今回は「ホールトーンスケール」を紹介しましょう。
そしてそのときに使われるコード、「aug」についても解説したいと思います。
ホールトーンスケール・augコードの構成音
どこかで聴いたことありませんか?
ちょっと不思議な感じを出したい時によく使われているような気がしますね。
「ホールトーン」というのは「全音」という意味です。
半音2つぶんの間隔ですね。
そして全ての音を「全音」の間隔で並べたスケールが「ホールトーンスケール」というわけです。
日本語では「全音音階」と呼ばれます。
では譜面で見てみましょう。
見てのとおり、メジャースケールなどと比べると音が1つ少ないことがわかりますね。
全ての音が「全音」で並んでいるということは、6つのどの音から始めても当然「全音間隔」で並ぶことになります。
「C、D、E、F#、G#、B♭ホールトーンスケール」は全て同じ構成音ということになります。
同じように「D♭、E♭、F、G、A、Bホールトーンスケール」は同じ構成音です。
というわけで「ホールトーンスケール」は、2種類覚えれば12個全ての音からの「ホールトーンスケール」が使えるということになります。
6つの音は【Root】から見るとそれぞれこのような構成音になります。↓
このスケールはコードで言うと「Caug」または「Caug7」で使います。
「aug」というのは【#5】という意味です。
「C7(#5)」または「C7+」などと表記することもあります。
【7th】を入れない三和音の「aug」というコードも、スケールと同じで音が等間隔で並んでいます。
というわけで「Caug」と「Eaug」と「G#aug」は構成音が全く同じになります。
ベースが弾いた音が【Root】ということになり3つのコードうちどれなのかが特定されます。
ピアノだと右手が「Caug」を弾いていても・・・
左手で「E」を弾けば「Eaug」
左手で「G#」を弾けば「G#aug」
ということになります。
ホールトーンスケールに含まれるテンション
ではテンションを見てみましょう。
「ホールトーンスケール」に含まれるテンションは【9th】と【#11th】です。
そしてメロディーとぶつかりさえしなければいつ加えてもかまいません。
これを聴いてみてください。
「ホールトーンスケール」に含まれる6つの音を全て弾いてみました。
綺麗に響きますね。
ようするに「Avoid Note」がないスケールなのです。
このスケールはほとんどの場合、ドミナントコードで使います。
「キーがC」でいうと「G7」です。
「G7」で使う「ホールトーンスケール」は当然「Gホールトーンスケール」です。
ただし「G7」のままではコードの【5th】の音と「ホールトーンスケール」の【#5th】の音がぶつかってしまうので、「G7」の【5th】を半音あげて【#5】にします。
「Gaug7」では「ホールトーンスケール」を使用しますし、逆に「ホールトーンスケール」を使いたいときはコードを「aug」または「aug7」にしなければなりません。
いつでもコードとスケールは一体です。
「コードトーンが全て入っているスケールを使う」 というのが基本となります。
コード進行の中で使ってみる
ではコード進行の中で見てみましょう。
「G」を「Gaug」にしてみる
まず普通の「G」を使ったパターンです。
この「G」を「Gaug」にしてみましょう。
こんな使い方をよく耳にします。
こういう使い方だとメロディーがない場所なので、いつでも「G」を「Gaug」に、「G7」を「Gaug7」にすることができます。
あまりシリアスな曲や悲しい曲では使えないかもしれませんが、可愛くコミカルな曲には非常によく合います。
「さあ行こう!」みたいな前に進む感じもあるような気がしますが、どうでしょう。
トップノートを動かしてみる
「G7-C」を「Gaug7-C」にすると「#レ」から「♮ミ」への半音の動きが作られスムーズに進行します。
「G7-Gaug7-C」と進行させるとさらに半音進行を増やすこともできます。
こんな感じです。↓
この例では半音進行をトップノートにもってきていますが、内声で動かしてもかまいません。
この例ではトップノートを全音でぶつけていますが、このへんは好みなので・・・
ぶつかるのがいやな時はぶつかっている音を抜いたり、オクターブ下げたりしてみるのもよいでしょう。
では、これをコード進行の中で使ってみましょう。
1小節目から4小節目にかけて、トップノートがきれいに上昇しているのがわかると思います。
このようにコードをつなげる時は、うまく転回して横にスムーズにつながるようにするとよいでしょう。
トップノートがあまり大きく跳躍しないようにするほうがきれいに聞こえます。
ではこのようなコード進行にメロディーをつける場合はどうすればよいのでしょうか。
このコード進行は「キーがC」なので「Gaug」以外は白鍵だけで大丈夫です。
そして「Gaug」は「ホールトーンスケール」を使うことになります。
だからといって「ホールトーンスケール」の音を全て使わなければいけないわけではありません。
「Gaug」のもっとも特徴的な音は「#レ」ですが、あえてメロディーには使わない方が自然な感じになる場合も多々あります。
