「天才たちのエンディング」シリーズ、今回はThelonious Monkのエンディングです。
このシリーズでいままで紹介してきたものとは少し毛色が違うのですが、とても面白いことをやっていたので紹介します。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
これは『Blue Monk』という曲でのエンディングです。
この4小節めからのルバートの部分を解説してみたいと思います。
フレーズ分析
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
この曲は「Key=B♭」のブルース進行です。
今回のフレーズは、トニックの「B♭7」で終わってからのカデンツァのような部分になります。
「♭ラ-♭ド-♮ド」という同じフレーズを3回繰り返したあと「♭ラ-♮ド-♭ド」で終わります。
その間に左手でルートである低い「♭シ」が時々鳴ります。
そして全ての音はサスティンペダルによって延び続けています。
楽譜的にはこのような書き方のほうが正しいのでしょうが、わかりにくいので今回はちょっと変則的な譜面で解説したいと思います。
この4つの音が最初に鳴って、それがサスティンペダルで最後までずっと鳴っています。
それをふまえた上で分析してみましょう。
最初の4音が鳴ったあとに弾かれる「♭ラ-♭ド-♮ド」というフレーズの部分で鳴っている音はこのようになります。
全ての音が延びているので、これらの音が全部鳴っているということになります。
不思議なところは【♭9th】と【♮9th】が同時に使われているところです。
これは一般的なジャズ理論では間違っているということになります。
しかしこれが不思議で独特な雰囲気を醸し出していて、とても面白いサウンドになっています。
最後の「♭ラ-♮ド-♭ド」が弾かれる部分はこのようになります。
ここでも【♭9th】と【♮9th】が同時に使われています。
【♭9th】と【♮9th】の順番が最後だけ入れ替わっているのが、またなんとも絶妙だと思います。
これはコードネームで書くと、このように「B♭7(♭9,♮9)」と表記するしかなさそうです。
キーを変えてみる
では違うコードで見てみましょう。
これは「G7」です。
まず「G7」のコードトーンである「Root-5th」を左手で弾き、同時に右手で「Root-3rd」を弾きます。
そしてサスティンペダルを踏んだまま【7th】【♭9th】【9th】を順番に弾きます。
最後は【7th】【9th】【♭9th】という順番になります。
まとめ
今回のフレーズを簡単にまとめてみましょう。
【7th】の音が含まれているため、「ドミナント7thコード」にしか使えません。
しかし今回の例はドミナントではなくブルースのトニックである「7thコード」に使っています。
音の並びがポイントなので、ボイシングはそれほど気にすることはないと思います。
「C7」で作ってみましょう。
まず「C」のトライアドである【Root-3rd-5th】を弾きます。
そしてそのトライアドが延びている上で、【7th】の「♭シ」、【♭9th】の「♭レ」、【9th】の「レ」を順番に弾くということになります。
さいごに
今回はかなり特殊なので応用例は省きます。
なかなか使いにくいとは思いますが、こんな例もあると知っておくのはいいことです。
たとえ理論から外れていたとしても「自分がいいサウンドだと思えば使うべき」という、いい例だと思います。
それにしてもこの独特なハーモニー感覚、さすがはモンクですね。
モンクへのオマージュとしてカデンツァに使ってみるのもいいかもしれません。
今回の解説動画はこちら↓
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