実際に使われているフレーズ例
ハードロックやメタルにはよく、クラシック音楽の影響を強く受けたようなフレーズが出てきます。
クラシックの中でも特にバロック音楽、そしてその中でも特にバッハのようなフレーズがよく使われます。
いくつか書き出してみましょう。
Deep Purpleは、ハードロックにバッハっぽいフレーズを取り入れた走りのようなバンドだと思います。
これはギターソロですが、オルガンソロにもそれっぽいフレーズが出てきます。
コードにたいしてトライアドのアルペジオを弾いているだけです。
「D」はクラシックっぽいフレーズではないですね。
Michael Schenkerはドイツ出身ということもあり、けっこうクラシカルなフレーズが多いです。
これもトライアドのアルペジオがほとんどですが、「F7」「G7」には【7th】が入っています。
Yngwie Malmsteenは自分でも「バッハとパガニーニに影響を受けた」と語っているだけあって、クラシカルなフレーズが非常に多いギタリストです。
(彼は半音下げチューニングなので実音で譜面を書くとキーがややこしくなってしまうため、半音上げで書いてあります。)
トライアドのアルペジオと【7th】の入ったアルペジオ、そしてスケール的なフレーズが組み合わさっています。
「ディミニッシュ」が特徴的で、それがいかにもバッハっぽく聞こえるのではないでしょうか。
これも同じくYngwie Malmsteenのフレーズです。
トライアドのアルペジオがほとんどですが、「E7」では【♭9th】が入ったアルペジオになっています。
これはChris Impellitteriのフレーズです。
彼もまた早弾きが得意な技巧派で、バッハっぽいフレーズをよく使います。
(こちらも半音下げチューニングなので、譜面を半音上げて簡単にしてあります。)
これもコードトーンのアルペジオばかりです。
「E7」ではスケール的なフレーズを弾いています。
「D#dim7」がかっこいいですね。
実際のバッハの曲
ではこのへんでちょっと本物のバッハの曲を見てみましょう。
もちろん原曲にコードネームはないので無理矢理つけてみました。
この曲はアルペジオではありませんが、本物を聴くとこれまでのサンプルがいかにバッハの影響を強く受けているかがよくわかりますね。
共通するコード進行
今回のサンプルは「Key=Am」が多いので、最初の二つも「Key=Am」に移調してみましょう。
こうすると他のフレーズと共通するコード進行がよくわかります。
「Key=Am」ですから、当然「E7-Am」というドミナントモーションは多く出てきます。
また、「B7」の代理コードとして「D#dim7」「F#dim7」「Adim7」「Cdim7」が使えます。
そこで「B7-E7-Am」を「D#dim7-E7-Am」、「F#dim7-E7-Am」などに変化させた進行も多く使われます。
もう一つよく出てきているのが「Am-Dm-G-C」という進行です。
他のコードを間に挟んでいるところはありますが、基本的には「Am-Dm-G-C」という進行になっています。
「Am」と「Dm」の間にセカンダリードミナントの「A」もしくは「A7」を入れることが多いようです。
先ほどのバッハの曲も「Key=Am」に移調してみましょう。
「E7-Am」「Am-Dm-G-C」など、やはり同じようなコード進行になっているのがよくわかります。
そもそもこっちが元になっているのですから当たり前ですね。
各フレーズに共通するポイント
今回のバッハっぽく聞こえる5つのサンプルに共通するポイントとしては・・・
1.ほぼコードトーンのみ
ようするにアルペジオです。
2.ドミナント7thにはときどき【♭9th】を入れたり、もしくは代理のディミニッシュコードを使う
「E7(♭9)」と「Bdim7」はアルペジオにすると同じ音になります。
もちろん「Ddim7」「Fdim7」「G#dim7」も同じコードトーンです。
この中のどれが使われているかというのは【Root】で判断することになります。
サウンドは同じなので、作るときには【Root】の動きの気に入ったもので決めればいいと思います。
3.コード進行はほとんどが5度進行
ディミニッシュは元の7thコードと解釈すると、5度進行ということになります。
「E7-Am」のようなドミナントモーションだけではなく、たとえば「Dm-G」も5度進行です。
4.スケールはハーモニックマイナー(ドミナント7thコードではハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ)
「G#dim7」で使うと「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」とは言えませんが、「E7」が転回されただけだと考えれば「Eハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」ということになります。
と、いったあたりでしょうか。
応用例
コード進行には著作権もないので今回紹介したものをそのまま使い、この4つのポイントを押さえればいくらでも作れます。
ちょっと作ってみましょう。
コード進行は4つめに紹介したイングウェイのものにします。
1小節めの「E7」は【♭9th】を使ったアルペジオです。
3小節めと8小節めの「E7」では「ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ」を使っています。
5小節めの「A7」も【♭9th】を使ったアルペジオです。
その他のコードはコードトーンをアルペジオで弾いただけです。
いかにもメタルに出てくるバッハっぽいフレーズ、といった感じになったのではないでしょうか。
理論的に難しいことは何もやっていません。
コード進行例
いくつか別のコード進行も紹介しておきましょう。
どれもハードロックやメタルの中でよく聴かれるものです。
分数コードを使い、ベースが綺麗に下行するのがおしゃれです。
「Am」が「A7」に、「C」が「C7」に・・・と、マイナーコードもメジャーコードもルートはそのままにドミナント7thコードに変わり、ドミナントモーションを繰り返していきます。
これもドミナントモーションが基本となっています。
「D#dim7」は「B7」の代理です。
さいごに
というわけで今回は、ハードロックやメタルの中でよく聴くバッハ的フレーズを紹介してみました。
Jazzなどをやっている方には全く興味がないかもしれませんが、とても簡単にできるのでネタとして持っておくのもいいと思います。
今回はギターのフレーズばかりを紹介しましたが、いろんな楽器でぜひ挑戦してみてください。
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