わちゃぴの音楽教室

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【和声学をPopsに!】ナポリの6度【コード進行をちょっとアレンジ♪】YouTube連動

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今回は「ナポリの6度」と呼ばれている和音を紹介しましょう。

 

 

はじめに

ナポリの6度」とはクラシック音楽などで使われている言葉です。

ナポリを中心として活躍していた作曲家たち(ナポリ楽派)がよく使っていたことからナポリという名がついたと言われています。

「6度」というのは転回形を表します。

これものちほど説明しましょう。

 

なりたち

では今回は「Am」で説明したいと思います。

クラシックの楽典なので「イ短調」と言いたいところですが、ポップスで使用することを前提としているので「Am」ということにします。

そしてクラシックでは使われることのない「コードネーム」を使って解説しましょう。

まずは「Am」のダイアトニックコードを見てください。

今回は3声のトライアドです。

 

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このなかの「Ⅱ」である「Bm(♭5)」に注目します。

 

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この「Bm(♭5)」のルートを半音下げます。

コードでいうと「B♭」になりました。

そしてこれを「第一転回形」にします。

これが「ナポリの6度」です。

 

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「第一転回形」とは【1-3-5】というボイシングを【3-5-1】にしたものです。

ちなみに「第二転回形」は【5-1-3】になります。

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「基本形」ではルートから「M3(長3度)、P5(完全5度)」という積み方になっています。

一方で「第一転回形」にすると1番下の音が【3度】の「ミ」になり、そこから「m3(短3度)、m6(短6度)」という積み方になります。

この「短6度」になっていることが「ナポリの6度」の「6度」という言葉の由来です。

 

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ちなみにマイナートライアドであっても「第一転回形」は「6度」が出てきます。

 

ナポリの6度の機能

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「Key=Am」の「トニック」「サブドミナント」「ドミナント」はこのようになります。

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ナポリの6度」である「B♭/D」は「サブドミナント」である「Dm」と構成音がとても似ています。

というわけで「ナポリの6度」は機能的にいうと「サブドミナント」になります。

サブドミナント」は「トニック」にも「ドミナント」にも進行できます。

それを使ってみるとこのような進行ができます。

 

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どちらもとても自然で安定した進行です。

ではこの「サブドミナント」を「ナポリの6度」に変えてみます。

 

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「Key=Am」の中にはない「♭シ」が使われていますが、それほど違和感はなく自然な進行に聞こえるのではないでしょうか。

 

実際の使用例

ナポリの6度」は本来マイナーキーで使われます。

たとえばこのようなカデンツァです。

 

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1小節めの「Bm(♭5)/D」は「Bm(♭5)」を「第一転回形」にしたものです。

 

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これを「ナポリの6度」にしましょう。

 

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先ほどの説明のようにBm(♭5)のルートを半音下げて第一転回形にしました。

これをコード進行の中で使ってみます。

そうするとこのようなサウンドになります。

 

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雰囲気がガラっと変わりました。

とてもおしゃれでかっこよくなった気がしますがどうでしょう。

有名な曲だとこんな感じで使われていたりもします。

 

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3小節めの3、4拍めの「D/F#」が「ナポリの6度」です。

 

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この曲は「Key=C#m」なので「Ⅱ」が「D#m(♭5)」です。

ルートを半音下げると「D」になります。

そしてそれを転回して「D/F#」にします。

右手だけ見ると転回形が違うようですが、左手が「F#」になっているので全体的には「第一転回形」になっているというわけです。

 

簡単な見つけ方

「Ⅱ」のコードのルートを半音下げて、さらに「第一転回形」にするというのはなかなか大変なので、もう少し簡単な見つけ方を紹介しましょう。

 

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このように「♭シ」を「#ラ」と読み替えると「Dm」の【5th】が半音上がった「Dm(#5)」と見ることもできます。

あまり見かけないコードではありますが、これだと転回しなくていいので楽かと思います。

 

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「Dm」は「Key=Am」では「Ⅳ」のコードです。

マイナーキーの「Ⅳ」のコードを「#5」にすると覚えてもいいと思います。

 