「Gホールトーンスケール」の中にも白鍵の音が4つあります。
これら白鍵の音を使うことによって、メロディーは自然な感じのままハーモニーだけ変化があり、おしゃれな感じに聞こえたりもします。
たとえばこんな感じです。
「ホールトーンスケール」の特徴的な音は使っていませんがコードが「aug」なので、分析するとここで使われているスケールは「ホールトーンスケール」ということになります。
もっと特徴的な音を使う
もっと「ホールトーンスケール」っぽく聴かせたいなら、特徴的な音である「#レ」の音を多めに使うとよいでしょう。
「ホールトーンスケール」の中では【#11th】にあたる「#ド」の音が少し使いにくいので、ポップスなどではあまり使わないほうが無難かもしれません。
ここでは「#ド」は避けて「#レ」を使ってみました。
いかにも「ホールトーンスケール」といった感じになりました。
ピアノは左手を全く弾いてないので、右手だけの譜面としました。
ジャズっぽいアドリブなどに
ジャズっぽいアドリブなどには「#ド」も積極的に使っていくと、スケールから少し外れたように聞こえてかっこいいでしょう。
「G7(#5)」と表記してみました。「Gaug7」と同じ意味です。
「G7(#5)」のところでは「ホールトーンスケール」の音だけを使っています。
4小節目の3拍目にわざと全音でぶつけたりしていますが、ジャズなどではよくあります。
1小節目の「C△7」で最後の音に「#ソ」がありますが、これは次の小節の「ラ」に向けての「クロマチックアプローチ」なのでコードとは外れますが、気にしなくて大丈夫です。
「A7」ではメロディーに【♭9】を使ってみました。
エンディングは【編曲⑥ ピアノエンディングPart2「ジャズ ブルース ボサノバ 定番フレーズ」】で紹介したような感じにしてみました。(※1 下記参照)
最後のコードは「編曲⑪の動画」で解説した「パーフェクト4thビルド」です。(※2 下記参照)
※1(動画リンクもブログ内にあります)
※2
少しメカニカルな感じに・・・
もっとメカニカルにホールトーンスケールの音をいっぱい使ってみましょう。
サルサっぽい感じにしてみました。
ギターの音色でわりと細かい音符を弾いています。
1小節目の「F」で「♭ミ」を使っていますが、これは「F7」にしたというより「キーC」の「ブルーノート」といった感じです。
2小節目と6小節目の「G7(#5)」では「ホールトーンスケール」だけを使っています。
そして4小節目の「C7(#5)」は、次の小節の「F」に進行するための「セカンダリードミナント」です。
(「セカンダリードミナント」に関してはこちらの動画で説明しています)
「セカンダリードミナント」であっても「aug」にして「ホールトーンスケール」を使うことは可能です。
ここではスケールというよりコードの分散を弾いてみました。
このサンプルは少し歌ものには不向きなフレーズなのですが、アドリブなどにはいいと思います。
オルタードスケールとの対比
このように使うとちょっと「オルタードスケール」っぽい感じもしますね。
それもそのはずで、共通音がいっぱいあります。
これを見てみてください。
「オルタードスケール」の最後の4つの音は「全音間隔」で並んでいるので、「ホールトーンスケール」とまったく同じなのです。
2つのスケールが大きく違うのは、【9th】がオルタードテンションである【♭9】または【#9】なのか、それともナチュラルテンションである【♮9】なのかというところです。
そしてもう1つ違うのは「ホールトーンスケール」で【#5】と説明している「#レ」は、「オルタードスケール」では【♭13】と呼ばれるということです。
【#5】というのは【5th】が半音上がったものです。
一方で【♭13】は普通の【5th】がある上にテンションとして加えられたものなので、その成り立ちが違うのです。
ようするに、「ホールトーンスケール」を使用したい場合は【5th】を入れてはいけません。
【5th】と【#5】を入れると理論的にはその音は【♭13】と判断され「オルタードスケール」ということになります。
【#5】と【♭13】は弾けば同じ音ですが理論的に言うと【5th】と【♭13】は同時に使うことができ、【5th】と【#5th】は同時に使うことはできないということです。
しかしながら、輸入楽譜などでは「G7(♭9、♭13)」を「G7(#5、♭9)」などと書いてあることも多々あり、はっきりとした決まりがないのが実状です。
スケールを特定したい場合は・・・
・メロディーorコードどちらかに【#5(♭13)】が入っていて、さらにメロディーor コードのどちらかに【♮9th】が入っていれば「ホールトーンスケール」
・メロディーorコードどちらかに【#5(♭13)】が入っていて、さらにメロディーor コードのどちらかに【♭9】か【#9】が入っていれば「オルタードスケール」
ということになります。
まとめ
今回は「ホールトーンスケール」と「augコード」を紹介しました。
どちらもちょっと特殊なものなので、そんなに頻繁に使うことはないと思います。
しかし知っていると「ドミナント7thコード」に一工夫できるので、選択肢が増えて面白いと思います!
今回の解説動画はこちら↓