今回は「ピアノでJazzを弾くときの左手のバッキング」を初心者向けに解説していきたいと思います。
もちろんちゃんとマスターするには何年もかかります。
そこでこの動画ではそんなに本格的ではなく、初心者でもなんとなくそれっぽく聞こえるように弾けることを目指しましょう。
今回は左手だけを解説しますが、両手を使ったバッキングはこちらの記事で解説しています。
ピアノバッキングJazz編↓
はじめに
もちろんJazzの左手といっても数えきれないほどいろんなパターンがあります。
ストライドピアノであったり、ウォーキングベースを左手で弾いたり・・・
全てを1つの動画で解説するのは不可能です。
そこでこの動画では、ピアノトリオのときに左手で弾く基本的なバッキングを紹介したいと思います。
左手は基本的に、ピアノでいうとセンターの「ド」付近の音域で弾くことが多いです。
このあたりがコードもちょうどきれいに響きます。
もちろんルートを弾くときなどはもっと低い音域で弾くこともありますし、テンションを入れたコードをもっと高い音域で弾くこともあります。
具体的なボイシング例
【Root】を弾く場合はこのようなボイシングが一般的です。
それぞれ【Root-5th】、【Root-5th-7th】、【Root-3rd-7th】を弾いています。
しかし、ベースが演奏しているときはピアノが【Root】を弾くことは少ないです。
ベースがいる場合はこのように【3rd】と【7th】だけでもじゅうぶんです。
しかしハーモニー的にはJazzっぽさが少し足りないかもしれません。
リズムは特に決まりはありませんが、8分ウラに入れるとそれっぽく聞こえます。
リズムに関しては後ほど解説しましょう。
これは【3rd】と【7th】に【9th】を付加したものです。
かなりJazzっぽい雰囲気になってきました。
【9th】を付加する場合は基本的に【Root】を省きます。
4声にしてみました。
これがもっともよく使われるボイシングです。
「Dm7」では下から【3-5-7-9】、「G7」は【7-9-3-13】、「C△7」は【3-5-7-9】というボイシングになっています。
このテンションを含めた4声がピアノトリオで多く使われるボイシングです。
【9th】を付加する場合は【Root】を、【13th】を付加する場合は【5th】を省きます。
オルタードテンションを入れてみました。
「Am7」では下から【7-9-3-5】、「D7」は【3-♭13-7-♭9】、「G△7」は【7-9-3-5】になっています。
ここで気づくのは、「m7コード」は下から【3-5-7-9】か【7-9-3-5】のどちらか。
「7thコード」は【5th】が【13th】になり、【3-13-7-9】か【7-9-3-13】のどちらかになっているということです。
これが最も基本的なボイシングです。
もちろんこのどちらかでなくてはいけないということではありませんが、まずはこれをマスターするのがよいでしょう。
簡単に言ってしまえば【3rd】から積むか、【7th】から積むかのどちらかということになります。
【3-5-7-9】 or 【7-9-3-5】
では、どちらのボイシングにするかをどうやって決めるのでしょうか。
次の譜面を見てください。
先ほど「Dm9」は【3-5-7-9】と積んでいましたが、【7-9-3-5】にしてみましょう。
そしてオクターブ変えて2つ作ってみました。
これでももちろん悪くはありません。
しかし左のほうはサウンドはいいのですが、音域がわりと高くなっているので、右手の邪魔になってしまいそうです。
オクターブ下げたほうは音域が低いわりにクローズドボイシングなので、少しにごってしまっているように思います。
「Am9」は【7-9-3-5】でしたが、それを【3-5-7-9】にしてオクターブで2つ作りました。
これも左のほうだとかなり右手の動きを狭めてしまいそうですし、オクターブ下げたほうだとちょっと低いような気がします。
このようにどちらにするかは音域で決めることになります。
何度も言いますが高いからだめ、低いからだめということはありません。
あくまでも自分で決めることです。
特に高い音域はサウンド的には綺麗に響くので、右手にぶつかりさえしなければ全く問題ありません。
一般的にはこれぐらいの音域で弾くことが多いということを理解しておけばよいでしょう。
