今回は「ターンバック」というものを紹介したいと思います。
ターンバックとは
「ターンバック」とは、簡単にいうと曲の最後からアタマに戻るためのコード進行です。
「ターンアラウンド」と言われることもあります。
ジャズでスタンダードナンバーなどを演奏する場合、1コーラスを何度も繰り返すことになります。
1コーラスめはテーマを演奏し、そこからアタマに戻って同じコード進行で何度もアドリブを演奏し、最後にまたテーマを弾いて終わるというのが一般的な演奏方法です。
Ⅱ-Ⅴを使う
具体的に見てみましょう。
これは有名なスタンダードナンバー『All Of Me』です。
「Key=C」で演奏することも多いのでこの曲を選んでみました。
まずこの譜面の通り32小節のテーマを弾くわけですが、そのあとまたアタマに戻ってアドリブが始まります。
そして、この32小節のコード進行をずっと繰り返しながらアドリブをやるということになります。
例えばこのまま繰り返すとこのようになります。
ちょっと1コーラスが長いので、最後の8小節からアタマに戻ってアドリブに入ってみます。
これだと曲のオワリからアタマにかけて「C」が4小節が続いて、ちょっとしまらない感じがしませんか?
このようなとき、アタマに戻りやすいようにコード進行を付け足すのが「ターンバック」です。
たとえばこのようにした方がスムーズに、そしてかっこよく聞こえませんか?
このターンバックを作る方法を簡単に解説していきたいと思います。
では具体的にやってみましょう。
曲のアタマのコードは「C」なので、もっともそれに進行しやすいコードはドミナントである「G7」です。
このように「C」が2小節続くのが元々のコード進行です。
最後の1小節を「G7」に変えます。
これがもっとも簡単な方法です。
最後に「C」が2小節続くよりずっと自然にアタマに戻れます。
しかしこれではちょっと単純すぎて面白くないということで、ジャズミュージシャン達はいろんなコード進行を付け加えます。
テンションも自由に加えて問題ありません。
ではこれを見てください。
(サンプルにはいろんなテンションを加えてありますが、全部表記するとコードネームが見にくくなってしまうのであえて表記はしません。)
(1)これがターンバックをつける前のオリジナルコードです。
(2)2小節めにドミナントである「G7」を付け加えます。
(3)次に「G7」を【Dm7-G7】という【Ⅱ-Ⅴ】に分割する方法があります。
ドミナント7thコードはいつでも【Ⅱ-Ⅴ】の形に分割してもかまいません。
(4)次は「C」が1小節だったところを代理コードである「Am7」を足し、2拍ずつの【C-Am7】という進行にしてみました。
すると【C-Am7-Dm7-G7】という【Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ】になりました。
Jazzでよく聴くターンバックっぽくなってきました。
(5)「Am7」を「A7」に変えることもできます。
そうすると【A7-Dm7】もドミナントモーションになり、よりスムーズに進行します。
裏コードを使う
では次は裏コードを使ってみましょう。
(1)では先ほどの【C-A7-Dm7-G7】から始めてみましょう。
(2)まずは「G7」を裏コードである「D♭7」に変えてみました。
(3)「A7」も裏コードの「E♭7」に変えることができます。
(4)【A♭m7-D♭7】という【Ⅱ-Ⅴ】を使ってみます。
【A♭m7-D♭7】という【Ⅱ-Ⅴ】はこのように導き出せます。
では次は「C」を使わないパターンを見てみましょう。
(1)まずは「C」を使ったパターンです。
(2)そして「C」を代理コードである「Em7」に変えたパターンです。
これはメロディーを無視したリハーモナイズです。
メロディーの最後の音は「ド」なのですが「Em7」においてはアボイドノートとなるため、メロディーの「ド」を弾かないようにするほうがいいでしょう。
そもそもJazzではメロディーをそのまま譜面通りのリズムや音のまま弾くことは少ないので、多少変えてもまったく問題ありません。
「C」を「Em7」に変えたことにより【Em7-A7】という【Ⅱ-Ⅴ】ができました。
【Em7-A7】と【Dm7-G7】の2つの【Ⅱ-Ⅴ】がつながっている形です。
【A7-Dm7】もドミナントモーションなのでとてもスムーズにつながります。
(3)それぞれの【Ⅴ】を裏コードに変えることもできます。
(4)次は【Ⅱ】を7thコードに変えてみましょう。
(5)そして次はそれを裏コードにしてみます。
ここまでくると原曲とはかなり違うので、好き嫌いが分かれるかもしれません。
ディミニッシュを使う
最後はディミニッシュを使うパターンです。
「Dm7」に半音上下のディミニッシュコードからアプローチしています。
この「E♭dim7」を使うパターンが、この『All Of Me』では比較的多く使われる気がします。
ピックアップソロ
これまではバッキングもターンバックのコードを弾いていましたが、リズムがブレークしてソリストが1人で演奏するというのもよく聴かれます。
このようなものです。
これは特に「ピックアップ」とか「ピックアップソロ」などと呼ばれます。
基本的に1人で弾くのでコードはなんでもいいのですが、これまで紹介したターンバックを想定しながら弾くとかっこよくまとまるのでおすすめです。
先ほどの例はこのようなコードを想定してのピックアップでした。
これはまたちがうコードを想定したピックアップです。
2拍ずつコードが変わるのでテンポが速いとかなり大変なのですが、こんなときおすすめなのは「ドレミソ」フレーズです。
この例では「E♭7」「A♭7」「D♭7」でそれぞれのコードの【Root】からの「ドレミソ」を弾いています。
これだとかなり速いテンポでも弾きやすいのではないでしょうか。
この「ドレミソ」フレーズについては【弾いて覚えるドレミソ】シリーズでくわしく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
※リンクはこちら↓
イントロに使う
イントロというのは、メロディーのアタマにうまくつなげなければなりません。
ターンバックはアタマのコードにつなげるものですから、当然イントロにも使えます。
ジャズでは即興でイントロを作りますが、そのようなときにもターンバックで紹介したコードが全て使えます。
例えば一つ作ってみましょう。
この例ではコードが2拍ではなく1小節ずつ変わっていますが、コード進行はターンバックで紹介したものそのままです。
さいごに
というわけで今回は「ターンバック」について解説してみました。
今回は基本的なものを紹介しましたが、他にもいろいろなコードが考えられます。
ぜひ自分で見つけてみてください。
スタンダードジャズなどを演奏する場合は必ずと言っていいほど出てきますので、ぜひマスターしておくことをおすすめします。
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