今回は、変拍子ではないのにあたかも変拍子を使ったかのようにトリッキーに聞こえるリズムを紹介したいと思います。
2回に分けて紹介していきますが、今回はその第1回めということになります。
変拍子などを使うといくらでもトリッキーにはできるのですが、今回はあくまでも「4/4拍子の中で使えるもの限定」で進めたいと思います。
説明だけはわかりにくいので、まずはちょっとしたサンプルを聴いてみてください。
譜面を見るとわかるように、ずっと「4/4拍子」であり、音符も3連符などは使っていません。
16分音符の組み合わせだけでちょっと変拍子になったように聴かせているだけです。
4拍子と3拍子が同時に進行しているように聞こえませんか?
このように違うリズムが同時に進行しているようなものをポリリズムと呼んだりもします。
しかし、このテクニックは歌もののメロディーなどには向いていないかもしれません。
アドリブソロやイントロ、ちょっとしたシカケなどに使うのが良さそうですね。
4分音符の3つどり
ではさっそく簡単なところから見てみましょう。
ただの4分打ちです。
しかし、3小節めからアクセントの位置をずらしています。
「4分音符3つずつ」をひとまとめにした感じです。
これを「4分音符の3つどり」などといいます。
全音符、2分音符、4分音符、8分音符、16分音符など、付点がつかずなおかつ連符でもない音符は、偶数でまとめるのが基本です。
8分音符が2つで4分音符と同じ音価ですし、16分音符4つで4分音符と同じ音価です。
偶数でまとめるのが普通なのですが、今回はあえて奇数でまとめてトリッキーに聴かせていきたいと思います。
次回は逆に「3連符を偶数でまとめる方法」について紹介します。
では次のサンプルを見て下さい。
今度は先ほどのアクセントの位置に左手を合わせてみました。
3小節めから「3拍子」になったように聞こえますね。
もちろん「3/4拍子」ということにしてしまってもいいのですが、今回は「4/4」のまま進めます。
このままずっと「3/4」のまま最後まで曲が進めばいいのですが、一部分だけこうやってトリッキーに聴かせてまた元に戻したり・・・といったときに、「3/4」にしたり「4/4」にしたりというややこしい表記をしなければいけなくなってしまいます。
それならずっと「4/4拍子」のままで表記したほうが譜面も見やすくていいはずです。
ではさらに「3つどり」を強調してみます。
ワルツによくあるような音型にしてあります。
このようにアクセントをずらすだけではなく、音の高さを3つずつまとめるとより錯覚を起こし、聴いている人はすごく不思議なリズムに感じることでしょう。
8分音符の3つどり
では同じように8分音符でやってみましょう。
これも先ほどと同じように3つずつアクセントをつけてみました。
でも左手が2拍ずつアクセントをつけているので、ごくふつうにしか聞こえません。
ではこれではどうでしょう。
左手を右手と同じアクセントの場所に置いてみました。
拍子が変わったように聞こえますね。
ではさらにワルツっぽくしてみます。
かなり不思議に聞こえます。
聴いている人に錯覚を起こさせたいときは、リズムだけではなくこのように音の高さや音型も重要になってきます。
ではこれをさらにこのようにしてみます。
先ほどのワルツっぽいリズムに合わせてコードも変えてみました。
こうなるともう「4/4拍子」には聞こえませんね。
聞こえはしませんが「4/4拍子」のままなので、いつでもふつうに戻すことができます。
変拍子にするなら当然他のミュージシャンもわかってないといけないので、譜面を書くか、もしくは事前に変拍子になる場所などを伝えなければいけませんが、このように「4/4拍子」の中でアドリブなどする場合は、ソリストが勝手にやっても大丈夫です。
勘のいいドラマーやベーシストなら、すかさずそれに合わせてくれたりします。
今回の1番最初のサンプルはそのような感じを想定して作ってあります。
ピアノが遊びだしたらそれを聴いてドラマーやベーシストが合わせていく・・・といった感じです。
ジャズなどではよくあります。
それをふまえてもう一度聴いてみましょう。
3小節めの4拍めあたりからベースやドラムも合わせ始めているのがわかると思います。
ちょっと話がそれたので戻しましょう。
8分音符3つどりの使用例
ではちょっとコード進行の中でやってみます。
上の段はギターソロで、下の段はギターのバッキングです。
3小節めの「G」のところから「3つどりのフレーズ」になっています。
