Paul McCartneyの弾くピアノには独特な味があります。
特にテクニックがすごいというわけではないのですが、「これしかない!」といったフレーズが素晴らしいと思います。
特に左手にクセがあるようで、いろんな曲で同じような弾き方をしています。
それは、ルートをオクターブで交互に弾くというものです。
これはたぶん手クセのようなもので、特に意識しているわけではないのでしょう。
しかし、これが実に効果的なのです。
例えばこれを見てください。
これは「Hey Jude」の冒頭のピアノです。
右手はほぼ4分打ちです。
左手は1拍めでオクターブを交互に弾いたあと、2拍めからはずっと8分ウラをオクターブ上のルートで刻みます。
そのとき、最初に弾いた下のルートは延ばしたままにします。
この8分ウラに左手が入ることにより、リズムがすごく取りやすくなります。
このウラの音はそんなに大きくハッキリ弾いているわけでもないので、リズムをキープしやすくするための手クセのように感じます。
試しに8分ウラを抜いて弾いてみます。
どうですか。
これももちろん全然悪くはないのですが、ちょっとグルーブ感が少なくなったような気がします。
かの有名な「Let It Be」でも同じようなことをやっています。
これはイントロ部分です。
しかしこれは「Hey Jude」よりも少し難しいことをやっています。
装飾音が入ったり、2小節めの2拍めウラから3拍めは右手と同じリズムになったりします。
ここに装飾音を入れるのはわりと難しいと思うのですが、これがまたすごく効果的です。
左手にうまく装飾音を入れたりできるのは、ポールが左利きということもあるのかもしれません。
このようにバラードの4分打ちのとき、左手で8分ウラを軽く入れてあげるとリズムも取りやすくなりますし、グルーブ感も出るのでおすすめです。
ちょっとアップテンポのものも見てみましょう。
「Martha My Dear」という曲のイントロです。
左手は同じようにオクターブを交互に弾いている部分がほとんどです。
右手のフレーズの間にうまくハマっていて、いいグルーブ感が出ていると思います。
右手の音が左手のウラにきている部分をわかりやすく示してみました。
これは一見難しそうですが、この左手がないとリズムが取りにくく、右手だけだと逆に難しいフレーズです。
聴いていてもこの左手がないと全く印象が変わってしまいます。
たとえば、3段めの3〜4小節めの左手を「全音符にしたもの」と「4分音符」と聴き比べてみてください。
やはり左手の4分音符があったほうが、ノリもよくなってかっこいい気がします。
というわけで、Paul McCartneyが弾くピアノの左手についてでした。
今回はBeatlesの曲だけを紹介しましたが、ソロになってからも同じように弾いている曲がいろいろあります。
簡単にマネできるのでぜひお試しください。
今回の解説動画はこちら↓