はじめに
まずは聴いてみてください。
これは「Key=E」でのコード進行ですが、この中の「D」というコードが【♭Ⅶ】ということになります。
このコード進行はビートルズの『All My Loving』なのですが、【♭Ⅶ】がとてもビートルズっぽさを出していると思います。
ではここからは「Key=C」で見ていくことにしましょう。
これが「Key=C」のダイアトニックコードです。
【♭Ⅶ】には「♭」がついているのですから、当然この中には出てきません。
「Key=C」の【♭Ⅶ】はこのようになります。
ふつうは【♭Ⅶ】という「B♭」のトライアドということになりますが、【♭Ⅶ△7】【♭Ⅶ7】もメロディーによっては使用可能です。
【♭Ⅶ】に含まれる「♭シ」は「Key=C」におけるブルーノートの1つです。
だから【♭Ⅶ】を使うと少しブルージーな雰囲気が出るわけです。
ブルース色をそんなに強く出さず、少しだけブルージーにしたい場合にも【♭Ⅶ】というコードはとても効果的です。
♭Ⅶが自然に聞こえるわけ
キーの中に存在しない【♭Ⅶ】がダイアトニックコードの中に急に入ってきてもなぜ自然に聞こえるのでしょうか。
ダイアトニックコードをトニック、サブドミナント、ドミナントに分けるとこのようになります。
これを見るとわかるように、【♭Ⅶ】は【Ⅱ】【Ⅳ】【Ⅴ】【Ⅶ】と共通音が複数あることがわかります。
※「B♭7」だけは「♭ラ」が含まれるので今は除外して考えてください。
「Dm7」と「B♭△7」、「Bm7(♭5)」と「B♭△7」などは3つも共通音があります。
共通音が多ければ代理コードとして使うことが可能となります。
【Ⅱ】と【Ⅳ】はサブドミナント
【Ⅴ】と【Ⅶ】はドミナントです。
そしてこれでわかるのは【♭Ⅶ】はサブドミナントとしてもドミナントとしても使えるということです。
言い方を変えると、サブドミナントもドミナントも【♭Ⅶ】に置き換えて大丈夫ということになります。
このように【♭Ⅶ】というコードは元のキーのサブドミナントやドミナントの代理になっているので、違和感なく自然に聞こえるというわけです。
「B♭7」は「B♭△7」とくらべると「Dm7」「F△7」「G7」「Bm7(♭5)」との共通音が少なくなります。
「Key=C」の中で「B♭7」を使うと「♭ラ」が含まれていることから、サブドミナントマイナー的な響きになります。
サブドミナントやドミナントの代理としても使えますが、サブドミナントマイナー的な響きになっているということを理解しておきましょう。
もちろんサブドミナントマイナーである「Fm」の代理としても使えます。
♭Ⅶにたいするスケール
今回はコード進行を紹介していますが、ここでスケールも紹介しておきましょう。
「B♭△7」に使うなら「Ionian」か「Lydian」です。
違いは「ミ」か「♭ミ」ということになりますが、元のキーが「C」なら当然「ミ」のほうが変化が少ないので自然なサウンドになります。
「B♭7」なら「Mixo-Lydian」か「Lydian♭7th」になります。
これも違いは「ミ」なのか「♭ミ」なのかということです。
こちらも「ミ」のほうが自然ではありますが、「Mixo-Lydian」を使うこともよくあります。
どちらでも間違いということはないので、自分が合うと思う方を使えばいいでしょう。
トライアドの「B♭」は【7th】が含まれていないのでスケールは特定できませんが、逆に言うと自由に選べます。
もし【7th】の音を入れるとしたら「ラ」か「♭ラ」のどちらが合うかを見極め、それを元にスケールを選びましょう。
実際にコード進行の中で使ってみる 1
具体的なコード進行の中で見てみましょう。
コードはシンプルにトライアドとします。
これはいわゆる【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ】というコード進行です。
ファンクションで言うと【T-T-S-D】ということになります。
【♭Ⅶ】は、サブドミナントとドミナントの代理になるということは先ほど説明しました。
ではまずサブドミナントである「Dm」を【♭Ⅶ】にしてみましょう。
これもかなりビートルズっぽいですね。
もちろん4声のコードにしてもかまいません。
少しビートルズっぽさは薄れて、ちょっと洗練された感じになります。
ビートルズっぽさを出したいならトライアドにするほうがよいでしょう。
では次はドミナントである「G」を【♭Ⅶ】に変えてみましょう。
これもまたビートルズっぽいのではないでしょうか。
ただの【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ】とはまた少し違って面白いサウンドになります。
実際にコード進行の中で使ってみる 2
もう1つ見てみましょう。
これもまたよく使われる【Ⅰ-Ⅴ-Ⅳ-Ⅰ】というコード進行です。
まずはサブドミナントである「F」を【♭Ⅶ】にしてみましょう。
これもとても自然に聞こえると思います。
次はドミナントである「G」を【♭Ⅶ】にしてみます。
これもまたなかなかいいサウンドですね。
実際にコード進行の中で使ってみる 3
このように【Ⅱ-Ⅴ】の間に【♭Ⅶ】を入れるというのもよく使われます。
これも一瞬だけブルージーになるのが面白いですね。
ビートルズはこの進行もよく使っています。
実際にコード進行の中で使ってみる 4
このような進行もよく聴くのではないでしょうか。
しかしこれは【♭Ⅶ】だけではなく【♭Ⅵ】も使われているので、これまでのものとは少しサウンドが異なります。
これは「Key=C」の同主調である「Key=Cm」からの借用になります。
4声のダイアトニックコードはこのようになります。
なので先ほどのコード進行を4声にするとこのようになります。
この場合【♭Ⅶ】を4声にすると「B♭△7」ではなく「B♭7」になるということです。
スケールでいうと「A♭△7」には「Lydian」を使います。
「B♭7」はこの進行の場合、「Lydian♭7th」より「Mixo-Lydian」を使う方がいいサウンドになります。
「Key=Cm」からの借用なので「ミ」より「♭ミ」のほうが流れとしては自然だからです。
そもそも【♭Ⅵ】にも「♭ミ」が含まれているのですから、当然そのほうがスムーズに流れます。
応用例
今回は何度もビートルズっぽいと説明をしてきましたが、この【♭Ⅶ】はそれだけではありません。
Jazzっぽいサンプルも作ってみました。
【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ】を元にした進行ですが、【Ⅱ】や【Ⅴ】の代わりに【♭Ⅶ△7】を使ってみました。
こう使うと特にビートルズっぽく聞こえたりはしないと思います。
さいごに
今回は【♭Ⅶ】というコードの使い方を紹介しました。
ダイアトニックな曲の中に突然現れる【♭Ⅶ】というノンダイアトニックが、ちょっと面白いサウンドを作ってくれます。
ブルージーな響きが欲しいときや、ビートルズっぽいサウンドが欲しいときなどにぜひ使ってみてください。
またジャンルを問わず、よくあるコード進行をリハーモナイズしてみるのも面白いと思います。
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