「天才たちのワンフレーズ」シリーズ、今回はArt Tatumのフレーズを紹介します。
今回のフレーズ
ではまず今回のフレーズを聞いてみてください。
これは『Cherokee』という曲の中で弾かれたフレーズです。
ソロピアノなので他の楽器は入っていません。
Art Tatumはその超絶技巧でもよく知られており、今回のこのフレーズも速すぎてパっと聴くだけではよくわからないのですが分析してみると、とても緻密にできていました。
この中の最初の2小節を解説してみたいと思います。
フレーズ分析
『Cherokee』のコード進行でいうと、ここは「E7」の小節であり、また左手も「E7」のコードを弾いていたので「E7」と書きましたが、この右手のフレーズはとても「E7」と言えるものではありません。
簡単に言ってしまうと「スケールアウト」ということになります。
ではフレーズを細かく見ていきましょう。
音域が高く譜面が見づらいのでオクターブ下げてみます。
このフレーズは3連符の2つどりになっています。
まず最初に思ったのは「この3つの音がポイントになっているのではないか」ということです。
そこで無理矢理コードネームをつけてみました。
2つめのコードは【Root-9th-♭5th】となっていてコードは特定できないのですが、一応つけておきました。
あとは3声のディミニッシュとマイナーコードになっています。
しかしこれではどういう法則になっているのかよくわかりません。
そこで次は、2音弾いているものと1音弾いているところを分けてみました。
まず、2音で弾いていた音だけを書きだしてみます。
そして使われた音を順番に単音で書きだしてみます。
それを並びかえると「D♭メジャースケール」になっていました。
次は、単音で弾かれていたものだけを書き出します。
そして順番に並べてみると「Cメジャースケール」になっていました。
ようするにこのフレーズは「D♭メジャースケール」と「Cメジャースケール」を同時に使っているということになります。
言い替えると「E7」にたいする【6th】の音をルートするメジャースケールと、その半音下のメジャースケールを使うということです。
この2つのスケールを合わせて考えると、12音全てが含まれているので「クロマチックスケール」としか言えなくなってしまい、それではなんの説明にもなりません。
やはりここは「Key=C」と「Key=D♭」が同時に演奏されるポリトーナルと考える方がよさそうです。
まとめ
今回はまとめというほどのものはないのですが、改めて説明してみましょう。
「E7」というコードにたいして【6th】の音をルートとする「D♭メジャースケール」と、その半音下の「Cメジャースケール」を同時に使います。
「G7」では「Eメジャースケール」と「E♭メジャースケール」を同時に使うということになります。
とは言え、ただバラバラに使うだけではただのクロマチックスケールになってしまいます。
どちらのスケールもちゃんと聞こえるような工夫が必要になります。
応用例
では応用例を見てみましょう。
「G7」で「Eメジャースケール」と「E♭メジャースケール」を使っています。
16音符2つずつのようなフレースですが、1つおきに「Eメジャースケール」と「E♭メジャースケール」を交互に弾いています。
これは「Key=Cm」の「G7」に使ってみました。
同じように「Eメジャースケール」と「E♭メジャースケール」を使っていますが、これまでとは逆に上の声部を「E♭メジャースケール」にして、下の声部を「Eメジャースケール」にしてみました。
さいごに
というわけで今回はArt Tatumのワンフレーズを紹介しました。
今回はドミナント7thコードのときに使いましたが、トニックに使ってもサブドミナントに使っても結局はスケールアウトになります。
メジャースケールを2つ使うのですから当たり前ですね。
例えばこんな使い方はどうでしょう。
今回紹介したものと違うアプローチをしてみました。
「Am」ワンコードに「Gメジャースケール」と「B♭メジャースケール」を同時に使っています。
このようにいろいろなメジャースケールを同時に使って試してみるといいでしょう。
新しいサウンドを見つけられるかもしれません。
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