しかしリズムはそのまま同じ8ビートなので、聴きやすいと思います。
ではこれはどうでしょう。
下の段のギターやベース、ドラムをギターソロの3つどりに合わせてみました。
バッキングを合わせることにより、3つどりが強調されて面白いサウンドになっていると思います。
16分音符の3つどり
では次は16分音符でやってみましょう。
1小節めの3拍目から「16分音符の3つどり」になっています。
しかしこれぐらい短いと全然変わった感じには聞こえません。
聴いてる人に「変拍子かな?」と錯覚を起こさせたいような場合は、ある程度3つどりを続けたほうがいいでしょう。
これぐらいあったほうが面白いと思います。
ではこれにリズムを合わせてみましょう。
なかなか面白い感じに聞こえると思います。
テンポが変わったように感じます。
ではこれをもっと発展させてみます。
これは「16分音符の3つどり」をして、その真ん中の音を抜いてジャズの4ビートっぽく聴かせてみたものです。
ピアノ、ベース、ドラムも4ビートっぽくしてみました。
一瞬こういうリズムになったように錯覚してしまいます。
アドリブでソリストだけがやるのもいいですが、こうやってみんなが4ビートっぽくやるとかなり意表をついて面白いと思います。
これを何小節も続けていると、やり始めた本人もわからなくなってしまい、小節を見失ってしまう危険性もあるので気をつけましょう!
今のはけっこう難しいサンプルでしたが、もっと単純なものでも面白くすることはできます。
ただ【ミ-レ-ド】という3つどりを繰り返しているだけです。
これをこのようにします。
3つどりの頭だけを弾いたものです。
そして、そのリズムでいかにも4拍子といったメロディーを弾いてみます。
2小節めの2拍目だけ延ばしてありますが、他は最初のサンプルと全く同じです。
リズムやテンポがどうなったのかわからなくて面白いと思います。
リズムをミュートしてメロディーだけ聴くとこんな感じになっています。
こんな風にリズムを取ってしまうと、拍子がさらにわかりにくくなって面白いかもしれません。
こういうときに弾くメロディーは、単純でわかりやすく完全に4拍子のものが効果的でしょう。
16分音符5つどり
これまで「3つどり」を主にやってきたのですが、他にもいろいろあります。
まずは「5つどり」を見てみましょう。
16分音符を5つずつのまとまりにしてあります。
クリックを聴くと1拍ずつのアクセントがだんだんずれていくのがわかると思います。
テンポを上げてオケを加えるとこんな感じでしょうか。
これもかなりトリッキーに聞こえますね。
16分音符7つどり
では次は「7つどり」です。
これもクリックを聴くとアクセントがずれていってるのがよくわかります。
ではテンポを上げてみます。
ベースやピアノも「7つどり」にアクセントを置いているので難しく聞こえますね。
いろいろミックスした使用例
「5つどり」や「3つどり」を混ぜて使うのもまた面白い効果が得られます。
こんな感じです。
「Gmワンコード」のアドリブといった感じですが、「5つどり」が始まる5小節めからピアノとギターをユニゾンにしてあります。
アクセントを見てみると、「5つどり」だったり「3つどり」だったり、またふつうに4つにしたりとめまぐるしく変わっていくのがわかると思います。
難しい変拍子に聞こえますが、ただの16分音符を弾いているだけというのが面白いところです。
トリッキーなイントロ
最後にちょっとイントロに使ってみましょう。
まず譜面を見ずにこれを聴いてみてください。
どうでしょう。
このように聞こえたのではないですか?
ではこれを聴いてみてください。
リズムが入ったところでテンポが変わったように聞こえます。
この譜面を見てください。
実はこのようになっていました。
「16分音符の3つどり」でしかも「音符が2つで1組」のようなフレーズを弾いているので、4小節めからピアノが8分打ちを始めたときちょっとした錯覚を起こしてしまいますね。
このような使い方も意表をついておもしろいのではないでしょうか。
まとめ
というわけで、今回は変拍子ではないのに変拍子のように聞こえてしまうトリッキーなリズムについて紹介しました。
歌メロには使いにくいと思いますが、イントロやソロ、シカケ、エンディングなどに使うと面白いサウンドになるので試してみてください。
次回は「3連符を偶数どり」する方法をいろいろ紹介したいと思います。
今回の解説動画はこちら↓