「天才たちのワンフレーズ」シリーズ、今回はOscar Petersonのフレーズを紹介します。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズです。
これは『Blues Etude』という曲でのアドリブです。
テーマは普通のブルースではないのですが、アドリブは12小節の「Fブルース」になっています。
今回取り上げたのはこの12小節の中、5小節めの「B♭7」からの4小節です。
この4小節の中で特に解説したいのは3小節めの「F7」でのフレーズです。
「7thコード」ではありますが、これは「Fのブルース」におけるトニックです。
フレーズ分析
ブルースにおけるアドリブなのですが、このように全くブルースっぽくないフレーズです。
かなりアウトしているようにも聞こえますが、実はそうでもありません。
度数で書くとこのようになっています。
「7th」「9th」「13th(6th)」はブルースにはよく使われる音で、アウトはしていません。
「#11th」は「♭5th」と同じ音なのでブルーノートと解釈できます。
となると、全くアウトしていないことになります。
しかしなぜかアウトに聞こえるのは、この「#11th」の使い方がブルーノートっぽくないからです。
というわけで今回のこの「#11th」はブルーノートという解釈はしないほうがよいでしょう。
最後の2つの音に度数をつけなかったのは、これらは「F7」で解釈するべきではないからです。
この「♭レ」と「シ」は、このように次の小節のアタマである「ド」の音に向かって半音上と半音下からアプローチするディレイドリゾルブだからです。
※ディレイドリゾルブに関してはこちらの動画を参考にしてください。
では最後の2つの音を省いたフレーズをもう一度見てみましょう。
「♮シ」をブルーノートと解釈しないのであれば、最初の5つの音が全て含まれるスケールは「Fリディアン7th」ということになります。
ドミナントコードに「リディアン7th」を使うことはありますが、ブルースのトニックに使うことはまずありません。
それだけでも変わったフレーズなのですが、ただ「リディアン7th」でアドリブをしてもこのようなサウンドにはなりません。
このように最初の4つの音が「Baug」のアルペジオになっているところがポイントです。
スケールの音を全部使うのではなく、コードにおいて大切な「Root」や「3rd」を省くと調性が曖昧になり浮遊感が生まれます。
それが時にはアウトしているように聞こえることがあります。
「B7」はトニックの「F7」にたいする裏コードです。
ようするにブルースのトニックに、裏コードの「aug」を使うと覚えればよいでしょう。
ちなみにこの部分にコードネームをつけるなら「F7(9,#11)」ということになります。
このコードはどこかで聴いたことがありませんか?
実はブルースのエンディングによく使われるコードです。
これはこちらの動画でも紹介しているので興味のある方はご覧下さい。
最近ではBlackadder Chord(ブラックアダーコード)などと呼ばれることもあるようですが、ブルースでは大昔から使われているコードです。
しかし今回はコードを弾くわけではないので、「F7(9,#11)」のアルペジオを弾くと考えるよりは「Baug」のアルペジオを弾くと考えるほうが簡単だと思います。
ちなみに「F7」で「Baug」のアルペジオを使うというアプローチを、Oscar Petersonはこの曲のアドリブで何回か使っています。
これは12小節ブルースの最初の4小節です。
この部分はかなり細かいコードチェンジがされていますが、4小節めの「F7」で「Baug」が使われています。
これも12小節ブルースの最初の4小節です。
3小節めの3、4拍めに「Baug」のアルペジオが使われています。
今回のフレーズとはまた違いますが、4小節めが「G」のアルペジオになっているところも面白いですね。
まとめ
では簡単なまとめです。
「Key=C」のブルースでやってみましょう。
「Cのブルース」の基本的なコード進行はこのようになります。
このなかのトニックである「C7」に使うということになります。
何度も「C7」が出てきますが、どこの「C7」に使っても問題ありません。
1.「C7」の裏コードである「G♭7」を想定する
2.「G♭7」を「G♭aug」にする
3.「G♭aug」をアルペジオにする
これだけです。
かなり変わったフレーズに聞こえますが、考え方はシンプルなので使いやすいと思います。
応用例
今回のフレーズと同じように「Fのブルース」でトニックに使ってみました。
3小節めの1拍めから3拍めまでが「Baug」のアルペジオになっています。
今回のフレーズとは違って、ブルースではなく「 Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ 」の「 Ⅴ 」に使ってみました。
スケールとしては「リディアン7thスケール」ですから、当然ドミナントコードにはいつでも使えます。
ただ「リディアン7thスケール」を使うというのではなく、その中から「aug」を抜き出し、それをアルペジオとして使うというのが今回のポイントです。
このようにワンコードのアドリブに使っても面白いアプローチができます。
この例では「A」と「E♭」が裏の関係ということで、「Am7」の中で「E♭aug」のアルペジオを使ってみました。
さいごに
今回はOscar Petersonのブルースでのワンフレーズを紹介しました。
理論的にはそれほどアウトしているわけではないのに、かなりアウトしているように聞こえるというちょっと変わったフレーズでした。
しかし考え方や使い方としてはそれほど難しくありません。
アドリブでちょっと意表をつきたいときなどは効果的だと思います。
ブルースに限らずぜひ試してみてください。
今回の解説動画はこちら↓
PREMIER SOUND FACTORY(プレミア サウンド ファクトリー) PIANO Premier "at first light"【シリアルメール納品】【DTM】【ピアノ音源】 価格:15,378円 |