理解したうえであえて高く、または低くするというのもいいと思います。
音の省略
左手のコードは省略してもかまいません。
音を付加するより省略するほうが簡単なので、まず4声でのボイシングを覚えてからそこから音を減らしていくといいと思います。
「Gm9」
【7-9-3-5】の【7】を省略しました。
「D7(#9,♭13)」
【3-♭13-7-#9】の【♭13】を省略しました。
「G7(♭9,♭13)」
【7-♭9-3-♭13】の【♭9】を省略しました。
「A♭△7」
【5-7-1-3】の【5】を省略しました。
すべて3声にしてみました。
これもまたよく使われるボイシングです。
このように4声から音を省略するとすっきりして、これはこれでとてもいいサウンドです。
もちろん2声にしても大丈夫です。
左手そのものを省略
左手は右手の伴奏ということですから、あくまでも右手が優先です。
左手が右手の邪魔になるときは、左手そのものを省略しても全く問題ありません。
2小節めは右手が低くなるので左手は弾いていません。
3小節めで右手が高くなってきたところでまた弾き始めています。
左手が入っていなくてもなんの違和感もないと思います。
Keith Jarrettなどは、トリオでスタンダード曲を演奏しているとき72小節間、一度も左手を弾かずに右手の単音フレーズだけという演奏もあるぐらいです。
このように、右手の邪魔をしないところまで下げて左手を弾くという手もあります。
この例では【Root】、【Root-3rd】を弾いています。
左手のリズム
リズムも特に決まりはありませんが、このように8分ウラにところどころ入れるとそれっぽく聞こえます。
ここからは一流ピアニストたちの演奏を元に解説していきます。
これはBill Evansのフレーズです。
このように1拍めから4拍めまでどのウラに入れても大丈夫です。
ここで大事なことは、「コードが変わるすぐ前のウラ」の場合は、先に次のコードを弾く場合が多いということです。
1小節めの「G7」から3小節めの「G7」までは、すべて本来のコードが変わる位置より半拍早く弾いています。
これはRed Garlandのフレーズです。
左手は8分ウラに入れるとそれっぽいと言いましたが、このように拍のアタマに入れることももちろんあります。
3小節めの「F」や、5小節めの「C」、7小節めの「D7」は先ほど説明したように半拍早く入ってきています。
これもBill Evansのフレーズです。
このように、右手のフレーズに左手を合わせるというのもよくあるテクニックです。
右手のフレーズが補強されてぶ厚くなります。
先ほどとは逆に、右手のフレーズの隙間に入れるというのもよくあります。
これはChick Coreaのフレーズです。
右手に応えるように左手が入ってきます。
グルーブ感が増してとてもかっこいいと思います。
まとめ
左手のバッキングと言ってもいろんなパターンがあり一概には言えないのですが、もっとも基本的な弾き方をまとめてみたいと思います。
1.
ボイシングは【3-5-7-9】または【7-9-3-5】と積む。
【13th】を入れる場合は先ほどの積み方のまま【5th】を【13th】に変える。
ちなみに【9】が【♭9】や【#9】になっても、【13】が【♭13】になっても積み方は変わりません。
2.
8分ウラに入れるとよい。
3.
コードの変わり際は半拍早く弾く。
さいごに
簡単に解説しましたが、一番いいのは弾いて覚えることです。
弾く前にボイシングなどを考えていては間に合いません。
コードネームを見たとたん指がその形になるまで繰り返し弾きましょう。
今回解説した4声のボイシングを覚えるための記事はこちらです↓
全てのキーの「m7」「7」「△7」が覚えられるようになっているので、ぜひ参考にしてみてください。
4声が即座に弾けるようになれば、そこから3声や2声にするのもかなり楽になるはずです。
というわけで今回は、初心者向けのJazzの左手バッキングを解説しました。
アドリブなどと違って地味ですが、Jazzピアノをやるなら避けては通れないので、この機会にぜひマスターしてみてください。
今回の解説動画はこちら↓
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