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例えば「Key=Cm」なら「Ⅳ」は「Fm」なので「Fm(#5)」にすればそれが「ナポリの6度」です。

元々の「ナポリの6度」である「D♭/F」と全く同じ構成音になっています。

 

応用編

ナポリの6度」というのはあくまでも「Ⅱ」のコードのルートを半音下げて、それを「第一転回形」にするという決まりがありますが、ポップスなどで使う場合は別にそれを厳格に守る必要はなく、「これはナポリの6度です」などと説明して使うわけでもありません。

というわけで、このおしゃれなサウンドをもっと自由に使ってみましょう。

 

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「Key=Am」なので「Ⅰ」のトニックは当然「Am」です。

ナポリの6度」を作るときのように「Ⅱ」の「Bm(♭5)」のルートを半音下げます。

「B♭」というコードができました。

これはただ「トニック」の半音上のコードなので見つけ方も簡単ですね。

度数でいうと「トニック」の「Ⅰ」にたいして「♭Ⅱ」ということになります。

 

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「トニック」が「Cm」なら「D♭」、「F#m」なら「G」、「B♭m」なら「B」ということです。

 

ではこれをこのまま転回せずに使ってみましょう。

 

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【B♭-E7-Am】は機能でいうと【サブドミナント-ドミナント-トニック】という進行になっているので、ちょっと変化がありながらも自然なサウンドになっていてかっこいいと思います。

 

では次はこの「B♭」というトライアドを「B♭△7」という4声のコードにしてみましょう。

 

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「B♭」のトライアドより「B♭△7」のほうが安定しているようにも聞こえます。

 

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本来の「サブドミナント」である「Dm」が「B♭△7」の中にすっぽり入っています。

「B♭」のトライアドより「B♭△7」のほうが「Dm」に似ているということです。

 

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スケールは「B♭リディアン」になります。

 

では次は「B♭7」にしてみましょう。

 

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これもなかなかかっこいいと思います。

ナポリの和音に似てはいますが、これは「サブドミナント」ではなく「ドミナント」です。

なぜなら「B♭7」は、本来の「ドミナント」である「E7」の裏コードだからです。

 

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これを見るとトライトーンである「#ソ(♭ラ)」と「レ」が共通しているのがわかります。

 

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裏コードということは、スケールは「B♭リディアン7th」になります。

 

「裏コード」の記事と「リディアン7th」の記事はこちらです↓

 

ナポリの6度」はマイナーキーに用いるものですが、ポップスなどではメジャーキーに使ってもおしゃれに響きます。

 

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ただの【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ】というコード進行です。

これのサブドミナントである「Ⅱ」を「ナポリの6度」にしてみましょう。

 

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すごくおしゃれな感じになりました。

「Key=C」における「D♭/F」は「サブドミナントマイナー」である「Fm」の代理になります。

 

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構成音が似ているのがわかると思います。

「D♭/F」は解釈を変えれば「Fm(#5)」とも言えるので似ているのも当然ですね。

 

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マイナーキーのときと同じように、メジャーキーでも「サブドミナントマイナーを#5にする」という覚え方でもいいと思います。

 

「G」を【C/G-G】というコード進行にしたのは、「D♭/F」の構成音である「♭レ」が「ド」に進行するのがもっとも安定するからです。

 

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でもポップスやロックに使うならそんなことに縛られることなく、いきなり「G」に進行しても問題はありません。

 

まとめ

1.

ナポリの6度」とはマイナーキーの「Ⅱ」のコードのルートを半音下げ、「第一転回形」にしたものである。

 

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2.

サブドミナント」である「Ⅳ」のコードの【5th】を半音上げることによっても見つけられる。

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3.

機能としては「サブドミナント」となるので「ドミナント」か「トニック」に進行すると安定する。

 

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さいごに

今回は「ナポリの6度」といわれる和音について紹介しました。

なりたちを理解したあとは、もっと自由に使っていいと思います。

転回形を変えたり4声にしたりしていろいろ試してみてください。

 

今回の解説動画はこちら↓

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