今回はビートルズが多用する「短三度上のキーへの転調」を実際の曲で見てみたいと思います。
- はじめに
- Here,There And Everywhere
- Two Of Us
- Lady Madonna
- You're Going To Lose That Girl
- Another Girl
- まとめ
- さいごに
はじめに
ビートルズには転調がとても効果的に使われている曲がたくさんあります。
いろんな種類の転調が使われていますが、今回紹介する「短三度上への転調」も多く使われています。
「短三度上への転調」というのは、このように「Key=C」から「Key=E♭」への転調ということです。
「Key=E♭」と「Key=Cm」は調号が同じです。
「Key=C」から「Key=Cm」という、同主調への転調もビートルズはよく使っていますが、今回は「短三度上への転調」に限って紹介したいと思います。
今回紹介する曲はどれも転調するだけではなく、自然に元のキーに戻っているのでそこも参考になると思います。
Here,There And Everywhere
「Key=C」に移調して見てみましょう。
1小節めから4小節めまでは「Key=C」のダイアトニックコードだけです。
5〜6小節めは「Bm7-E7」という「Key=A」の【 Ⅱ-Ⅴ 】がありますが、ここでは「Am」に進行しています。
「Aメロディックマイナー(ジャズマイナー)」の【 Ⅱ-Ⅴ 】と考えてもいいでしょう。
そして突然転調するのではなく、8小節めの4拍めで「B♭7」という「Key=E♭」の【 Ⅴ 】を置いてスムーズに転調しています。
ようするに8小節めの「B♭7」から「Key=E♭」になっているということです。
10小節めは「Fm」なので「Key=E♭」の【 Ⅱ 】でもあるのですが、そのあとの「G7-Cm」という進行は「Key=Cm」です。
そこで「Fm-G7-Cm」をまとめて「Key=Cm」と考えるほうが自然だと思います。
よって10〜12小節めは「Key=Cm」ということになります。
そして「Key=Cm」と「Key=C」の共通のドミナントである「G7」を使って、またスムーズに「Key=C」に戻っています。
Two Of Us
これも「Key=C」に移調してみましょう。
変拍子がいろいろ入って複雑な構成になっていますが、メロディーを聴くととても自然に聞こえると思います。
1段めから2段めまでは「Key=C」のダイアトニックコードだけでできています。
3段めからいきなり「Key=E♭」に転調します。
前にドミナントを置いたりすることもなく、いきなりの転調です。
そして「Dm7-G7」を使って「Key=C」に戻ります。
Lady Madonna
「Key=C」に移調します。
1〜3小節めは「C-F」というシンプルなコード進行ですが、4小節めで同主調である「Key=Cm」からの借用である「A♭-B♭」という進行から「C」に解決します。
そして5小節めから「Key=E♭」に転調しています。
この曲もいきなりの転調をしますが、トニックではなく「Key=E♭」の【 Ⅱ 】である「Fm7」に進行します。
「Fm7」だけでは「Key=E♭」かどうかはわかりませんが、そのあとの【 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 】を見るとはっきりします。
「Key=C」に戻るときは、【 Ⅱ-Ⅴ 】である「Dm7-G7」を使い、さらにドミナントを「G7sus4-G7」に分割しています。
You're Going To Lose That Girl
これも「Key=C」に移調してみましょう。
1〜6小節めは「Key=C」のダイアトニックコードだけでできています。
8小節めから調号を「Key=E♭」にしましたが、7小節めにドミナントである「B♭」を置くことでとても自然に転調しています。
3段めの4小節めに「D♭」というコードが出てきます。
ここでは【7th】が入っていないので、コードクォリティとしては「D♭△7」なのか「D♭7」なのかはハッキリしません。
しかしどちらにしても半音で「C」に進行しますし、「D♭7」と考えると裏コードということになるので、スムーズに「Key=C」に戻ることができます。
Another Girl
「Key=C」にしてみましょう。
とてもブルージーな曲です。
2小節めの「B♭」は「Key=C」の【♭Ⅶ】で、これもビートルズは多用しています。
※【♭Ⅶ】のブログはこちらにあるので参考にしてみてください↓
3段めは「C7-F7」という進行になっていますが、これは「ドミナント7th」はなくブルース的な進行であり、【 Ⅰ-Ⅳ 】という解釈をします。
そして3段めの4小節め「F7」から急に「Key=E♭」に転調します。
「F7-E♭」という進行はコードネームだけ見ると唐突な感じもしますが、全音進行なのでそれほど違和感はないと思います。
そして「Key=E♭」の【 Ⅰ-Ⅴ-Ⅰ-Ⅴ-Ⅰ 】と進行し、「G7」からきれいに「Key=C」に戻っています。
まとめ
今回紹介した転調をかなりシンプルにして、まとめてみました。
音も一応作ったのですが、かなり短くまとめたのであまり転調感がありません。
ほんの参考程度にしてください。
1.新しいキーのドミナントからトニックに転調し、元のキーのドミナントモーションで戻る。
2.トニックからトニックにいきなり転調し、【 Ⅱ-Ⅴ 】で元のキーに戻る。
3.新しいキーの【 Ⅱ-Ⅴ 】を使い転調し、【 Ⅱ-Ⅴ 】で元のキーに戻る。
4.新しいキーの【 Ⅴ 】からドミナントモーションで転調し、戻るときは【 ♭Ⅱ 】からの半音進行。
5.元のキーの【 Ⅳ 】から全音進行で新しいキーのトニックに進行し、【 Ⅴ 】からのドミナントモーションで戻る。
さいごに
今回はビートルズによく見られる「短三度上への転調」を紹介しました。
もちろんビートルズだけが使う転調ではないのですが、なんとなくそれっぽく聞こえる気がします。
ぜひ作曲に使ってみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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