今回はRed Garlandなどがよくやる「簡単ブロックコード奏法」を紹介しましょう。
はじめに
Red Garlandは1984年に亡くなるまで多くの名盤を残し、Miles Davisのアルバムにも参加するなどした名ピアニストです。
ブロックコードでの演奏も多く、とてもぶ厚いハーモニーを聴かせてくれます。
サンプルを作ったので聴いてみてください。
これはMiles Davisのアルバムでの『Bye Bye Blackbird』という曲の中のアドリブ部分です。
とても重厚でかっこいい演奏です。
譜面を見るととても難しそうですが、実はそれほど複雑なことはやっていません。
コードネームはテンションは表記せず、元の曲のコードにしてあります。
右手の分析
まず右手を単音のメロディーだけにしてみましょう。
1〜3小節めは「Fのマイナーペンタトニック」と【♭5】を使ったブルースフレーズです。
「Gm7」ではAvoidNoteである「♭ラ」が出てきますが、ここはコードを無視して1〜3小節めにかけてただ「Fのブルース」を弾いたという解釈でいいと思います。
それ以外はコードに対応するスケールの音しか使っていません。
「A♭m7」にたいして「♭レ」は【11th】の音です。
まずこのフレーズをオクターブにします。
次に、間にメロディーの音にたいする【5th】を加えます。
その音がキーと外れる音であってもおかまいなしです。
4小節めの「C7」では「♮シ」がありますが、これはAvoid Noteですし、左手ともぶつかっています。
1小節と3小節めの「F」ではちょっと多めに音を加え、「F6」のボイシングになっています。
4小節めの「Gm7」でも「F」のときと同じ「F6」のボイシングを弾いていますが、これは「Gm7」から見ると「Gm7(9,11)」ということになります。
1小節めから7小節めまではメロディーにたいして【5th】の音を加えてありますが、8小節めの「D7」だけは【5th】ではなく【♭5th】、ようするに「完全5度」ではなく「減5度」を加えています。
たとえば
「F」ではメロディーの「ド」にたいして【5th】の「ソ」
「C7」ではメロディーの「♭ミ」にたいして【5th】の「♭シ」
「Gm7」ではメロディーの「レ」にたいして【5th】の「ラ」
を加えています。
「D7」ではメロディーの「#ファ」にたいして【♭5th】の「ド」
「ラ」にたいして【♭5th】の「♭ミ」
「ド」にたいして【♭5th】の「#ファ」
が加えられているということです。
しかし基本的にはメロディーをオクターブで挟んで、間に【5th】を入れるだけのシンプルなボイシングです。
たとえばこれを「シアリング奏法」っぽくやるとこのようになります。
そのキーにない音はディミニッシュでボイシングしたりと、かなり複雑になってきます。
左手はメロディーのオクターブ下を弾いています。
※シアリング奏法についてはこちらで詳しく解説しています↓
これに比べるとRed Garlandの奏法はそれほど理論的に考えなくてもいいので、ずいぶん楽だと思います。
左手の分析
ではRed Garlandの左手を見てみましょう。
1つのコードにたいして1つのボイシングになっています。
ようするに、コードが変わるまでずっと同じ音を押さえているだけということです。
それぞれのコードにたいしてどういう音を弾いているか見てみましょう。
テンションが入っているぶん【Root】や【5th】が省略されています。
「C7」と「D7」にだけオルタードテンションが入っています。
4小節め2拍めと、7小節めの「Gm7」と、6小節めの「A♭m7」は、テンションは入っていません。
そして右手とまったく同じリズムを弾いています。
右手と左手を合わせると常に7音、多いところでは9音も同時に弾いているので、ぶ厚い音になるのも当然ですね。
もっと簡単にするなら、このように右手をオクターブにしてしまうのもいいでしょう。
これでも左手の4音が常に右手と同時に鳴るので、けっこうぶ厚く聞こえると思います。
応用例
では他のメロディーでやってみましょう。
このようなメロディーでやってみます。
それをまずオクターブにします。
そして【5th】を間にはさみます。
ところどころ【♭5th】をはさんでいますが、そのほうが自然なサウンドだと思ったからです。
たとえば「C△7」の小節で「シ」がありますが、その【5th】は「#ファ」です。
ここでは「#ファ」より「♮ファ」のほうが自然に聞こえます。
そしてこれに左手でコードを加えます。
リズムは右手と全く同じにします。
「C△7」「Dm7」はそのままのコードですが、「E7」には【♭9th】、「Am」には【9th】を入れてみました。
番外編
番外編としてもう一つRed Garlandの『My Romance』という曲を紹介します。
最初の部分だけサンプルを作ってみました。
これに関しては詳しくは解説しませんが、一例として見てください。
今回の例とは右手のボイシングがかなり違いますが、左手は同じような感じです。
同じコードのときは同じボイシングで通しています。
ただ4小節めと8小節めの「Fm7」だけは途中で転回しています。
そしてリズムは右手とほぼ同じです。
右手はメロディーをオクターブで弾き、その間に2音足した4声のコードを弾いています。
テンションもかなり入っているので、ぜひ分析してみてください。
このように右手が動いているときでも、左手はその小節のコードだけを右手と同じリズムで弾いていればよいという例です。
まとめ
簡単にまとめてみましょう。
1.コードにたいしてメロディーを作る
2.メロディーをオクターブにする
3.オクターブの間に【5th】をはさむ
4.左手で右手のフレーズと同じリズムでコードを弾く
かなりシンプルでわかりやすいのではないでしょうか。
さいごに
というわけで今回は、Red Garlandなどがよくやる「簡単ブロックコード奏法」について紹介しました。
シアリング奏法などと比べると理論的にもわりと簡単なので、編曲はもちろんのこと、アドリブにもじゅうぶん使えると思います。
バラードのテーマを弾くときなどもゴージャスでいい感じになるのでおすすめです!
今回の解説動画はこちら↓
一部を除き、ほとんどこちらのピアノ音源を使用しています。
音がいいわりに動作が軽いので気に入っています。
しかもピアノ音源にしては安いです♪
Synthogy ( シンソジー ) Ivory II Italian Grand◆【安心の国内正規代理店取扱い商品】【台数限定特価 】 ◆【 ピアノ 音源 】 価格:17,600円 |